87歳の母は900万円の預貯金残高で何歳まで生活できる?実態から親の資産管理を考える

父親が亡くなり、母親が入院。母親が退院した後、どこで生活するか、その生活にはいくらかかるのかなど、子供として考えなければならないことは、まだたくさんあります。だからこそ、親がどの程度の財産を持っているのかを把握しつつ、親が望む生活をしてもらうのに必要なお金がいくらで、仮にその生活をした場合、何歳までお金が底を尽かずに済むのかを計算する必要があります。

前半:親の資産をどこまで把握?実際に親の死でわかった必要な「お金の手続き」


「2000万円問題」覚えていますか?

昨年6月に金融庁の「金融審議会市場ワーキング・グループ報告書」に書かれている文面から、にわかに「2000万円問題」が浮上しました。実感としては,何だかもうずいぶん前の出来事のように思えるのですが、まだ1年前の話だったのですね。

で、その報告書に何が書かれていたのか。報告書の「基本的な視点及び考え方」から抜粋すると、

「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1,300万円~2,000万円になる。

この金額はあくまで平均の不足額から導きだしたものであり、不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によって大きく異なる。当然不足しない場合もありうるが、これまでより長く生きる以上、いずれにせよ今までより多くのお金が必要となり、長く生きることに応じて資産寿命を延ばすことが必要になってくるものと考えられる」。

つまり、65歳以降に受け取れる公的年金である程度、生活費を賄うことはできますが、ライフスタイルによってはそれ以上のお金が必要になることもあるので、不足額の総額と考えられる1300万円~2000万円程度は、自助努力で貯めておきましょうね、という話です。

果たして資産はいくらあったのでしょうか

では自分の親はどうなのか。ふとそう思って母親に確認してみました。自宅は持家の一戸建て。保険は外資系保険会社のガン保険のみ。証券会社の口座は持っていないので、株式も投資信託もなし。父親名義の銀行預金と郵便貯金、母親の郵便貯金があるだけ。昭和ヒトケタ生まれの両親らしい、極めてシンプルなポートフォリオです。

さて、いくらあったでしょうか。

父親の銀行預金…400万円
父親の郵便貯金…400万円
母親の郵便貯金…300万円

以上。合計で1,100万円でした。持家だし、住宅ローンはとっくに完済しているし、日々の生活費は厚生年金で十分に賄えるということで、あまり真剣に資産形成はしてこなかったのだそうです。

それに80歳を超えてくると物欲が無くなり、足腰が弱って旅行に行かなくなり、父親は脳梗塞を患ってから断酒をしていたので、出ていくお金は日々の食費といくばくかの雑費のみでした。

確かに、これなら月20万円の厚生年金だけで生活できます。ただ、問題は父が亡くなってからの母親の生活費でした。1,100万円あった預貯金のうち、200万円は父の葬儀で使っていますから、残る預貯金残高は900万円です。

900万円の預貯金残高で何歳まで生活できるか

母親の年齢は現在87歳。2019年の女性の平均寿命は87.45歳ですから、「そろそろ……」という気がしないでもありませんが、まだまだ長生きする可能性もあるという前提で、余生を過ごすための資金計画を練らなければなりません。

毎月のキャッシュフローは、遺族厚生年金が年額181万3,561円なので、月額にすると15万円とちょっとです。まあ、恵まれている方です。自分が高齢者になった時は、ほぼ間違いなく、これだけの年金を受け取ることはできないでしょう。

それはともかく……。

前編でも触れましたが、母親は現在、大腿部骨折で入院し、リハビリに取り組んでいる最中で、退院後は自宅での生活ではなく、施設での生活を望んでいます。入院中に介護認定を取り、先日その結果が来たのですが、「要支援2」ということでした。特別養護老人ホームの入所は「要介護3」以上が対象ですから、母親の場合、自立型の高齢者施設を探す必要があります。有料老人ホームやサービス付高齢者住宅のことです。

年金を月額にした金額が15万円程度ですから、出来れば月額利用料をその程度に収めたいところですが、食費も含めて計算すると、月額20万円程度はかかりそうです。ここから年金で受け取る金額を差し引くと、月額5万円程度の赤字が出ます。これを900万円の預貯金残高で賄うようにします。

900万円を5万円で割ると180か月分ですから15年分になります。つまり、87歳+15年ということで、102歳までの生活費は確保できました。何がしかのお小遣いとして月2万円を加算しても、97歳まで生活する資金余力はあります。

2000万円なくても何とかなる?

まさに今、その施設探しをしている最中ですが、施設によっては入居一時金がかかるところもあります。入居一時金はピンキリで、それこそ1億円という超高級有料老人ホームもあれば、数百万円程度のところもあります。もちろん月額利用料のみで、入居一時金は不要というところもありますが、いろいろ調べると、入居一時金なしで月額利用料が15万円程度の施設は結構人気があり、入居待機者もいるそうです。

現在、母親が入院しているリバビリ病院は、最長3カ月しか入院できませんから、残り2カ月程度で施設を見つける必要があります。その時間の制約を考慮すると、待機者がいる人気の施設では難しいので、ある程度の入居一時金を払ってでも、すぐに入れる施設を探さなければなりません。

仮に入居一時金が数百万円だとしたら、それをどう手当てするか。幸いなことに「自宅」という資産がありますから、それを売却して資金を捻出する予定です。このように考えていくと、案外、老後資金が2000万円も無かったとしても、87歳の母親の余生は何とかなりそうです。

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