青方氏に伝わる古文書紹介 長崎歴文博で特集展

下松浦一揆などに関する貴重な資料が並ぶ特集展=長崎市、長崎歴史文化博物館

 五島列島・中通島の青方(現新上五島町青方郷)に本拠地を置いた領主青方氏に伝わる古文書を紹介する特集展「『青方文書』の世界 その2」が、長崎市立山1丁目の長崎歴史文化博物館特集展示室(2階常設展示室内)で開かれている。11月15日まで。
 同館が収蔵する「青方文書」は、中世から近世初期の古文書483点で、県有形文化財に指定されている。県内では対馬を除き中世の資料が少なく、同文書が貴重な情報源という。
 今回の特集展では、同文書約20点を展示。青方氏が肥前国松浦郡(現五島市~佐賀県唐津市)に割拠した中小の武士団「松浦党」の一員となり、さらに南北朝時代に結成された「下松浦一揆」のメンバーになっていく様子を伝える。
 青方氏はもともと、京都の貴族の末裔(まつえい)として藤原家の一門を名乗っていたが、平安期の終わり頃に青方へ下向、土着すると青方を自称した。一方南北朝時代には松浦一族の一つ、宇久氏の子孫であると主張し、苗字を「松浦青方」と記した文書が残っている。恩賞の分配など政治経済的なメリットがあったと考えられるという。
 南北朝時代の後半には、下松浦地域の松浦一族ら領主が数度にわたり広範に結び付き、「一揆」を結成し、領内のトラブル対応などを取り決めた。メンバーの署名や花押が記入された「一揆契諾(けいだく)状」には、青方氏も名を連ねている。
 大塚俊司研究員は「南北朝から室町時代の歴史を説明するのに、『一揆』は時代の特徴を示すキーワード。生の文書が持つ歴史の重みを実感してほしい」と話している。

© 株式会社長崎新聞社