鷹VSロッテの首位攻防戦どうなる? 14年死闘を繰り広げた元オリ監督が占う3連戦

ロッテ・井口監督(左)とソフトバンク・工藤監督【写真:荒川祐史】

ロッテは早い段階でリードを、ソフトバンクはモイネロ、森に繋げる投手起用が鍵を握る

■西武 4-4 ソフトバンク(8日・メットライフ)

ソフトバンクは8日、敵地での西武戦を4-4で延長10回を戦い引き分けに。敵地での3連敗は何とか阻止してゲーム差「1」を死守し、9日からロッテとの直接対決が始まる。元オリックス監督でソフトバンクでは王監督の参謀役、巨人、中日でも名コーチとして知られる森脇浩司氏が首位攻防戦のポイントを占った。

ホークスは3年ぶりのリーグ制覇奪還に向け正念場を迎える首位攻防戦。ここまで4勝10敗1分けと大きく負け越している“天敵”と本拠地で大一番を迎える。ロッテは新型コロナウイルスの感染者が出る中、大幅な入れ替えを強いられる状況だが昨季から続く相性の良さは一つの武器となる。

「シーズン30試合を切ってくるとゲームの大きな流れは直接ペナントの流れになってくる。ロッテは中村奨、マーティン、安田、井上、福田秀ら主力が集まる2番から6番まででいかに点が取れるか。四球をもぎ取り、相手のミスに付け込むのがロッテの攻撃パターンの一つ。また、マーティンがオールマイティに役割を果たすのは何とも頼もしいところだ。デイフェンスでは唐川、澤村、益田の勝利の方程式が出来ているだけにペナントにおいても早い段階で追いつき、追い越したい」

ロッテは1番・荻野や菅野、藤岡、角中、清田、そして代走の切り札・和田らを欠くことになるだけに森脇氏は早い段階でリードを奪うことが必須になると見る。

一方、今季ロッテに大きく負け越しているソフトバンクはモイネロ、森につなぐリリーフ陣に注目。サブマリンの高橋礼、左殺しの嘉弥真、150キロを超える2年目長身右腕の杉山ら「非常に面白いタレントが揃っているだけに、勝ちパターンにいかに繋げるか」と投手の起用法について言及。

また、打線についても「周東の足と柳田の打棒などでゲームを動かす以外にヒットエンドランとウエイティングの戦術を交えると面白いと見る。特にウエイティングのサインは地味ではあるが打者を助け、カウントを整えさせてくれるだけでなくゲームの流れを大きく左右することさえある。データと配球には特に強い工藤監督だけに残り試合、CSとそんなところにも注目したい」と効率の良い攻撃が重要になってくると指摘する。

2014年のオリックスは勝ち星で上回りながら引き分け数、勝率で涙を呑む

ソフトバンクもフルメンバーで試合を進めて来たわけではない。正遊撃手の今宮が不在、チーム中心を託す助っ人陣らも合流が遅れ本来の力を発揮できない状況だ。

「重要なセンターラインを若い周東、牧原、川瀬らが必死に挑戦し、彼らをベテランの川島、明石がしっかりカバーしている。若い彼らの成長は頼もしい限りで必ずチームの財産になる。堅いディフェンスは勝つために必須だ。それは、一塁の晃(中村)の守備力にもいえる。一塁手の守備力が勝敗の分岐点になることが実は多いのだ。かつて、一塁手・小久保の存在に助けられた試合は数知れない。晃も同様なのだ。そんな堅守を誇る晃が1000試合出場を達成した。残り試合において攻守で晃の存在は際立つだろう」

直接対決は残り9試合を残しているが、両チームがシーズンを占う重要な3連戦になる。わずかなゲーム差で首位争いを繰り広げる状況に森脇氏は2014年シーズンと重なることがあるという。

「天王山第1弾。両チーム一騎打ちの様相で見ごたえがある3連戦になるだろう。この状況は私が指揮を執った2014年のオリックスとソフトバンクの終盤戦にそっくりだ。当時もわずかな勝率差で順位が決まった。今年は特別なシーズンとなり延長10回で打ち切り。当然、引き分けの数も重要になってくる」

2014年は優勝したソフトバンクが78勝60敗6分けの勝率.565、2位のオリックスは80勝62敗2分けの勝率.563。オリックスは勝利数では上回ったが、引き分けの数が優勝の行方を大きく左右したシーズンだった。

「今まで以上に大胆かつ繊細にというところが求められる。マッチレースは際どい場面をどう凌いでいくかだ。失敗をしないようにではなく、最高の準備をして失敗を恐れない勇敢さが大切。改めて両チームの躍動を願い、最後までファンが手に汗握る勝負を期待したい」

本拠地でソフトバンクが首位をキープするのか、それともロッテが一気にまくりひっくり返すのか……。優勝争いの行方から目が離せない。

◇森脇浩司(もりわき・ひろし)

1960年8月6日、兵庫・西脇市出身。現役時代は近鉄、広島、南海でプレー。ダイエー、ソフトバンクでコーチや2軍監督を歴任し、06年には胃がんの手術を受けた王監督の代行を務めた。オリックスでは13年から監督を務めるなど、中日、巨人でも名コーチとして多くの選手を育てた。球界でも有数の読書家として知られる。現在は福岡6大学野球の福岡工大の特別コーチを務め、野球以外にも心理カウンセラーの資格を取得。監督通算成績は470試合239勝217敗14分け、勝率.524。(ソフトバンク、オリックス監督代行を含む)(Full-Count編集部)

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