コロナで延期…トレラン大会開催へ 有志ら準備「選手に舞台を」

倒木をチェーンソーで切断し、除去する長崎トレランパーティーのメンバー=大村市黒木町の山中

 コロナ禍で長崎県内のスポーツイベントの中止が相次ぐ中、選手に目標や希望を持ってもらおうと、山を走るトレイルランニングの愛好家が、春から秋に延期した大会の準備を進めている。

 大会は今年5回目となる多良の森トレイルランニング(九州トレイルランニング協会主催、長崎新聞社など後援)。新型コロナウイルス感染拡大で4月から10月18日に延期した。大村市野岳湖公園を発着点に45キロ(累積標高4千メートル)、40キロ(同3400メートル)、19キロ(同1460メートル)の3コースに約440人が出場する。
 今年はスポーツイベントの中止が相次ぎ、ランナーにとって目標となる大会が激減しているのが現状だ。
 多良の森は県内唯一のトレイルランニングの大会。愛好家でつくる「長崎トレランパーティー」(NTP)が誘致し、運営を支えてきた。中でも中心メンバーの大村市の会社員、牧島圭太さん(46)の大会にかける思いは強い。
 4月の緊急事態宣言では外出自粛や不要不急の旅行を控えるよう求められた。「暗い言葉が世間をにぎわせ、未来が黒く塗りつぶされていくように感じた」。そしてこう思う。「全ての行動が制限される生活は『生きてる』んじゃなく『死んでない』だけの状態だったのではないか。人間は将来の『目標』や明るい『希望』を持って初めて生きてると実感できる。大会開催はその目標や希望を生み出すためにある」と。
 大会では検温や手指消毒など感染防止策を徹底、3密を避けるためスタート時間は分散する。スタッフ88人は受け付けや誘導、給水や補給所の運営を担う。9月下旬の説明会で牧島さんは「ランニングイベントはボランティアがいて成立する事業。選手に希望や生きていると実感できる機会をつくろう」と呼び掛けた。
 コロナ禍の中、運営会社を支援したいとの思いもある。大会を企画するユニバーサルフィールド(宮崎市)は九州各地で予定していたトレラン8大会全てが中止になった。トラック競技など新しいイベントを企画するが、収益は前年の3分の1以下に落ち込んだ。代表の高木智史さん(40)は「地域経済を動かすにはイベントが必要。宿泊などで地元消費が生まれ地域活性化になる。知恵を出していい方向に行けば」と話す。
 今年は大雨や台風が相次ぎ、コースとなる登山道が荒れた。NTP有志は山に入り、のこぎりやチェーンソーで倒木を除去し、散乱した枝葉も片付けた。逆風が重なるが、「選手が活躍できる舞台をつくりたい」との思いを胸に準備を進めている。

大会開催に向けたボランティアスタッフの説明会=大村市東野岳町、野岳湖公園・儀太夫記念館

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