復活を遂げた伝説のモデル、ハンターカブで片道160kmツーリング

現代の装備を満載して復活してきたスーパーカブの派生モデル、レジャーバイクのCT125・ハンターカブに跨がり、秋の陽射しを浴びながらトコトコとツーリングに出掛けてきました。カブファミリーの中ではもっともワイルドな性格のハンターカブですが、どんな世界を見せてくれたのでしょうか?


もっともワイルドなスーパーカブシリーズ

スーパーカブの派生モデルとして1968年にデビューしたCT50・ハンターカブ。途中、短期間ですがカタログから落ちたことはありましたが、初代デビューから数えて、すでに半世紀以上経ち、世界中で人気シリーズとなっています。

今回、ツーリングで乗り出したのは最新のCT125・ハンターカブ(以下ハンターカブ)というレジャーに最適なバイクです。すでに概要は初夏にお伝えしていますが、ここで念のためカブシリーズの概要を簡単に確認しましょう。まずベースモデルには世界の名車にして実用バイクの王者、スーパーカブがあります。

そこからレジャーバイクとして派生してきたのがレジャーバイクの人気モデル、CC110・クロスカブです。スーパーカブ並の普段使いの良さ、日常性の高さがありながら、その佇まいはスポーティでファッション性も感じさせるレジャーバイクです。走破性という点でも街乗りからオフロードまでこなせる機動力を持ち合わせています。

後ろから見るとトレッキングバイクらしさが、より分かります

そして今回の主役のハンターカブです。これはレジャーバイクという点ではクロスカブと同じですが、その方向性が少し違います。林道やオフロードといった、よりハードな状況にも走り込んでいける性能や、それにふさわしいワイルドな外観を持っています。その内容を見るとオフロードバイクとしての性格がより強いバイクである事が分かります。

以前にも書きましたが、この3車の性格の違いを表すとすれば、ベースモデルのスーパーカブはスニーカーであり、クロスカブは軽快なウォーキングシューズ、そしてハンターカブは高機能なトレッキングシューズといったところでしょう。そしてこの3車の中でも、もっともハードな使用に耐え、より広範囲のフィールドで使い勝手のいいハンターカブがいま、注目の的になっています。

もちろん、そうとなれば、少しでも早く乗り出してみたいと思うのは自然の流れです。時はまさに秋の行楽シーズンを迎え、バイクツーリングには絶好の季節となったところです。さっそく片道160㎞ほどのルートに乗りだしてみました。

ゆとりある走りと乗り心地

目の前に登場したハンターカブですが、スーパーカブより二回り、クロスカブよりは一回り大きく見えます。実際のサイズを比較しても、全高以外はハンターカブの方が数値は大きく、骨格もガッチリとした印象です。シート高は800mmありますから、実際に跨がってみると、信号待ちなどでは気を遣う場面もありました。

このシート高ですが、ベースとなっているスーパーカブC125が780mm、クロスカブが784mm、そして同じホンダのビッグバイクCB1100が780mmとなっていますから、やはり高いといえます。ただ、足つきの良し悪しはシート形状などによっても変わりますから、立ちゴケを心配するような足つき性ではありませんでした。

シート高はありますが形状などで足つきにも拝領しています。大型で座り心地は快適です

そんなことを感じながら走り出します。車重は120kgあり、クロスカブよりも14kg重いのですが、その分排気量は124ccでパワーも8.8馬力(クロスカブは109cc、8馬力)と力不足は感じません。いえ、むしろ重さとパワーの関係で走りは重厚さが増した感じで、ゆとりを持って走っている感じです。都内を抜けるまでの混み合った道路でも、流れに乗り遅れるような印象もなく、ゆったりと走って行けるのです。このゆとりがあるだけでも疲労感はかなり少なくなります。

おまけに前後ともにディスクブレーキを装備し、前輪にはABSが装備されています。一般路でのブレーキの安定した効きは本当に安心感があります。

フロントにはABS付きディスクブレーキが標準装備です

もちろん、ハンターカブが得意とする林道やオフロードでは、浮き砂などの滑りやすい状況もありますから、さらに威力を発揮するはずです。ただ、出来るならばABSなどは作動させないライディングを心掛けたいものですが、転倒リスクを軽減できるという点では本当に有り難い装備です。

さてクルマに溢れた混雑を抜け出し、郊外の田舎道をトコトコと走り出すと、快適そのもの。クルマなら車内に音楽を流しながらですが、バイクは音楽など無くても十分に楽しいのです。風切り音やエンジン音、そして風の臭いなど周囲の色々な状況がつねに変化していく様を全身で思いっきり感じながら、心地よく走れます。思わず気持ちいい!と叫びたくなる瞬間です。

より広いフィールドを走り込むための高性能

Uターンも楽々こなせますし、気兼ねなく寄り道ができます。ゆとりある走りとこの機動性の高さでツーリングはどんどん楽しくなっていきます。

さらにワインディングへと入ります。当然のことですが排気量も大きくパワーがありますから、クロスカブの時に感じた若干のパワー不足感も少し解消されます。このクラスになると、わずか0.8馬力のパワーの差が、走りの違いとしてちゃんと感じ取ることが出来ます。もちろん、ここでもフロントブレーキにABSがあるお陰で、とくに下りなどでは安心してブレーキレバーを握れます。

左グリップ周辺にはホーンボタン、ウインカースイッチ、ハイロー切り替えスイッチが装備されています

本当に快適なツーリングを楽しんでいる途中で、ふと疑問が湧いてきました。確かに少しだけパワーがあり、走りの安定感も上で、フロントのサスペンションがしなやかで快適などといった利点はいくつかあるのですが、こうしてアスファルトの上を走っている限り、クロスカブでもいいのではないか? という思いが湧いてきました。

価格もハンターカブ44万円に対して、クロスカブは34万1,000円と約10万円の差があります。街でも郊外でも楽しく走り回るという点において、価格ほどの差はあるのだろうか? と思ってしまったわけです。

ところがそんな疑問に答えを与えてくれたのは舗装もされていない脇道に入ったときでした。いたることに凹みのある凸凹道、大小の石が入り交じった路面に、時折出てくる泥道。ワイルドなボディはガッチリとした剛性感があるため、安心感を持って走れます。おまけにエンジンガードが装備され、アップマフラーとなっていて、重要な心臓部分を路面にこすったり当てたりするリスクも減ります。

ちょっぴり専門的になりますが、ハンターカブにはハイマウント吸気ダクトというエアクリーナー専用の吸排気システムが採用されています。ちょうど荷台の高さから空気を吸い込み、排気ガスはアップマフラーで高い位置から排出できるというシステムなのですが、浅めの川ならば走り抜けてしまえるということなのです。まぁ、そんな場面は一般の人にとってそうそうあることではないでしょうが、イザとなれば渡川走行をこなせるだけの性能を持っているというわけです。

つまりスーパーカブの限界の先に走って行けるのがクロスカブであり、さらにその先に分け入って行けるのがハンターカブという、重要な棲み分けを改めて確認したところでガソリンメーターが半分になりました。ここまでの走行距離157.4kmで使用燃料は2.7L、燃費は58.3km/L。やっぱりカブファミリーは給油の時に嬉しさが倍増します。ここまで楽しめて、レギュラーで335円也。

なんたるお得感でしょう。帰り道、マジで購入を考えたとき、また懸念事項が頭をよぎりました。これだけ魅力的なハンターカブですから現在、大人気です。少々のウエイティングは覚悟しなければいけないそうです。私のような軟弱者にとって、真冬にバイクは相当覚悟がいります。春を待ちましょうか……。

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