<いまを生きる 長崎コロナ禍>励ましと気遣い 文通が紡ぐ 年齢を超えたつながり

 新型コロナウイルスの影響でコミュニケーションの場が制限されがちな中、佐世保市で高齢者と小学生が文通で交流する取り組みが続いている。近況を知らせ合ったり、相手の体を気遣ったり…。手紙が紡ぐ新しいつながりが、筆を執る人々の日々を温かく励ましている。
 「ひざはだいじょうぶですか? コロナにもきをつけてください」
 5日午後。大黒町の浦田八千代さん(83)は、色とりどりの便箋や封筒が入った箱から1枚の手紙を取り出した。「ほら、こんなにきれいな文字なんですよ」
 浦田さんは約20年前に夫を亡くした。足が悪いが、友人と行く小旅行や食事が何よりの楽しみだった。だがコロナ禍で外出の機会は激減。「一人で過ごすのは好きだけど…」。友人の声が聞けずに孤独感が増していたとき、文通の取り組みを知った。
 相手は小学2年の女の子。「子どもが同じ年頃の時はどうだったかな」。下書きを重ねて便箋に向かう。女の子からの手紙には、学校や家庭での出来事がつづられ、最近は浦田さんを気遣う言葉も届く。手紙に折り紙の鶴と船を添えたときには、女の子が折った手裏剣と鶴が返ってきた。
 「おりがみでつくったいろいろなもの いつもありがとうございます。わたしもいろいろなおりがみをつくりたいです」
 文面を目で追いながら、温かいものが胸の奥に広がり、自然と顔が和らぐ。「『宝物にします』と返事をしてね」と浦田さん。顔も知らない幼い女の子と、一歩ずつ距離が縮まる感じがうれしい。

 文通は、市内の山澄地域包括支援センターと、子ども食堂を運営する「親子いこいの広場もくもく」が企画した。新型コロナの影響で、介護予防の体操教室や食事会などの多くが時間を短縮して開催。お茶や調理を一緒に楽しむ時間がなくなった。会わなくても誰かとつながることができ、子どもの学びにもなるように-。そんな思いを込め、高齢者と子どもをマッチングした。現在は6組が参加している。

 「ばばひろこさん おげんきですか わたしはげんきです。かけっこがんばります」

「生活に新しい風が吹き込んできたみたい」と子どもとの文通を楽しむ馬場さん=佐世保市内

 白南風町で暮らす馬場浩子さん(87)は、7月から小学1年の女の子と文通を続けている。もともと文通が好き。地域の子育てに役立てればと参加した。
 平仮名で書かれる自分の名前は新鮮。買い物に出掛けたときに可愛らしい便箋を探すことが好きになった。体の衰えを感じ、知らないうちに気を張ってしまう高齢の1人暮らし。新型コロナで友人との触れ合いも控えていた。「新しい風がふわっと吹き込んできた気分」。そうほほ笑んだ。
 高齢者を元気づけようと始まったつながり。「子どもの手紙から皆さん成長も読み取ってくれるんですよ」とセンターの村岡佳祐さん(33)は話す。
 家族の枠や年齢を超え、思い、思われるつながりが育っている。

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