緊急事態宣言から半年 <飲食店>依然厳しい「夜の街」

ランチ営業を継続している居酒屋の「藤ノ屋亜紗」=長崎市

 感染拡大による外出自粛などでコロナ禍の直撃を受ける飲食店。各店がさまざまな対策を練り、客足と収益の確保に努めている。
 長崎市内で居酒屋7店舗を展開する「亜紗」も新たな形を模索している。藤井智明代表(54)によると、4月の売り上げは前年比の1割に激減し、中旬から約1カ月間、全店休業した。再開後、戻りつつあった客足は7月の感染拡大の影響を受け、失速。8月途中から9月末まで3店舗を再び休みにした。
 だが、転んでもただでは起きない。休業中にプレミアム付き食事券を販売するクラウドファンディングに取り組み、再開後は全店舗でランチとテークアウトを開始。緊急的な措置だったが、同市住吉町の店舗ではランチが盛況で今も継続している。
 10月に入り、売り上げは前年比9割近くまで回復した。藤井代表は「コロナ禍は自分たちでいろいろと考えて動くきっかけになった。少しずつ明るくなってきた」。今後は初めておせち料理の販売を予定するなど手を打っていく。
 一方、「夜の街」は依然として厳しい状況が続く。同市の銅座・思案橋地区でスナックを経営する70代女性は「客足が戻っているなんて言えない」とこぼす。
 平日は客が「0」の日があり「老舗店も閉店したと聞くし、いつ自分の番になってもおかしくない。正直、もう限界」。店内の感染防止対策は、県が示すガイドラインに沿って徹底している。「対策はやった。でもお客さんは来ない」。深いため息をついた。
 県社交飲食業生活衛生同業組合の木下喜行理事長も「先行きは見えない」と同調する。同組合加盟店のうち数軒が閉店し、複数店を経営するグループも店舗数を縮小するなどした。
 木下理事長は年明け以降に「体力切れする店」の増加を懸念する。売り上げが減少した事業者を対象とする国の家賃支援給付金は12月分まで。来年以降の補償の見通しは立っておらず、「次の助成金もあてにできない。耐えながら細々とやっていくしかない」。


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