ワンルームマンション投資で失敗してしまう理由とは? リスクを回避するポイントも解説

将来への不安から、マンションを購入し賃貸することで家賃収入を得る不動産投資を検討する人が増えてきました。副業で始めれば、本業に注力しながら不労所得が得られることも不動産投資の人気が高い理由です。なかでもワンルームマンションは、手軽に始められることから最初の投資物件として検討する不動産投資初心者が多くいます。しかし実際にワンルームマンションを購入して不動産投資をスタートしたものの、上手くいかずに失敗して頭を抱える人も少なくありません。そこでこの記事ではワンルームマンション投資で失敗してしまう理由を探り、リスクを回避するポイントをあわせて解説します。

ワンルームマンション投資は不動産投資の中でも参入ハードルが低い

ワンルームマンション投資が不動産投資初心者に人気が高いことには、いくつもの理由があります。まずワンルームマンションは、ほかのマンションと比較すると初期費用が安くつくことがポイントです。一般的にマンションは面積に応じて価格が決まるため、室内面積が狭いワンルームマンションは物件価格が安くなります。室内面積が狭いことは、固定資産税やマンション管理費、修繕積立金などにも影響します。

諸経費が安くすむこともワンルームマンション投資が人気な理由のひとつです。室内面積が狭くワンルームマンションの価格が手ごろであるため借り入れ金額も少なくなり、金融機関で融資を受けやすいことも不動産投資に参入するハードルを下げています。さらにワンルームマンションはファミリータイプのマンションと比較すると家賃が安く、たとえ不況に陥ったとしても、家賃の下落幅が比較的小さくすむと考えられます。

このようにワンルームマンション投資は、初めての不動産投資をスモールスタートしたい人にはさまざまなメリットがあり、気軽に始められると考える人が多いのも無理はありません。しかしハードルが低いからといって、リスクも低いわけではありません。実際にワンルームマンション投資に失敗し、途方に暮れる人も多くいます。どのようなリスクがあるのかを、順番に紹介していきます。

ワンルームマンション投資のリスク

ハードルが低く、不動産投資初心者にもスタートしやすいワンルームマンション投資ですが、リスクがゼロというわけではありません。以下でどのようなリスクが潜んでいるのかを紹介します。

ほかの不動産投資と比較して利回りが低い

ワンルームマンション投資は、1室のみへの投資であるため小さな資金で気軽に始められはするものの、アパートやマンション1棟への投資や戸建てに対する投資と比較すると、利回りが低いことはデメリットになります。不動産投資の利回りは、以下のように計算します。
・表面利回り(%)=(年間家賃収入÷物件価格)×100
・実施利回り(%)={(年間家賃収入-年間支出)÷物件価格}×100
このうち実質利回りのほうが、年間家賃収入から固定資産税や修繕費などの支出を差し引いた額をもとに計算するため、現実に即した利回りになります。どちらも家賃収入に対して物件価格が高いほど利回りが低くなることが特徴ですが、ワンルームマンションは家賃が安いのに加えて購入する人が多いため物件価格が下がらず、どうしても利回りも低くなってしまうのです。

利回りが低いため、回収までに時間がかかる

利回りが低いと、資金の回収までに時間がかかってしまうこともワンルームマンション投資の問題です。たとえば1500万円で購入したワンルームマンションを、家賃6万円で賃貸した場合、表面利回りは

・6万円×12カ月÷1500万円)×100=4.8%

で、4.8%と計算されます。この利回りが高いほど、収益性が高くなります。キャッシュフローを考えると、年間72万円の家賃収入に対し、ローンの返済、固定資産税などの支払いを考えると、ローンを支払い終えるまでは利益がほとんどあがらないことも。

一般的に不動産投資は長期投資であり、投資した資金をいかに早く回収するかが重要になります。物件の購入価格が2000万円、2500万円と高くなるほど利回りは低くなり、投資した資金の回収には時間がかかるようになることにも注意が必要です。

売却時に赤字になる可能性がある

ワンルームマンション投資は、売却時に赤字になる可能性があることもリスクです。ワンルームマンション投資は現物投資であるため、経年とともに資産価値が下がってくることは否めません。一般的にマンションは、室内面積の広さに応じてマンションの土地も割り当てられます。しかしワンルームマンションは室内面積が狭いため、割り当てられる土地面積はわずかです。評価額が下がりにくい土地に比べて、建物部分は築年数に応じて低下していきます。そのため売却したいと考えたとき、想定していた価格で売れないことも。

さらに、ワンルームマンションを自身の居住用に購入する人は非常に少なく、購入者のほとんどは不動産投資を目的にしていることも売却リスクを高めます。それは物件を評価する購入者の目が、非常に厳しくなるためです。自らを投資家の立場として考えた場合でも、10年前に1500万円で別の投資家が購入し、利益を出してきたワンルームマンションを、同じ1500万円で購入しようと思うでしょうか。ワンルームマンションは、投資資産であるゆえに高く売却することが難しく、売却時に赤字になる可能性があることも念頭に置いておくようにしてください。

ワンルームマンション投資でよくある失敗事例

ワンルームマンション投資にどのようなリスクがあるのかを紹介してきましたが、ここからは実際にどのような失敗事例があるのかを紹介します。

入居者が入らずキャッシュフローが悪化

不動産投資においては入居者が入らずに空室が続くと失敗の原因になりますが、ワンルームマンションについてはとくにそのリスクが高いことには注意が必要です。ワンルームマンションを借りて住む人は、単身者が多いことが理由として挙げられます。単身者は学校を卒業した、就職や転勤が決まった、あるいは結婚することになったなど、ファミリー層と比較すると出入りが激しいことが特徴です。

入居者が出ていったあと、すぐに次の入居者が決まれば問題ありませんが、そうでなければキャッシュフローは一気に悪化します。賃貸収入がないにもかかわらず、ローンの返済や税金、マンションの修繕積立金など、支出は止まりません。

空室を避けるためには、単純ですが入居希望者が多い人気のエリアでワンルームマンション投資を行うことが効果的です。地方には利回りの高いワンルームマンションもあるため目を付ける人も多くいますが、その地域のワンルームマンションに対する需要と供給のバランスをよく見極めておかないと、失敗の可能性が高まります。

資産価値が下がり、売却したいときに売れない

前述したとおりワンルームマンション投資は、現物投資であるため資産価値が目減りしていくことは避けられません。売却したいと思ったときに、希望する金額で売れないことは大いに考えられます。たとえば築10年の中古ワンルームマンションを購入した場合を考えてみましょう。

がんばって10年でローンを返済したとして、そこから利益を出そうとさらに10年運用したら、売却しようと思ったときには築30年になっていて、売却が難しいであろうことは容易に想像できるでしょう。新築物件であれば需要は見込めますが、購入したときよりも評価額が下がることは避けられません。新築物件であっても、いったん登記されてしまえば中古物件となってしまうためです。中古物件の扱いになったとたん、分譲時の70%ほどの価格でしか評価されなくなることは覚えておくようにしてください。

経費負担が節税効果を上回ってしまう

ワンルームマンション投資をするときに、建物の減価償却分や借り入れの金利を経費として差し引けるため節税対策になる、というのは不動産投資を始めようかと考えたときに営業担当者がよく口にするセリフです。減価償却とは、ワンルームマンション投資をするときに購入した費用を、購入した年度に一括計上するのではなく、法定耐用年数に応じて分割して計上していく仕組みです。

これは有形資産であるマンションは、経年とともに劣化していき価値が下がっていくとの考えに基づいています。確かに減価償却費は利益から差し引けるため節税効果はありますが、法定耐用年数を過ぎると経費計上できなくなり、節税効果はなくなります。その他の設備についても同様に経費計上できますが、耐用年数から考えると節税効果が得られるのは最初の数年だけでしょう。

一方マンションにかかる管理費や修繕積立金、退去者が出るたびに必要なリフォーム費用は、増えることはあっても減っていくことはまずありません。とくに築年数が古くなるほど修繕にかかる費用はかさんでいくと考えることが妥当です。節税効果があると期待していたにもかかわらず、経費負担のほうが大きくなって、利益に結びつかないというのもワンルームマンション投資ではよくある失敗のひとつです。

入居者は入るが、期間が短く収益が低くなる

ワンルームマンションは人気があるため、人気のエリアであれば入居者が見つからないことは少ないと考えられます。しかし、ワンルームマンションは独身者や単身者が多いため、ライフスタイルの変化で転居する確率がファミリー層よりも高く、入居期間が短いことが特徴です。退去してもすぐに次の入居者が決まれば家賃は確保できますが、退去にあわせて修繕やリフォーム、傷みが激しければ設備の入れ換えもする必要があることには要注意です。入居者の不注意による劣化であれば、退去者に負担を求められる場合もありますが、経年による劣化はオーナーの負担で修繕しなければなりません。

修繕しないで次の入居者を探してもいいのですが、供給の多いワンルームマンション市場で劣化が目立つ部屋を選ぶ入居者がいるかどうかを考えましょう。オーナー負担で修繕する場合、床や壁などを張り替えるとなると10万円単位での出費の覚悟が必要です。家賃1カ月分が消えるうえ、工事期間中は家賃収入も見込めません。ワンルームマンション投資では収益が小さい分、修繕費の負担は驚くほど大きくなります。ワンルームマンションの入居期間の短さは、収益に大きく影響するのです。

修繕費などの支出を計算しておらず赤字になる

ワンルームマンション投資をする場合、入居者の入退去に合わせた修繕費のほかにも、マンション全体の修繕積み立て費を計上しておく必要があります。ワンルームマンション投資はマンションの1室を購入するため、マンション全体の修繕に関しては、自分の都合で進めるわけにはいきません。

しかし最初に不動産投資を考えるとき、賃貸収入から差し引く金額をローンの金額だけしか考えない人が多くいます。その場合、家賃収入が6万円、ローンの返済が4万円なので月々2万円の黒字になると考えていたら、修繕積立金や退去に合わせたリフォーム費用で年間トータルしたら赤字になった!ということも当然ながら起こります。

ワンルームマンション投資に限らず、不動産投資は長期投資が基本です。マンションが古くなって資産価値が落ちていくこと、それにともない修繕費もかかってくることまで計算し、長期の収支計画を立てるようにしてください。

ワンルームマンション投資で成功するために心がけておきたいポイント

事前に入念に勉強をしてから始めることでリスクを減らせる

それでは最後に、ワンルームマンション投資で成功するために心がけておきたいポイントを三つ紹介します。

十分な知識を得てから投資を始める

ここまでに紹介したような、利回りや修繕費、ワンルームマンション投資にどのようなリスクがあるのかについては、書籍などでも学習できます。不動産投資を始める前に、不動産会社の話を聞いても理解できる程度の知識はつけておく必要があります。不動産投資を勧める営業は、いい人ばかりではありません。話を聞いて的確な質問ができるぐらいでないと、だまされる心配がつきまとってしまいます。

しかし書籍などでは得られないのが、相場に関する知識です。残念ながら相場については、現場を知り尽くしたプロでないと正確なところは分かりません。そして不動産投資の失敗の多くは、相場を知らないことに起因します。そのため希望するエリアの相場についても、インターネットなどを利用して、あらかじめある程度の見込みを立てておくことが大切です。正確な相場は分からなくても、なんとなく高い、安いは判断できる程度には、事前に調べておくようにしてください。

大手というブランドをあてにしすぎない

ワンルームマンション投資を始めるときに、どこの不動産会社に依頼するかは多くの人が迷うところです。どこがいいか分からないまま、「とりあえず大手なら安心」と判断するのもあまりおすすめできません。大手は確かに、不良な物件を押しつけるとは考えにくいことは事実です。

しかし過去に自分たちが建てた物件を中心に、セールスを行っていることがよくあります。つまり大手に頼った場合、物件の選択肢が少なくなることが考えられるということです。また大手は買い手が多いため、人気物件への競争率が高くなることも気になります。ワンルームマンション投資を検討するときには、大手ブランドにこだわらず、地元に密着した中小の不動産会社も視野に入れるようにしてください。

ワンルームマンション投資のリスクをしっかりと確認する

ここまでに紹介してきた以外にも、ワンルームマンション投資にはさまざまなリスクがあります。不動産会社は告知義務があるリスクしか買い手に伝えないため、こちらから意識的に気になることを確認することが重要です。たとえば水漏れがするなどの物理的な瑕疵(かし)や、近くの工場からの振動が伝わるなどの環境的な瑕疵、過去にそのマンションで殺人事件があったなどの心理的瑕疵は不動産会社に告知義務があり、伝えずに購入した場合その契約は解除されます。そのため不動産会社はあらかじめきちんと伝えると考えられます。

しかしその物件が過去どれくらいの期間空室になることがあったのかなどの空室状況や、原状回復にどれくらいのコストがかかるものなのかなど、不動産を維持して利益を出していくために必要と考えられる情報は、伝える義務がないため聞かない限りは教えてくれません。そういった情報を引き出せるかどうかは、買い手のリテラシーの問題と考えられているためです。ワンルームマンション投資をしようと思うのであれば、リスク回避をするために、どのような情報が必要なのかは自分でしっかり考えて、確認することが求められます。

ワンルームマンション投資ではレバレッジ効果を意識しよう

ワンルームマンション投資では、レバレッジ効果を意識することも重要です。レバレッジ効果とは、「てこの原理」という意味で、金融機関から融資を受けることで自己資金以上の物件を手に入れることを意味します。たとえば手持ちの1000万円の預金をすべて費やして、1000万円の中古ワンルームマンションを購入し、利回り10%で運用したと仮定すると年間収益は100万円です。

そのまま10年運用すれば、再度1000万円の中古ワンルームマンションを購入する資金が貯まります(実際は経費や税金を差し引くため1000万円貯まるにはもう少し時間がかかります)。しかしレバレッジをかけ、自己資金1000万円にプラスして銀行から借入期間30年、元利均等返済の金利2%で1000万円借り入れ、2000万円のワンルームマンションを購入したと仮定しましょう。年間の収益は2000万円×10%で200万円です。

そこから年間の返済額約44万円を差し引くと、年間利益は約156万円になります。銀行への返済を差し引いても、年間の利益が約56万円増えることが分かります。このように不動産投資は、レバレッジをかけることで利益が増えます。もちろん空室が長く埋まらない場合などでもローンの返済は続くため、リスクがないとはいえませんが、レバレッジをかけるかどうかは一考の余地があるでしょう。

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