「鋼鉄で武装した甲虫」外骨格のメカニズムを東京農工大学など解明

地球上に35万種以上が存在する甲虫は、進化の過程で多様な構造や物性を持つ外骨格を発達させており、新しい材料デザインの宝庫である。こうした生物から材料のデザインを学ぶ生体模倣(バイオミメティクス)技術が近年注目されている。

東京農工大学、カリフォルニア大学などからなる国際研究チームは、自動車に踏まれても潰れないほど頑強な外骨格を持つことから「Ironclad beetle(鋼鉄で武装した甲虫)」とも呼ばれるPhloeodes diabolicusの外骨格を解析し、今まで知られていなかった構造と頑強性の機構を明らかにした。

まず、P. diabolicusの外骨格の強度を調べたところ、自重のおよそ39,000倍(近縁種の甲虫の2倍以上)の荷重に耐えうることが判明した。外骨格の破壊の様子の観察から、この頑強性には、外骨格を構成する層状の構造が重要な役割を果たしていると考えられた。

そこで、次に外骨格のミクロ構造と構成成分を解析したところ、他の甲虫種の外骨格では1対しか見られない、パズルのピースのようにかみ合った接合部の凹凸構造が、P. diabolicusでは2対見つかった。また、外骨格の組成では、他の甲虫よりもタンパク質の割合が約10%多く、これが外骨格の頑強性や特殊な構造の形成に関与していると推測された。

さらに本研究では、カーボンシートを用いてP. diabolicusの外骨格接合部に存在する2対の凹凸構造を模したバイオミメティック構造体を作製したところ、現行の航空材料の接合に用いられる様式と比較しても、部材を強固に接合できることを実証した。

P. diabolicusは進化の過程で、捕食者から逃れるための翅を持たない代わりに、特殊な構造や組成を持つ頑強な外骨格を獲得してきたと考えられる。本研究で見出された外骨格の構造は、自動車や航空機など様々な分野で頑強かつ軽量な部材のデザイン設計に応用可能と期待される。

論文情報:

【Nature】Toughening mechanisms of the elytra of the diabolical ironclad beetle

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