【高校野球】昨年は巨人ドラ1の真後ろで祝福…青森山田150キロ右腕の目標は「山本由伸さん」

青森山田・小牟田龍宝【写真:高橋昌江】

食堂で見ていたドラフト会議、堀田賢慎投手が目の前で指名される

昨年、巨人にドラフト1位で入団したのが青森山田高校出身の堀田賢慎投手だった。その堀田の背中を追いかけてきたのが同校の小牟田龍宝投手(3年)。この春、最速150キロを計測し、縦のスライダーを習得したことで投球スタイルを変えた。バネを感じさせる走り方で、50メートル走のタイムは5秒8。遠投は120メートル。打力もあり、スカウトが「野手でも楽しみ」と話す身体能力の高い選手だ。

――ドラフトが近づいて来ました。現在の心境はいかがですか?

「あまり実感がないのですが、ニュースなどでドラフト特集を見たりすると、いよいよだなと感じます」

――昨年のドラフトでは先輩の堀田投手が3度目の入札で巨人から1位指名を受けました。

「自分は賢慎さんの真後ろに座っていました。寮の食堂に集められて、何か話があるのかと思いながら普通に座っていたら、そのままドラフトが始まって。賢慎さんが指名され、スクリーンに映る賢慎さんの名前を見て、テンションが上がりました。身近だった先輩がプロに行くということで、プロは手が届かないところにないわけではないと感じました」

――あれから1年。今年は小牟田投手もプロ志望届を提出。3年間を振り返って、いかがですか?

「東京の親元を離れて青森に来て、冬には気候のハンデを感じることもありました。甲子園に1度も出られなかったというのは心残りですが、それでもこの場所に来て得られたものというのはとても大きい。その点に関しては青森に来てよかったと思っています」

――高校では1年春からベンチ入り。2年時は堀田投手と2枚看板を形成しました。

「賢慎さんと2枚看板と言われていたんですけど、賢慎さんと自分との差が大きくて。その差が結局、夏に負けてしまった要因だと思うので、自分の力不足が大きかったかなと感じました」

憧れの投手はオリックス・山本由伸とカブス・ダルビッシュ有

――2年秋からはエースナンバーを背負うも肩を痛め、外野手での出場でした。

「右腕を怪我したことがなかったので、投げられないというのを初めて経験しました。投げられない分、バッティングでピッチャーを援護したいという気持ちでした。もともとはバッティングに自信はなく、ただ好きで打っている感じでしたが、ひたすら打っていたので、どんどん感覚をつかんでいきました。肩に関しては、いろんな病院に行ったんですけど、12月に原因が分かりました。自分、肩が柔らかいんですけど、ルーズショルダーと診断されて。そこから2か月ほど、肩のインターを徹底的に鍛えました。その後は一度も痛みが出ていません」

――ボールを投げ始めたのはいつ頃からですか?

「2月からキャッチボールをはじめ、3月中旬に150キロが出ました。自分の中でも感覚がよく、新型コロナの活動自粛中もピッチングは続けていたので、ずっと感覚がいい中で投げることができていました。数字がすべてではありませんが、1つの目安にはなるのでモチベーションが上がりました」

――ピッチャーとしての売りは何だと思っていますか?

「一番、自信を持っているのは変化球です。それを武器にずっと投げてきました。スライダーは縦と横の2種類あるのですが、縦スラは高校3年になって習得したボールです。横の変化球が多かったので、落ちるボールがあるとピッチングの幅が広がると思いました。縦スラはジャイロ回転で投げることを意識しています。抜く系よりは回転をかける方が得意で、指先は器用です。折り紙とかは苦手ですけど(笑)。ボールを握っていると落ち着くので、よくボールを握っています」

――参考にしている、憧れているプロ野球選手はいますか?

「山本由伸投手(オリックス)のようなストレートを投げたいと思っています。あとは、めちゃくちゃ高い目標なんですけど、変化球が得意なので、そこまでいけたら悔いがないと思うのはダルビッシュ有投手(カブス)です。ただ、カットボールもチェンジアップもカーブもいつでもストライクを取れるボールじゃないので、磨いていきたいと思っています」

○編集後記

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、代替大会となったこの夏。東北地方では全国で唯一、県大会優勝校が集った地区レベルの大会が開催された。青森県代表で出場したのが青森山田。小牟田本人が話したように、県の代替大会ではピリッとしなかったが、東北大会では1球、1球に意図と気持ちを込めたピッチングを披露した。打力の高い鶴岡東に2本塁打を浴びるなどして1-4で敗れたが、高校野球の“卒業式”にふさわしい勝負だった。

1-3とされた8回のマウンドに向かう小牟田を見て、「ここからすごいピッチングをしそう」とつぶやいたスカウトがいた。被弾したものの、9回はこの日唯一の3三振を奪った。真っ向勝負に、きっと、鶴岡東の選手も楽しかったのではないだろうか。

荒々しいイメージがあったのだが、音楽は「ゆったり眠くなるような曲が好き」。お気に入りは藤井風さんの『帰ろう』だという。「声がいいんです」。好きな食べ物はフルーツや甘いもの。だが、体のことを考えて「パフェとかパンケーキとか、オフシーズンの楽しみにしています」とシーズン中は自主規制。意識の高い、今後が楽しみな選手だ。

【動画】ブルペンでわかる素材の良さ しなやかな体で投球する青森山田・小牟田の実際の投球映像

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(高橋昌江 / Masae Takahashi)

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