30代夫婦「住宅購入と妊娠希望だけど収入も貯金も心もとない」いつまでにいくら貯める?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、30歳、パートの女性。住宅の購入と、妊娠を希望していますが、貯蓄も収入に不安があり、また、どのようにやりくりをすればよいか分からないとのこと。FPの高山一惠氏がお答えします。

昨年結婚し、住宅を購入したいが、夫が今年で40歳、収入が少なく貯蓄も少ない。また、子どももこれからほしいと考えているが、生活していけるか分からない。子どもを育てる場合、自分の仕事を減らさなければいけない可能性もあり、どのようにやりくりしていけばいいか分かりません。将来を考えてどのくらい貯蓄したらいいかも不安です。

家賃、水光熱費、保険料は夫給与からで、差し引いた分が夫の小遣い、食費や生活用品、ガソリン代などは妻給与から出し、残りを貯蓄にしています。

現在購入を検討している住宅は、物件購入額2600万円、金利0.56%、返済期間25年(夫の定年までに完済)を予定しています。

【相談者プロフィール】

・女性、30歳、パート、既婚

・同居家族について:

夫(39歳)医療技術職年収380万、自分パート月収18万、介護の世話なし

・住居の形態:賃貸

・毎月の世帯の手取り金額:33万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:70万円

・毎月の世帯の支出の目安:15万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:6万5,000円

・食費:3万円

・水道光熱費:2万3,000円

・保険料:4,000円(妻分) 夫分は親負担により0

・通信費:1万7,000円

・車両費:5,000円

・お小遣い:0円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:10万円

・現在の貯蓄総額:220万円(160万は妻独身時の貯蓄)

・現在の投資総額:0円

・現在の負債総額:0円


高山:ご相談ありがとうございます。収入や貯蓄が少ない中、今後のライフプランを考えると、不安なご様子。確かに、先行き不透明な中、色々と不安になってしまうお気持ちよくわかります。不安を払拭するためには、いつ、どの時点で、いくらかかるのかを「見える化」することです。「見える化」することで、計画も立てやすくなります。今回は、今後のライフプランを考えるにあたっての基本的な考え方を中心にお話させていただきます。

まずは固定費の削減を検討して

今後の貯蓄計画を立てるにあたり、まず、家計の見直しをすることが大切ですが、ご相談者さんの家計を拝見すると、とても堅実に暮らしていらっしゃると思います。現在も十分努力されていると思いますが、もう少し努力できる余地があるところとしては、「水道光熱費」「通信費」が挙げられます。

水道光熱費も通信費も今後も生きていく上で欠かすことができない固定的に発生する支出ですから、できるだけコストは抑えたいですね。詳しい契約状況がわからないので、削減ポイントを一般論でお話します。

水道光熱費ですが、総務省家計調査報告2019年によると、水道光熱費の2人世帯の全国平均は、1万9,599円となっています。水道光熱費の中でも電気代が占める割合が大きいので、電気代にメスを入れることは家計費削減に有効です。一般的に2人暮らしの場合、契約アンペアは30A〜40Aですが、仮に、40Aから30Aにした場合、東京電力で契約している場合だと、毎月約280円節約でき、年間約3,300円の節約になります。また、電力会社を変更するというのも手。電気見直しサイト「エネチェンジ」などでシミュレーションしてみましょう。

また、スマホは、格安SIMに乗り換えることで大幅に削減できます。格安SIMは、これまで通信速度や通信の不安定さなどが問題視されていましたが、最近は、UQモバイルなどは、大手キャリアと遜色ない通信速度や安定性があり、サポート体制も整っていると評判が良いようです。仮に大手キャリアから格安SIMへと変更すると、一般的に5,000円〜8,000円程度節約できます。ご相談者さんが上記の条件に当てはまっているようであれば、ぜひ、試してみてください。

将来のライフプランを「見える化」する

固定費の削減や家計の支出を見直すことに加えて、大切なのは、将来のライフプランを「見える化」することです。漠然と不安になってしまうのは、将来にわたりどれくらいの金額がかかるのかが把握できていないからです。ご夫婦で話合いながら、「いつ」「どんなイベントが発生するのか」「どれくらいの金額がかかるのか」を書き出してみましょう。ライフプランを作成することで、イベントに向けて、今から毎月どれくらいの金額を貯めていく必要があるのかなどが明確になります。

家を買ったら毎月いくら支出が増える?

中長期的にライフプランを描くことで、人生の全体図を把握できたと思いますが、直近でご相談者さんが気になっているポイントとしては、「住宅購入費用」と「出産費用」でしょうか。

住宅購入についてですが、ご希望の物件の条件としては、物件価格2,600万円、金利0.56%、返済期間25年とのこと。頭金を考慮せず、単純に計算すると、毎月の返済額は、約9万2,000円。現在の住居費用から2万7,000円増えます。

また、住宅を購入するとなると、税金や登記費用、ローンを組むにあたって金融機関が借入者に求める保険契約や保証料など住宅購入やローン契約にかかわる様々な諸費用がかかります。諸費用の目安は、新築物件の場合は物件価格の3〜5%程度、中古物件では、物件価格の6〜8%程度です。金融機関によっては、諸費用もローンで借りられるところもありますが、基本的に現金で用意することが求められます。頭金の金額をどれくらい入れるのかにもよりますが、200万円程度は準備しておきたいところです。

加えて、購入した後も何かとお金がかかります。毎月のローン返済の他に固定資産税、都市計画税などの税金、マンションを購入した場合には、管理費・修繕積立金がかかります。なお、一戸建ての場合には管理費・修繕積立金はかかりませんが、築年数が古くなりリフォームや修繕をする場合には、貯蓄から捻出することになります。ですから基本的な考え方は同じです。

このように住宅を購入するとなると、様々なお金がかかりますが、貯蓄のすべてを住宅費用につぎ込んでしまうのはNGです。今後、お給料が下がったり、リストラにあってしまったり、病気になってしまったりすることもあるかもしれません。いざという時に備えて、生活費の半年分から1年分は貯蓄としてキープした上で、住宅費用に当てるように計画しましょう。

妊娠・出産の際に行政からもらえるお金

また、お子さんについても考えていらっしゃると思いますが、実は妊娠・出産でもらえるお金はいろいろあります。例えば、妊娠時に受診する「妊婦検診」の費用の助成、出産時は、加入している健康保険より出産育児一時金が42万円支給されます。また、最近は、出産後、仕事を続ける女性が増えていますが、出産で一定期間休んだとしても一定の条件に合えば、出産手当金、育児休業給付金が支給されます。

仮に1年間の育児休業を取得するとして、現在のご相談者さんの収入でどれくらいの出産手当金・育児休業給付金をもらえるかというと、ざっくりとですが、合計で約148万円程度になります。

収入は下がってしまいますが、出産育児一時金、出産手当金、育児休業給付金には税金がかかりませんので、会社からお給料が支払われずにこれらの手当で生活をするとなると、夫の扶養に入ることができます。今回は、詳細は割愛しますが、夫の扶養に入ることにより、夫の税金を安くすることができます。

詳しくは下記の資料を参考にしてくださいね。厚生労働省「産前・産後休業中、育児休業中の経済的支援 支援」

教育費はどれくらい準備すればよい?

子どもに本格的にお金がかかるのは、学校生活を送るようになってからです。文部科学省などが公開しているデータによると、幼稚園から大学まで、全て公立の場合には、子ども1人につき約1,000万円、全て私立の場合には、子ども1人につき約2,500万円かかります。ひとくちに教育費といっても通う学校によって学費に1,000万円以上の差がでます。お子さんが生まれたら漠然とでも良いので進学コースを決め、いつの段階で、どれくらいの金額がかかるのかを把握して、計画的に準備していく必要があります。

基本的には、子どもが高校を卒業するまでは、学費は家計からやりくりしたいところです。
公立であれば、家計からやりくりできる範囲だと思いますが、私立に行くとなると、毎月10万円以上の費用が発生します。また、教育費のピークである大学費用は家計からの捻出だけでは間に合いません。大学入学費用として子どもが18歳になるまでに最低300万円は貯蓄したいところです。理系に行く場合や医学部に行く場合なども考えると、余裕を持って500万円は準備できるのが理想です。

このように住宅費用も教育費も莫大な金額かかりますが、住宅費用、教育費に加えて老後費用は人生の3大資金といわれています。もうすぐご主人が40歳になることを考えると、老後資金についても視野に入れて準備していく必要があります。

目的別にお金を分けて貯めることが大切

それぞれのイベントにどれくらいの資金が必要か明確になったところで、実際にお金を貯めていくことになりますが、お金を貯める時には目的別に分けて貯めていくことが大切です。漠然と貯めていると、臨時支出が発生した時に、つい使ってしまうからです。

目的別にお金を分ける時には、まず、お金を「日々出入りするお金」「5年以内に使い道が決まっているお金」「10年以上使わない将来のためのお金」に分け、それぞれ別の口座や金融商品、方法で貯めるという仕組みをつくりましょう。

日々出入りするお金とは、もしもの場合に備えるお金や日常生活費です。もしもの場合に備えて、生活費の6カ月〜1年分は確保しておきましょう。できれば1年分を目指せると、急な病気やケガで働けなくなったり、リストラや転職など人生の転機が起こったりしてもあわてなくてすみます。日々出入りするお金は出し入れしやすい普通預金口座で貯めておくとよいでしょう。

しばらく使わないお金の貯め方と老後資金の目安

また、家を買うための頭金など、5年以内に使い道が決まっているお金は使うまでに時間はありますが、使う時に元本が割れていると困りますから、普通預金よりも少し利回りがよく安全性が高いという視点で金融商品を探しましょう。定期預金や個人向け国債などが選択肢としてあげられるでしょう。

老後資金など、10年以上使わない将来のためのお金は、使うまでに時間の余裕があるので、元本が割れる可能性はあるけれど、大きく増える可能性がある投資信託(iDeCo・つみたてNISAなど)や株式、外貨などに預けるとよいでしょう。

老後資金は夫婦2人の場合、持ち家を前提として衣食住の基本生活を送る場合で、2,000万円程度必要です。医療費や介護費用なども考慮すると、2,500万円から3,000万円は必要でしょう。

今回はライフプランを作る上で基本的な考え方のお話をさせていただきました。今後発生するイベントに対してどれくらいの金額がかかるのかがわかれば、家計の見通しが立てやすくなり、対策も考えることができます。今回のアドバイスを参考にしていただき、ぜひ、ご主人とライフプランを作成してみてくださいね。

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