長崎の民芸品店「想い出」閉店 地元作家と来店客つなぐ

「ネットで調べてわざわざ来てくれる人もいた」と話す近藤さん=長崎市諏訪町、民芸品店「想い出」

 長崎市諏訪町の中通り商店街にある民芸品店「想い出」が、29日で閉店する。1998年に開店。以来22年にわたり、伝統工芸品の古賀人形をはじめ、主に地元作家が制作する民芸品を展示販売し、地元愛好家や国内外の観光客から親しまれてきた。店主の近藤敏雄さん(70)は「22年間、ただぼーっとやってきたという感じだった。22年を区切りに店を閉めようと決めた」と話している。
 近藤さんは45歳の時に、勤務していたNBC長崎放送を退職。3年後に、在職中から交流のあった作家らの作品を集めて、店を開いた。作品はすぐに集まったという。
 店内には、売約済みの古賀人形や、ステンドグラス、木工、陶芸、版画などが並んでいる。地元の民芸品と来店客をつなぐ場でもあった。顧客や作家らから閉店を寂しがる声が広がっている。
 古賀人形は400年以上の歴史があり、全部で約90種類あるという。中でも「阿茶(あちゃ)さん」「西洋婦人」「オランダさん」の三つは珍しい外国人の人形で、特に人気があるが、県内でも鑑賞、購入できる店は少ない。
 同店の閉店を受け、古賀人形は来年5月ごろから同市平和町にある私設の「浦上キリシタン資料館」で展示されることになった。同館長の岩波智代子さん(73)=東京都在住=は同市出身で、近藤さんと以前から交流があり、「温かみのある古賀人形が子どもの頃から大好きだった。これを機に作家に全種類制作してもらい、館内にコーナーを作って飾りたい」と話している。
 近藤さんは「わざわざネットで調べて訪ねて来てくれる人もいるが、多くの観光客が現物に出合えないまま帰っている。資料館で展示してもらえるのであればよかった」と語った。

 


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