妨害工作

 セントクリストファー・ネビスはカリブ海の島国だ。外務省HPの子ども向けコーナー「キッズ外務省」によると、人口は少ない方から数えて世界で10番目の5万2441人(2018年)▲英国からの独立は1983年。北中米で最も歴史の新しい国だ。辛うじて国名に聞き覚えがある気がするのは、03年の世界陸上で男子百メートル王者になったキム・コリンズ選手のおかげかもしれない▲この国が核兵器禁止条約に批准したのは今年の8月9日。長崎原爆の日だ。偶然の一致だろうか、それとも遠く「ナガサキ」に思いをはせてくれたか-と想像を膨らませている▲26日付の1面の世界地図を改めて眺めてみた。バチカン、ニウエ、ツバル、ナウル…これまでに核禁条約に批准した50カ国のうち8カ国は「人口の少ない国」のトップ10に名前を連ねている。核兵器を許さない新たな国際ルールの誕生を力強く後押ししたのは、小さな国の重い1票▲核保有国の不参加などを理由に、条約の実効性を危ぶむ声は消えない。ただ、一方で、複数の核保有国が批准への動きに「非常に強い圧力」を加えていたことも明らかになった▲妨害工作は核保有国側に広がる危機感の何よりの証拠だ。条約は「ごまめの歯ぎしり」でも「蟷螂(とうろう)の斧(おの)」でもない-その確信を新たにしたい。(智)

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