即日完売を受けて、6億5千万円分を追加発行へ 市の電子商品券

平塚商工会議所が開催した電子商品券の相談会=平塚市内(10月5日撮影)

 新型コロナウイルスの影響を受ける平塚市内の商店を支援し、発売即日完売した電子商品券「ひらつか☆スターライトポイント」について、同市は6億5千万円分を追加で発行することを決めた。発行総額は約15億2千万円となり、市幹部も「想定外」と驚く好評ぶり。県内の他自治体に先駆けたものの、利用方法が複雑で先行販売は低調だったが、高齢者に積極的に操作指南するなど官民を挙げてのアピールが奏功した。

 電子商品券はスマートフォンのアプリから各店舗に掲示されているQRコードを読み込み、あらかじめチャージしたポイントで買い物ができる。プレミアム率30%で、市は約8億7千万円分を発行。10月上旬から市民に限定した先行販売では目標額に届かなかったものの、19日に始まった一般販売では約4億1千万円分が9時間で完売した。

 市によると、アプリは約3万人がダウンロード。このうち、1人3万円を上限に商品券を購入したのは約2万2千人で、約7千人が購入できず、市には苦情が相次いだという。

 専用アプリを使うため、当初は「高齢者には分かりづらい」との批判も上がった。それでも落合克宏市長は「政府もデジタル化を進めており、避けては通れない」と決断した。

 平塚商工会議所が10月上旬に開催した説明会には、多くの高齢者がスマートフォンを手に足を運んだ。夫婦で利用方法を教わった女性(73)は「同年代では今回は使わないと言う人もいる。でも新しいことをやってみたい気持ちもある」と声を弾ませた。市も一部の高齢者施設でポイントを販売し、利用者へ手厚くレクチャーした。

 商品券はオンライン販売はせず、ポイントを販売した店舗には10%のキャッシュバックがあるため、店側も独自のクーポンやサービスを提供して競ってポイントを販売。地元のスーパーやショッピングモールも含め約千店が加盟し、利用範囲の広さも人気を押し上げる要因となった。

 一方、利用が進まず、割を食う「目玉事業」もある。市は7月、約4億5千万円を投じ、感染症対策を実施する9千事業所を対象に一律5万円を支給する独自の「応援金」を打ち出した。しかし、申請は約3400件にとどまり、浮いた6割以上の事業費が今回の電子商品券の予算に流用されることになった。

 申請には県の「LINEコロナお知らせシステム」への登録が条件。認知度の低さや需要の見積もりの甘さも背景にあるとみられるが、市幹部は「平塚の登録数は横浜、川崎市に次いで多い。各店舗が対策に取り組んだ結果。お客さんには安心してポイントで買い物してほしい」と強調する。

 追加発行は11月3日午前10時からと13日午後3時から2回に分け発売。加盟店も約1300店に拡充する方針で、落合市長も「キャッシュレス化への市民の理解が深まった。しっかり経済を回していきたい」と話している。

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