マセラティのSUV、名門ファッションブランドが仕立てたインテリアの触感は?

マセラティとゼニアというイタリアの名門同士が組んで仕立てたプレミアムSUV、レヴァンテ・Sグランスポーツ・ゼニア。高級車の世界も走りの性能だけでは飽き足りない、プラスαの魅力を携えたクルマとは果たして……。


高級車と高級ファッションがコラボ

もはやプレミアムブランドにとってもSUVは、必須要件のようになり、必ずと言っていいほどラインナップされています。ドイツの高級車ブランドはもちろんのこと、ロールスロイスやベントレー、あのランボルギーニやマセラティといったところにも魅力的なSUVが並んでいます。

そんな中で今回の注目車はイタリアの名門、マセラティが仕上げたレヴァンテです。このクルマは100年を超えるマセラティの歴史の中で初めてのSUVとして2016年3月に登場しました。日本導入も同じ年に発表され、価格は1,080万円からというものでした。

当時はマセラティ初のSUVということでイタリア車好きを中心に話題となりました。それから4年、プレミアムSUVがこれだけ世の中に溢れてくると、いくら名門の作とはいえ、注目度をこれまで以上に上げるには走りの性能だけでは、話題性はいささか希薄。そこでクルマメーカーが時々やることなのですが、ファッションブランドとのコラボ企画を考えました。イタリアンカートとなれば当然ファッションブランドもイタリアン。

それもマセラティのブランド力を考えれば、高級ブランドとなります。そこで選ばれたのが1910年にエルメネジルド・ゼニアによって創立されたイタリア屈指のファッションブランド、「エルメネジルド・ゼニア(以下ゼニア)」でした。スーツの中心は30~50万円ほど、スニーカーでも10万円前後がザラというブランドです。

以前にもランボルギーニとジャンニ・ヴェルサーチ、フィアットとグッチやディーゼルというコラボもありましたが、マセラティもやはり、自らのブランド力にふさわしいファッションブランドと手を組んだことになります。実は2015年にも両社はコラボをやっていて、今回が2度目の企画となります。

伝統手法を織り込んだ高品質インテリア

以前のゼニアとのコラボは「シルクインテリア」というものでした。当然、ベース車両はレヴァンテではなく、フラッグシップサルーンのクアトロポルテでした。世界に類を見ないほどの特製シルク素材をふんだんに使ったインテリアの仕上げは“さすがゼニア”として大きな注目を得ました。クルマ本来の走りの性能だけでなく、インテリアの素晴らしさがクルマの魅力となって加わったお陰もあり、ベース車両とはまた違った味わいを醸し出します。

極細の紐状にカットしたナッパレザーを丁寧に織り込みながら仕上げてあります。

そして今回の第2弾となるレヴァンテ・ゼニアですが、柔らかさと同時にしなやかさと耐久性も備えたナッパレザーの「PELLETESSUTA(以下、ペッレテスータ)」のインテリアを採用したことが大きな特徴となります。ナッパレザーといえば各メーカーにとって高級オプションとして設定されるレザーです。それをゼニアが仕上げるのですから、さらに上級となります。

いったいどんなものかと思いながらドアを開けました。極細の紐状にカットしたナッパレザーを、ゼニアの伝統的な機織り手法を駆使して織り上げたレザーをシート、ドアパネルなどに贅沢に張り巡らしているのです。ゼニアならではのこのテキスタイル、つまり生地と柄は、なんともしなやかで高品質な風合いです。言ってみればカシミアのような柔らかな触感を兼ね備えながらも、クルマで使うことをしっかりと考えていて、実用的ですらあります。しかし、私のような庶民に取ってみて、この高級なゼニアのインテリアで物をこぼしたり、傷を付けたり、破いてしまったらどうしようかと、けっこうドキドキしながら過ごすことになってしまいました。

シートの出来も確実にいいのは分かるのですが、それ以上に風合いの良さにうっとりとします。

大歓迎のコラボ企画

このテキスタイルはゼニアがマセラティのために開発していますから、他のメーカーのクルマに使用するといったことはしません。座ると気のせいか体にピタリと吸い付くようにフィットしてくるシートの感触は、レヴァンテだからこそ味わえる感触なんです。ちなみにもう1台、クアトロポルテにも同じ仕様が用意され、同時に登場していますが、この心地よい居心地はマセラティだけに与えられた空間です。

しっとりとしたフィット感のあるフロントシート

ベースになっているのはレヴァンテSですから、2979cc・V型6気筒ツインターボエンジンの最高出力は430馬力、最大トルクは580N・mで、そこに電子制御8速ATと4WDが組み合わされます。そして全長5メートのSUVが最高速度264km/h、0~100km/hを5.2秒で駆け抜けるのです。

それだけの実力を持っているのですが、ゼニアのシートのシルキーな座り心地や独特の香りを味わっていると、なぜか飛ばしたりする気持ちが失せていくのです。むしろプレミアムSUVにふさわしいパフォーマンスは、イザとなったときのゆとりであり、ゆったりと感触を楽しみながら走りたいという気持ちになってしまいます。

ベースになっているレヴァンテSの価格は1,360万円ですが、グランスポーツ・ゼニア・ペッレテスータは330万円高い1,690万円という価格設定になっています。おまけに今年初めに日本にお披露目された時点で20台限定の特別仕様車で希少性もあります。これが高いかリーズナブルかは、別としてマセラティとゼニアのコラボという魅力的な内容は大歓迎です。日本車メーカーのファッションメーカーとのコラボ企画は時々見ますが、ここまで高級な組み合わせではなくとも、今後もどんどんやって欲しいと思います。

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