文化に触れ 時空を旅する 長崎県美術館企画展 長崎起点の124作品

長崎を訪れた画家たちが描いた風景画などが並ぶ企画展=長崎市、県美術館

 明治時代以降、来崎した美術家や長崎から外に出た作家の作品を通して長崎の文化や風土などに触れる企画展「長崎 美術 往来!」が、長崎市出島町の県美術館企画展示室で開かれている。同展を企画した同館学芸員の松久保修平さん(28)は「長崎を起点に生み出された美術の世界を、作品を見ながら時空を旅するような感覚で楽しんでほしい」としている。来年1月3日まで。
 同館が所蔵する絵画や写真、彫刻など計124点を、▽ロマン▽まつり▽いのり▽ゆめ▽くらしと風土-の5テーマに分けて展示。
 「ロマン」では、異国情緒あふれる長崎の街並みにひかれ、全国から訪れた県外画家の作品を紹介。山形県出身で晩年に5回来崎した画家、椿貞雄(1896~1957年)の油彩画「グラバー邸」(54年)は、名所として華やかなイメージのある場所を、落ち着いた色調で表現。松久保さんは「同じグラバー邸の作品でも作家によって視点や表現が違う。時代背景も映し出されて面白い」と話す。
 「ゆめ」では、さまざまな絵画表現を求め、長崎を離れ県外や海外に活動の場を広げた彭城貞徳(1858~1939年)や山本森之助(1877~1928年)らの欧州の風景画などが並ぶ。
 「まつり」では、戦後日本を代表する写真家・東松照明(1930~2012年)が長崎くんちや長崎ランタンフェスティバルの様子を切り取った写真が中心。
 「いのり」では、信仰やキリシタンの受難を題材とした彫刻などを手掛けた彫刻家、舟越保武(1912~2002年)のドローイング作品など。
 「くらしと風土」では、長崎の人々の日常に目を向けた絵画や写真などを紹介。長崎の豪商で創作活動にも力を注いだ永見徳太郎(1890~1950年)が、大正時代に描いた油彩画「長崎港」(12-25年)は、長崎市館内町付近から長崎港を見下ろした風景画。屋根を歩くネコの姿や洗濯物が干されている様子なども描かれており、当時の生活感が伝わってくる。
 同展は一般800円、大学生・70歳以上600円、高校生以下無料。第2、4月曜(祝日の場合は火曜)、12月29日~2021年1月1日休館。同館(電095.833.2110)。

椿貞雄の「グラバー邸」(1954年)
永見徳太郎の「長崎港」(1912―25年)

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