【大学野球】「あそこで首を振れたのが成長」 広島3位の八戸学院大・大道が真っ向勝負のラスト登板

八戸学院大・大道温貴【写真:高橋昌江】

広島から3位指名された最速150キロ右腕・大道温貴投手

東北地区大学野球王座決定戦は10月31日、東北福祉大学野球場で行われ、八戸学院大(北東北大学野球連盟準優勝)は東北福祉大(仙台六大学野球連盟優勝)にタイブレークの延長10回、2-4で敗戦。26日のドラフト会議で広島から3位指名された最速150キロ右腕・大道温貴投手(4年、春日部共栄)は1-2の5回から登板し、6イニングを被安打2、10奪三振も、タイブレークの延長10回に勝ち越しを許した。それでも、東北福祉大の打者との真っ向勝負で力を示した。

八戸学院大の先発はソフトバンクから育成2位指名された左腕・中道佑哉投手(4年、野辺地西)。2回と4回に四死球から失点し、1-2とリードされた5回から大道はマウンドに向かった。迎える先頭打者はヤクルトから4位で指名された「3番・ショート」の元山飛優主将(4年、佐久長聖)。「立ち上がりだったので、(打者が)元山というより、初回という感じで入りました」と大道。5球中、4球がストレート。最後は145キロ直球で遊直に仕留めた。「2週間前から大道をイメージして練習してきた」という元山は「準備はできていたんですけど、ショートの正面に飛ぶあたりがまだ体にキレが足りていないなと思います」と振り返った。

続く、4番・小椋元太内野手(3年、一関学院)から空振り三振を奪うと、5番・楠本晃希内野手(4年、花咲徳栄)には右翼線二塁打を許したが、6番・生沼涼外野手(4年、飛龍)にカウント2-2から高めの145キロ直球を振らせてチェンジ。6回以降は8回2死から四球を出しただけで、東北福祉大打線を寄せ付けなかった。7回2死で再び、元山が打席に入ると、「完全に意識しました」と146キロの直球で空振り三振。走者がいなかったため、元山も「ホームランを打ってやろうと思っていました」と勝負をかけており、力と力をぶつけあった。

来年のドラフト候補の東北福祉大・小椋「今までの野球人生の中で一番、いいピッチャー」

試合は8回に八戸学院大が追いつき、2-2で延長に突入。延長10回からは無死一、二塁のタイブレークで、2番から攻撃がはじまる東北福祉大は代打・安里樹羅(3年、健大高崎)がバントを決めて1死二、三塁とした。この日、3度目の元山との対峙は144キロ直球で遊飛に打ち取った。元山は「試合前、『お前の時は思いっきり放る』って言われていたので、僕も気合いでいったろと思ったんですけど、気合いでいくタイプじゃないので空回りました」と頭をかいた。

元山を抑えたが、なおも2死二、三塁。4番・小椋は来年のドラフト候補として興味を示すスカウトもいる好打者。初球の143キロ直球はボールとなり、大道が2球目に選択したのは「カウントを取りにいった」というスライダーだった。ところが、小椋にとっては「ストレートは捨てて、変化球を待っていました」と待望の球だった。小椋は「ちょっと差し込まれ気味でしたけど」と言いながらも、打球は中堅手の頭上を越え、走者2人が生還した。2点を勝ち越されたが、5番・楠本を直球とスプリットでフルカウントとすると、最後は133キロのスプリットで空振り三振。大道は「ストレートのサインが出ていたんですよ。でも、あそこで首を振れたのが成長」とスプリットを選択して抑え、傷口を広げなかった。

延長10回、タイブレークで試合に敗れ、チームを勝たせることはできなかった。だが、各打者との勝負は勝ったと言えるだろう。6イニングで被安打2、奪三振は10個。コロナ禍で試合数が少なかったとはいえ、元山が「今年、対戦したピッチャーの中で一番、すごい。いい球を投げていたので、さすがやなと思いました」と言えば、決勝打の小椋は「今までの野球人生の中で一番、いいピッチャー。ストレート、スライダー、スプリットと全部、見たんですけど、すごかったと思います」と話した。

チームや指名してくれた広島へ感謝の思いを持って投げたという大道はこの試合でアマチュア野球を“卒業”。「楽しかったですが、悔しい気持ちは大きいですよ」。根っからの負けず嫌い。数ヶ月後には次元が異なる世界が待っている。膨らみが大きく、見逃ししかさせられなかったスライダーは今年に入って、変化量を練習。空振りさせることが増え、秋季リーグ戦では36回で60奪三振をマークした。この日はスプリットの精度に「自分でもびっくりした」と好感触。「大学野球は終わりますけど、気を抜かないで、この後も練習をし続けます」。ゴールはない。進化は続いていく。(高橋昌江 / Masae Takahashi)

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