理想と現実の貯蓄額の差は60代で最も大きくなるという過酷な現実

お金にまつわる話は、どれだけ仲が良くてもなかなかしにくいもの。ましてや貯蓄額となるとなかなか明らかにしづらく、お互いどれだけ蓄えているかの話はタブーの場合も。この話題が上がった際は、互いに話をそらすのが大半ではないでしょうか。

実態が見えにくく、話題もしにくい貯蓄にまつわる様々なデータを今年10月、松井証券が発表しました。全国の子どもと親のいる20~60代の男女合計800名を対象にしたインターネット調査ですが、見るのがちょっと怖いような人々の貯蓄の実態、貯蓄への考えが明らかになりました。


10%と30%が境界

収入に対して、年収に対する貯蓄の割合の考え方は人それぞれ違うでしょう。「年収の貯蓄割合に関して、あなたが思うそれぞれの言葉の定義について」という問いでは、下記のような結果が出ました。

「浪費家・一般的・貯蓄家の境界線」(松井証券株式会社調べ)

回答の中央値を集計すると、年収に対する貯蓄額が10%以下の人を「浪費家」と考えることが多く、年収に対する貯蓄額が30%以上は「貯蓄家」と定義する人が多いことが分かりました。また、一般的な貯蓄割合として考えられるのは年収に対して11~29%となりました。

ザックリと「生活する上でかかるお金変わらない」として考えれば、年間収益が多ければ多いほど貯蓄に回せる金額も多くなります。なので、そもそも「年収がいくらなのか」によっても、適切な貯蓄割合の定義は変わってくるはず。しかし、多くの人が「年収の30%以上貯蓄できれば安心」という考えを持っていることが可視化された結果になりました。

年代別、貯蓄の理想と現実とのギャップ

次に「あなたの現在の世帯貯蓄額と、あなたが思う、現在の生活における理想の世帯貯蓄額を教えてください」という問いでは、下記のような結果が出ました。

「年代別の理想と現実の貯蓄の差額」結果(同)

現在の「現実の世帯貯蓄額」は下記のようになりました。
・20代=100万円
・30代=300万円
・40代=350万円
・50代=500万円
・60代=1200万円

一方で、「理想の世帯貯蓄額」については以下です。
・20代=480万円
・30代=1,000万円
・40代=1,000万円
・50代=2,000万円
・60代=3,000万円

つまり、「現実の世帯貯蓄額」と「理想の世帯貯蓄額」を見比べてみると、年代が上がれば上がるほど、その差が大きくなり、60代でのその差額は1,800万円にもなります。言い換えれば、老後の資金に対して、60代の人はなんらかの不満、不安を多く抱いており、理想と現実とのギャップを強く感じているようにも思える結果です。

「子どものための貯蓄」は40代までにひと段落?

次に「あなたは誰のために貯蓄をしていますか?」という問いでは、下記のような結果が出ました。

「誰のために貯蓄してる?」結果(同)

結果を見ると、「自分たち夫婦のため=71.3%」が第1位となり、次いで「子どものため=67.6%」が第2位。第3位の「自分のため=21.8%」とは大差を付ける結果となりました。

世代別に見ても「自分たち夫婦のため」は、世代ごとに大きな変化は見られません。その一方、「子どものため」は、「20代=85.0%」、「30代=87.5%」、「40代=83.1%」、「50代=50.0%」、「60代=32.5%」という結果が出ました。

20~40代までが「子どものため」が8割超であるのに対して、50代では5割、60代は約3割まで低下しています。このデータから鑑みると、「子どものため」の貯蓄は、40代までにひと段落・安心する傾向があると言えそうです。

「自分のための貯蓄」をする人の半数以上が「趣味」!

貯蓄したお金の使途として「具体的にどの費用に充てようと思っていますか」という問いには下記のような結果が出ました。

「貯蓄する理由TOP3」(同)

「子どものため」の理由としてダントツで多かったのが「学費」。さらに「いざというときの備え」、「結婚」と続きました。このデータはある程度想像がつくものではありましたが、特に気になったのが「自分のため」の貯蓄をしている人のうち、「趣味のための貯蓄」が50.6%もあったことです。

いずれの世代も、貯蓄理由の大半が「子どもに辛い思いをさせたくない」「周囲に迷惑をかけたくない」というような理由に裏付けされているのに対し、「趣味」のための貯蓄というのが、意外に多いことに驚きました。

貯蓄するって大変

ここまでのデータを見ると、どの世代でも多くの人が様々な苦労や我慢をしながら貯蓄に取り組んでいることがよくわかりました。これらのデータ調べおよび発表をした松井証券では、「松井FP~将来シュミレーター~」(https://matsui-lifeplan.milize.com/) という貯蓄にまつわる将来設計をシュミレーションするツールを無料で行っています。こちらも是非試してみてください。

今回のデータでは想像通り「老後のための貯蓄」が多く見られました。次回の「貯蓄アンケート公開・後編】では、さらに「老後のための貯蓄」に関する細かいデータを分析し、多くの人の意見を紹介したいと思っています。

「老後資金に関する調査」実施概要
・調査方法:インターネット調査 ・調査時期:2020年 9 月
・調査対象:子どもと親のいる全国の20-60代男女、計 800 名(男性 400 名/女性 400 名)
(※性年代均等割付、小数点第二位を四捨五入しているため、合計が 100%にならない場合があります)

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