そぞろ寒の季節に

 ここ何日か、自宅を出ようとして薄手のコートを着ようか着るまいか、少しの間、迷っている。「寒い」と言うにはやや早い、こういうのを何と呼ぶのだろう。季節の言葉を集めた本をめくると「そぞろ寒(さむ)」という一語があった▲本には〈肌寒さを感じて、もう一枚羽織りたくなる気分でしょうか。晩秋のものさびしさも感じられます〉と解説がある。この時節、しっくりくる言葉だろう▲知らず知らず、ふと気が付けば-というのが「そぞろ」だが、列島では今月に入った頃から新型コロナがそぞろに広がっている。8月の下旬以来らしいが、新たな感染者の数が千人に達する日も多い▲北海道では6日連続で100人を超え、東京都ではここ7日間、1日当たりの平均数が200人を超えている。空気が乾燥する冬は、飛沫(ひまつ)が長時間、漂いやすいとされる。用心を重ねる時期が続く▲政府は、観光支援の「Go To トラベル」の対象から、北海道をすぐに外す考えはないらしい。感染予防の策をより強め、経済はなるべく止めずに越冬する-。「言うは易(やす)く、行うは難(かた)し」に違いない▲外出や遠方への移動を控えた春・夏とは違い、「予防する」「移動する」「消費する」、このバランスが大事な冬になる。そぞろ寒のこの時季は、風雪に備える「冬構え」の頃でもある。(徹)

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