2020年10月度「人手不足」関連倒産

 2020年10月度の「人手不足」関連倒産は28件(前年同月比28.2%減)だった。2カ月ぶりに前年同月を下回り、今年に入り5月に並ぶ最少件数を記録した。
 東京商工リサーチが10月30日に発表した上場企業の「早期・希望退職者募集」動向調査では、2020年の「早期・希望退職募集」実施企業が72社に達した。すでに2019年1-12月(35件)の2倍増と急増し、新型コロナ禍での雇用環境の悪化を映している。中小企業でも売上縮小に陥り、「人余り」が広がっている。なかでも、人員確保が困難な「求人難」倒産は2017年8月以来、3年2カ月ぶりに発生がなく(前年同月6件)、人手不足の解消が顕著な流れとなっている。
 ただ、「後継者難」は、1-10月累計で301件(前年同期比47.5%増、同204件)と増勢を持続している。後継者不在の企業が業績不振に陥り、倒産に至る悪循環を個別企業で断ち切るのは難しい段階にきている。人手不足が解消する一方で、社長不足は一段と深刻さを増している。

10月の「人手不足」関連倒産は28件、5カ月ぶりに30件を割り込む

 2020年10月の「人手不足」関連倒産は28件(前年同月比28.2%減)で、2カ月ぶりに前年同月を下回った。内訳は、代表者や幹部役員の死亡、入院などの「後継者難」が23件(前年同月24件)で最多。次いで、幹部や中核社員の独立、転職などで事業継続に支障が生じた「従業員退職」が4件(同4件)、賃金上昇が収益を圧迫した「人件費高騰」が1件(同5件)だった。人員確保が困難で事業継続に支障が生じた「求人難」は2017年8月以来、3年2カ月ぶりに発生がなかった(同6件)。コロナ禍での事業縮小、人材移動などによる人手不足感の緩和がうかがえる。

サービス業他が最多、9地区のうち8地区で発生

 産業別では、最多がサービス業他の10件(同10件)。次いで、製造業7件(同1件)、建設業4件(同10件)、卸売業3件(同6件)、情報通信業2件(同2件)、小売業(同7件)と不動産業(同3件)が各1件の順。農・林・漁・鉱業(同ゼロ)と金融・保険業(同ゼロ)、運輸業(同ゼロ)は2年連続で発生がなかった。
 地区別では、9地区のうち、北海道(前年同月3件)を除く8地区で発生した。関東11件(同14件)を筆頭に、近畿6件(同7件)、九州4件(同3件)、中部3件(同3件)、中国(同7件)と東北(同2件)、北陸(同ゼロ)、四国(同ゼロ)が各1件。

2020年1-10月の要因別、「後継者難」型が約8割を占める

 2020年1-10月の「人手不足」関連倒産は388件(前年同期比15.4%増、前年同期336件)に達する。ただし、「後継者難」以外は減少し、「人手不足」倒産はコロナ禍で一気に解消してきた。
 内訳は、「後継者難」が301件(同47.5%増、同204件)、「従業員退職」が37件(同2.6%減、同38件)、「求人難」が32件(同52.2%減、同67件)、「人件費高騰」が18件(同33.3%減、同27件)。唯一増加した「後継者難」は全体の約8割(構成比77.5%)を占める。

2020年1-10月、サービス業他が唯一の90件台で最多

 2020年1-10月の産業別は、サービス業他が92件(前年同期比7.0%減、前年同期99件)で最多。次いで、建設業が79件(同27.4%増、同62件)、卸売業58件(同56.7%増、同37件)、製造業57件(同58.3%増、同36件)、小売業42件(同10.5%増、同38件)、運輸業22件(同26.6%減、同30件)、不動産業(前年同月17件)と情報通信業(同12件)が各15件で続く。
 2020年1-10月の地区別では、9地区のうち北陸(4→9件)、北海道(14→23件)、中国(21→34件)、関東(124→147件)、近畿(46→52件)、東北(24→27件)の6地区が増加。一方で、四国(13→11件)、中部(35→32件)、九州(55→53件)が減少した。

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