鷹・周東、どうすれば100盗塁可能? “青い稲妻”が絶賛する盗塁技術と課題とは…

ソフトバンク・周東佑京【写真:藤浦一都】

セ・リーグ記録保持者の松本匡史氏は「周東なら3桁の可能性ある」

ソフトバンクの周東佑京内野手は今季、メジャー記録をも上回る13試合連続盗塁の日本新記録を樹立した。育成出身選手として初めてシーズン50盗塁の大台に乗せて、初の盗塁王のタイトルを獲得した。

開幕当初は代走や守備固めでの出場が多く、今季初盗塁は開幕1か月後の7月24日の日本ハム戦と遅かった。来季以降、開幕からレギュラーとして常時出場すれば、盗塁数もまだまだ増える可能性が高い。1972年に当時阪急(現オリックス)の福本豊氏がマークしたシーズン106盗塁の日本記録に、どこまで迫れるか。元巨人外野手で76盗塁のセ・リーグ記録を保持する松本匡史氏が検証する。

「来季以降、周東ならシーズン3桁の可能性があると思います」。現役時代、青い手袋をして颯爽と盗塁を決める姿から“青い稲妻”と呼ばれた松本氏はそう言い切る。周東の盗塁技術に対して「スタート、中間走、タッチをかわすスライディング技術の3拍子がそろっている。今のプロ野球界では頭抜けている」と高く評価している。

日本プロ野球の歴史の中で、シーズン3桁盗塁は1972年の福本氏の1度だけだが、当時は130試合制。今季はコロナ禍で120試合に縮小されたが、来季以降は143試合制に戻る見通しだけに、そのチャンスは多いといえるだろう。

今季の周東は、初盗塁を決めた7月下旬からスタメン出場が増え、9月中旬以降は「1番」にほぼ固定された。8月末から9月初旬にかけては打率が2割1分を切るほどだったが、その後、グングンと上昇させ、最終的には打率.270、出塁率.325に達した。

100盗塁達成には「バッティングが鍵を握ることになる」

松本氏は「来季も引き続きレギュラーとして試合に出続けられるとすれば、盗塁数をどこまで増やせるかは、ますますバッティングが鍵を握ることになる」と指摘する。実際、福本氏は106盗塁の1972年に打率.301、出塁率.384。松本氏もセ・リーグ記録の76盗塁を記録した1983年に打率.294、出塁率.361をマークした。出塁を増やすことで、自ら盗塁のチャンスを増やした。

松本氏は周東の打撃について「シーズン終盤にきて、フライよりライナー、引っ張りだけでなく逆方向への打球が増え、それにしたがって打率も上がっていった」と評価。その上で、「もう少しゴロを打つ意識が強くてもいい気がする。私も現役時代にコーチからよく言われたことだが、フライを上げてしまえば、相手がエラーをする可能性も低い。ゴロなら、捕球と送球の2段階でミスが起こりうる。打者が周東となれば、それだけで相手野手は焦るから、なおさらだ」と提言する。

パ・リーグで周東に次ぐのは8差の42盗塁の日本ハム・西川遥輝外野手。セ・リーグは盗塁王の阪神・近本光司外野手でも31個にとどまり、2位の23個をマークした巨人・増田大輝内野手は代走での出場が主だった。50盗塁の大台到達は、パ・リーグでは現阪神のオリックス・糸井と西武・金子が53盗塁でタイトルを分け合った2016年以来4年ぶりだが、セ・リーグでは、2005年に阪神の赤星憲広氏が60盗塁をマークしたのを最後に15年間実現していない。

松本氏は「今季終盤の周東は素晴らしい積極性を見せてくれたが、球界全体を見ると、最近は成功率重視というか、昔に比べて走力のある選手が増えているにも関わらず、トライする気概に欠けていると思う。各球団の首脳陣からも『グリーンライト(盗塁自由)にしていても、なかなかスタートを切ってくれない』という声を聞く。闇雲に走れとは言わないが、失敗から学べることもある。もっとスリリングでダイナミックな野球を見たいですよね」と苦言を呈した。

ちなみに、周東の今季盗塁成功率は89.29%。2位の西川は85.71%。106盗塁の時の福本氏の80.92%、76盗塁の時の松本氏の82.61%を上回る。来季以降、周東に刺激され、セ、パ両リーグで走者が果敢にアタックするシーンが増えれば何よりだ。その前に14日開幕のクライマックスシリーズ(CS)で、ひとまわりスケールアップした周東がどんな走りっぷりを見せてくれるか楽しみだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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