貯金0、奨学金あり若夫婦「いくらの家なら買える?」プロが教えるライフプランの立て方

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、24歳、パートの女性。30歳の夫と結婚している相談者。将来マイホームが欲しいとのことですが、貯金0に加え、夫に奨学金とカーローンの返済があり、住宅ローンを組んでも完済できるか不安があるそうですが…。FPの渡邊裕介氏がお答えします。

将来、マイホームが欲しいと考えているのですが夫が今年30歳になり早く動き始めないとローン完済まで働けるか不安です。現時点での貯金はほぼ0、夫は奨学金と車のローンがありすぐに払い終えられそうにありません。そんな中、どうにか貯金をして老後暮らしていける家が欲しいです。

【相談者プロフィール】

・女性、24、パート、既婚

・同居家族について:夫(30)はIT企業で月の手取りが20万です。

・子ども:なし

・住居の形態:賃貸

・毎月の世帯の手取り金額:33万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:2万円

・毎月の世帯の支出の目安:30万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:7万5,000円

・食費:5万円

・水道光熱費:1万5,000円

・保険料:2万1,000円

・通信費:1万3,000円

・車両費:1万5,000円

・お小遣い:3万円

・その他:7万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:3万円

・現在の貯蓄総額:0

・現在の投資総額:0

・現在の負債総額:7万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:4万円


渡邊:こんにちは。ファイナンシャルプランナーの渡邊です。住宅購入についてのご相談です。奨学金と自動車ローンを抱える中、早めに住宅購入をしたいとのご要望です。

ご相談者は、どれくらいの物件を購入することが出来るのか、また、どのように返済計画や貯蓄計画を立てて行けば良いのかについて知りたいようですが、まずはその前にご自身のライフプランについてしっかりと考えることをお勧めします。ご相談内容を拝見する限り、まだ定まってないように見受けられます。一度ご自身の理想の生活などを整理してみましょう。

STEP1.目標の明確化(ライフイベント表の作成)

まずは、将来やりたい事や夢や経済的目標を整理することです。

今回のご相談でもある「マイホーム購入」や「将来のお子様」、「旅行」「自動車購入」など、将来に世帯で起こり得るライフイベントや、やりたい事などをまずは書き出してみましょう。そして、それを時系列に並べ、ライフイベント表を作成します。もし、将来お子さまが欲しいようでしたら、何年後に一人目とかです。お子様がいる場合は、教育費準備などのタイミングが自動的に決まっていきます。その他、マイホーム購入、旅行や自動車購入のタイミング、リタイアの時期などを書き込んでいくと、今後の生活の流れが見えてくるので、「いつ」「何を」が明確になってきます。まず頭で考えるだけでなく、見える化をしていきましょう。

STEP2.それぞれに掛かる費用の確認

将来の経済的目標が明確になったら、次はそれぞれにいくらくらい掛かるのかを算出していきます。住宅については、まずは住みたいエリアで希望する金額で構いません。自動車なども、まずは欲しい車の金額を書き込んでいきましょう。教育費など、現段階で具体的に分からないようであれば、公立か私立に行かせたいかくらいを考えておいて、その平均的な金額で構いません。

この作業をしていると、「きっと無理だろう」など頭をよぎることもありますが、理想の生活を実現するために今から何が出来るのかを考えることからスタートなので、金額を下げるべきかは、そのあとで大丈夫です。目標が明確になっていれば、その理想を実現することが見えてくるものです。

STEP3.現状の家計・貯蓄の推移などの確認(キャッシュフロー表の作成)

ここまでくると、「いつ」「何の為に」「いくら必要」が見えてきます。次に必要なのは、現状の家計の収支の確認です。どれくらい収入があり、日々の生活で必要なお金の整理と、今後の貯蓄額の推移です。

今回のご相談者は、毎月の貯蓄額が3万円とあるものの、現在の貯蓄総額が0円です。すなわち、単月だと3万円貯められるかもしれませんが、年間を通してみると何かしらには使ってしまっており、貯められていない現実が見えてきます。ボーナスの使い道も確認が必要です。もちろん、細かい項目も重要ですが、将来の経済的目標の達成の為に必要なのは、年間でどれくらい貯めることが出来るのかです。年間を通して、いくら貯蓄額を純増できるのかについて整理してみてください。

ライフイベント表とキャッシュフロー表を重ねると、それぞれの経済的な目標に対して順調に進んでいるのか、このままだと目標を達成できないかが見えてきます。住宅購入なども、今の生活や家賃と比較して大丈夫という判断をしがちですが、先々の生活も見据えた上での購入計画が重要となります。

STEP4.対策案の検討

現状の生活を続けていくとどうなるかが確認出来れば、次に対策を考えていきます。対策は主に4つです。

【1】貯蓄を増やす
【2】運用をする
【3】目標を下げる
【4】目標を先延ばしにする

現状のままだと目標に届かなそうであれば、収入を増やすか、家計の見直しをして支出を抑えることで、貯蓄を増やす必要があります。また、リスクはありますが、運用を取り入れることで、老後など長期的な目標に向けてお金を増やしていくことを考えるのも重要です。

【1】と【2】で達成できるのが理想ですが、どうしても難しい場合は、目標を下げたり、タイミングを後ろにずらしたりなどの対応も必要になってきます。その時に、目標の優先順位付けをしておきましょう。例えば、一番大事な住宅購入の為には、旅行の回数を減らす、自動車の金額を下げるなどです。

STEP5.実行

目標が明確になり、それに向けてどう貯蓄をしていけば良いのかが明確になれば、あとは日々の生活で実行していくのみです。

もちろん、生活していく中で思い通りにいかなかったり、収入の変化や家族構成の変化、目標も変わったりと、修正が必要になることもあるので、必要に応じて修正や見直しをしていきながら、理想の生活の実現に向けて進んでいきます。

今回のポイントのまとめ

ご相談者については、上記頂いた情報だと住宅購入以外の目標などが見えてこないので、既に頭の中に描いている、どのような生活をしていきたいのかをまずはご夫婦で話し合ってみてください。奨学金や自動車ローンを抱えていると、住宅ローンの審査にも影響し、借入れできる額も限られてきます。老後を見据え、早めに住宅購入を考えているようですが、慌てて購入してしまうよりも、じっくりとご自身のライフプランを整理した上で、購入するタイミングや金額について検討されることをお勧めします。それからでも遅くはありません。

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