鷹島海底遺跡 水中考古学の拠点に 池田榮史・琉球大教授

池田榮史・琉球大教授

 長年にわたり鷹島海底遺跡の調査、研究に携わってきた池田榮史・琉球大教授に、同遺跡の調査が始まった経緯や現状、今後の課題などを聞いた。

 -鷹島海底遺跡の調査が始まった経緯は。
 1980年に文部省(当時)の科学研究費で水中考古学の調査、研究が始まった。蒙古襲来は中世の日本、東アジアの歴史で重要な事象でありながら、水中考古学の視点での調査や研究は進んでいなかった。元寇の痕跡を海の中から探そうというのが始まりだった。

 -調査はどう進んだのか。
 鷹島を「埋蔵文化財の包蔵地」として周知したこともあり、住民からも海底から見つけた元寇の遺物と思われる物が持ち寄られ、鷹島には元寇の痕跡が確実に残っていることが分かった。周辺の港の開発や改修工事に伴い、緊急発掘調査が実施され、陶磁器や木製のいかり、武器などの遺物が次々と出てきた。平行しては学問的に元寇の全体像を明らかにしようという研究も始まり、それを両輪に鷹島海底遺跡の調査、研究が進んできた。

 -成果はどうか。
 この10年で元軍の沈没船2隻発見することができた。40年かけて多くの元寇の遺物が出土し、音波探査などで海底の遺物を発見する方法や技術も確立した。一つの節目を迎えたと思う。

 -今後の展開は。
 海底から出土した遺物をどうやって保存処理し、多くの人に見てもらうかを研究する段階に入った。保存処理にどれだけの時間や費用がかかるのか研究や実績を重ねることで、将来の元船の引き揚げにつなげていきたい。
 松浦市は鷹島に水中考古学研究センターを開設し、遺跡の保存や重要性を世界に向けて発信しようと模索している。水中考古学の拠点としてどのように展開していくのかも注目したい。


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