リモートワーク離職を防げ!オンラインでのコミュニケーションを変える、3つのポイント

4月の緊急事態宣言の発令から半年が経過しました。ビデオ会議や社内SNSの活用など、最初は手探りで行っていたリモートワークでの業務に慣れてきたという声を耳にするようになりました。

一方で、コロナ禍終息の見通しが立たない中、リモートワークが続くことに不安を感じる声も聞かれています。コミュニケーションが遠隔となったことで、お互いの仕事の状況やナレッジなどの情報共有がされにくくなり、仕事の偏りや抜け漏れが発生しているようです。

このような問題を解決し、リモートワークを継続しながら組織の生産性を上げるにはどうしたらよいのでしょうか。企業で既に行われている取り組みを交えて解説します。


会わないことで生まれる情報格差

カオナビHRテクノロジー総研が本年8月に実施した調査によれば、リモートワークで不安に感じることは「自分の仕事の質や生産性」とともに、お互いの仕事の状況や必要な情報が得られないといった情報格差に関する項目も不安の上位を占めています。

この様な不安や不満を放っておくと、自分を律して業務に向かうことができなくなり、周囲との協働を進めることが難しくなります。一部の人が仕事を抱え込んだり、問題が発生しても相談が上手くできないことによって、メンタル不全や離職なども懸念されます。

リモートワークを開始するための環境整備を行ってきた企業は、この体制を継続し、自律と協働を推進し、生産性を上げていくための「職場コミュニケーションのデザイン」が必要です。大切なのは「範囲」「頻度」「質」の3つのポイントです。

ポイント1:コミュニケーションの範囲を広げる「非公式なやりとり」

在宅勤務が多くなると目的外での会話が減るため、コミュニケーションをとる人が限られてきます。

オフィスへ出社していた時には、たまたま近くにいる先輩に相談をしたり、案件が未確定なうちから関連部署に声をかけたりすることができました。しかし、在宅になると直接会話をするためには、社内でもアポイントを取る必要が生じます。

結果として、直接仕事に関わるメンバー以外との交流範囲が狭まり、非公式なやりとりが減少します。積極的に自分からアプローチすることが苦手なメンバーが仕事の相談ができず問題を抱えこむケースも出てくるでしょう。

対策として、組織外を含めた任意参加でのオンライン上のディスカッションの場を設定している企業があります。例えば、テーマを掲げた部門横断での業務に関係する勉強会や、ランチタイムでのテーマを決めない雑談方式の座談会などです。

いきなり大人数での実施をすると調整にパワーがかかるだけでなく会話もしづらくなるため、最初は小さな単位での場を設定するのがコツです。

また、社内でのSNSグループを作って質問や相談が気軽できるシステムを作り、不特定のメンバーに質問を投げかけ、回答できる人が返信するという相互支援を行っている組織もあります。

オープンな場に投げかけをすることで、迅速な対応ができるとともに、ノウハウがストックされていくというメリットもあります。

ポイント2:コミュニケーションの頻度を増やす「上司と部下の1on1面談」

直接仕事での協働がなくても、毎日顔を合わせていたチームメンバーが、リモートワークになって会議の時にしか顔を合わさなくなります。

上司もメンバーの顔色や状況を見ながら声をかけることや相談に乗ることができますが、物理的に顔を合わせる機会が減ることによって、仕事の状況、体調やメンタル面での不調に気づかないことがあります。

特にプロジェクト制などで、それぞれのメンバーが個別の業務を行っている場合などはお互いの状況が見えづらく、注意が必要です。

対策として、定例のコミュニケーションの場を設定することが有効です。最近は、上司と部下での1on1ミーティングを導入する企業が増えてきました。これは、1~2週間に1度上司部下の1対1での打ち合わせの場を設定しておき、好きなテーマについて話し合うことができる仕組みです。

業務上のトラブルやプライベートの悩みなど、大勢のいる場では相談しづらいことであっても話をしやすくなります。ビデオ会議や電話であっても、1対1であれば相手の状況や表情も把握しやすくなるので、問題を溜め込む前にタイムリーに対応することが可能となります。

また、担当業務によって接する頻度に偏りがある場合も、定例の場を設定することで偏りが解消しやすくなるというメリットもあります。

ポイント3:コミュニケーションの品質を高める「気分や気持ちの可視化」

ビデオ会議や電話でのコミュニケーションは対面と比較して伝わる情報量が少なく、特に表情など「非言語情報」が伝わりにくいと言われています。相手の反応が読み取りづらく、一方的な情報伝達になりやすいため相手の感情にも配慮する必要があります。

また、大人数の会議ではアジェンダを明確にして効率的に進めるあまり、事務的で硬い雰囲気になりやすく、話しづらさを感じるメンバーも出てきます。会議の際に、話す人と聞く人が対面の時以上に分かれると、建設的な議論やチームでの一体感が生まれにくくなります。

対策として、会議の冒頭・最後に「チェックイン」「チェックアウト」という気持ちや感想などを一人ずつ発言する機会を設定することで、参加意識を高め、発言しやすい雰囲気を作ることができます。

ビデオ会議の場合には、できるだけビデオをオンにして互いの表情が見える中で会話をするのも心理的な安全性を高めます。また、遠隔でのコミュニケーションでは伝わりづらい非言語情報を言語化することをお勧めします。

言外に伝わりづらい要素を補う工夫を行っている組織もあります。グループ会議の事前共有に、自らの状況を表情や天気図のアイコンで表すフォーマットを導入した例です。「仕事はスケジュールどおり進んでいるけど、何となく不安があるので曇り」というような、言語で表現できない「行間」を伝えやすくなるというメリットがあります。

このように組織内コミュニケーションの範囲、頻度、質の3つを意識することで、リモートワークでのコミュニケーションを円滑にし、組織の生産性を高める余地があるはずです。

まずは、自分たちのチームでも実施できるところから着手をしてはいかがでしょうか。

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