SF/SFLにダブルエントリーの宮田莉朋が4日で1400km超を走破「ホント頑張りました!」

 11月14〜15日に、大分県日田市のオートポリスで開催された全日本スーパーフォーミュラ選手権第4戦/全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権第4ラウンド。この週末、スーパーフォーミュラにはVANTELIN TEAM TOM’Sから、スーパーフォーミュラ・ライツにはカローラ中京 Kuo TEAM TOM’Sからダブルエントリーした宮田莉朋が、11月15日のスーパーフォーミュラ決勝を走りきり、4日間で1400km超の距離を走破した。

 今季、スーパーフォーミュラ・ライツ(SFL)とスーパーGT GT500クラス、ピレリスーパー耐久シリーズを主戦場とする宮田は、WEC世界耐久選手権に参戦する中嶋一貴の“代打”として9月26〜27日のスーパーフォーミュラ第2戦岡山でSFデビューを飾った。

 このときもスーパーフォーミュラ・ライツとダブルエントリーとなった宮田だが、今回のオートポリスラウンドでのダブルエントリーは「体力面で厳しいのでは……?」という声も周囲からは多く聞かれていた。というのも、この大会はSFLが週末3レース開催(岡山は2レース開催)で純粋に距離も多く、タイムスケジュールもタイト。またオートポリスは中高速コーナーが多くバンピーで、岡山よりも体力の面で厳しいのは間違いないからだ。

 11月7〜8日に行われたスーパーGT第7戦もてぎの余韻もつかの間、オートポリスではSFLの走行が11月12日(木)からスタートしていた。宮田の各日の走行距離とスケジュールをご紹介しよう。

■11月12日(木)

11:00〜12:35 SFL専有走行1 32周 1’37.449
14:18〜16:24 SFL専有走行2 33周 1’36.557
1日目合計 65周

 スーパーフォーミュラ・ライツは今季、木曜から走行がスタートする。晴天に恵まれた初日、宮田は午前、午後ともにSFLのトップタイムをマークした。もともと「オートポリスは苦手」と語っていたが、タイトルを争う阪口晴南(Buzz Racing with B-MAX)との差も僅差で、緊張感ある初日となった。

■11月13日(金)

09:00〜10:30 SFL専有走行3 30周 1’35.762
13:30〜15:30 SFL専有走行4 41周 1’35.820
2日目合計 71周

 2日目のオートポリスも晴天。この日は午前の専有走行3では阪口がトップタイム、宮田は2番手となった。しかしSFの準備が進む中で行われた午後の専有走行4ではふたたびトップタイムをマーク。「2日間の走行ではタイムは出ていましたが、悩む部分も多かったです。予選に向けてはまだまだ足りないな、と思ってます」と振り返った。

宮田莉朋(カローラ中京 Kuo TOM’S 320)

■11月14日(土)

08:20〜08:50 SFL公式予選 9周 第9戦:1’35.493(R)/第10戦:1’36.548
10:05〜11:05 SF専有走行 23周 1’24.931
12:20〜13:23 SFL第9戦決勝 21周+グリッドへの試走3周 優勝
        レース後表彰式・SFL記者会見出席
14:45〜15:45 SFフリー走行 20周 1’25.035
3日目合計 76周

 この日のSFLの予選は早く、多くのドライバーはまだ暗いなか宿泊地を出て、日の出前にサーキットに到着した。赤旗中断があった予選で宮田はニュータイヤ投入が功を奏し、第9戦のポールポジションを獲得。ただセカンドベストの第10戦では3番手に留まった。

 TCRジャパンの予選を挟み、スーパーフォーミュラの専有走行とスタート練習へ。SFで走る初めてのオートポリスながらいきなり2番手につける。ピットビューイングの後、SFL第9戦決勝へ。この週末のSFLで最も長い21周を逃げ切り優勝を飾った。さらに、TCRジャパン決勝をはさみSFのフリー走行へ。ここでは8番手でSFの初日を終えた。SFL第9戦の記者会見後には「しんどいです! お昼食べられてませんし……」とも。

宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)
宮田莉朋(カローラ中京 Kuo TOM’S 320)
全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権第9戦オートポリス スタート

■11月15日(日)

08:00〜08:51 SFL第10戦決勝 14周+グリッドへの試走3周 3位
        レース後表彰式・SFL記者会見出席
10:15〜11:58 SF公式予選 Q1=4周/Q2=4周/Q3=2周 合計10周 7番手
12:40〜13:31 SFL第11戦決勝 14周+グリッドへの試走3周 優勝
        レース後表彰式出席
14:00〜15:53 SF第4戦決勝 41周+ウォームアップ3周+フォーメーション2周 8位
        レース後SFL記者会見出席
4日目合計 90周

宮田莉朋(カローラ中京 Kuo TOM’S 320)
スーパーフォーミュラ・ライツ第11戦を制した宮田莉朋(カローラ中京 Kuo TOM’S 320)
スーパーフォーミュラ・ライツ第11戦のレース後、走ってピットに戻る宮田莉朋
宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)

 最も多忙だったのが日曜。ふたたび暗い中サーキット入りし、SFL第10戦のレースへ。名取鉄平(TODA FIGHTEX)に迫るも第10戦は3位でフィニッシュした。その後表彰台、記者会見をこなし、TCRジャパンをはさみSFの予選へ。Q3まで進出した。さらに1時間もないなかでSFL第11戦を戦い、今度はポール・トゥ・ウイン。表彰式を終えた後、ダッシュでピットに戻りSFのウォームアップへ。グリッドでしばし食べ物を頬張り、41周のレースを戦い8位フィニッシュ。ポイントを獲得した。その後息つく間もなくふたたびSFLのスーツに着替え、SFのウォームアップのために出席できなかったSFLの記者会見にひとり出席して長い週末を終えた。

 SFのレース後の宮田はさすがに疲れた様子だったが、意外にも“元気”だった。もともと週末を迎える時点で、もし仮に体調に異常をきたしてしまった場合、「これで倒れでもしたら、ダブルエントリーが禁止になってしまうかもしれないじゃないですか。それはイヤだったんです」と語っていた。

「首はヤバかったですね。でもSFの決勝は予選よりもペースが遅いので、なんとか戦えた感じです。でももしあと20周長いようなレースだったら厳しかったでしょうし、走れたとしても判断力が低下していたかもしれません」と宮田。

 さらに宮田は「ポイントを獲ることができましたが、周囲はリザルトだけ見たら『ポイントだけかよ』と言うかもしれません。でも『スケジュールを見てくれ』と言いたいです。ホント頑張りましたから!」と笑顔をみせた。

 ちなみに、オートポリスは1周4.674km。4日間で宮田はひとりで302周しており、1,411km走っている。アウトラップ等の計測されない周を含めればさらに多いはずだ。また熊本県大津町のホテルから土曜までは宮田がレンタカーを運転しており、走行距離はさらに伸びる。4日で本州縦断にも等しい距離を走っていることになる。

 最後に宮田に、ダブルエントリーを乗り切った秘訣は何か……? と聞くと、「バンテリンです。SFのグリッドで塗っているのが映像に映っていると思いますよ。ホント効きます」とチームのスポンサーをバッチリプッシュしてくれた。若さこそあるとはいえ、バンテリンはもちろん、宮田のタイトスケジュールを支えたトムスがチーム全体でつかみとったSFLの2勝+1表彰台、SFポイントフィニッシュという“4レース完走”の結果は、勝利に等しい価値と言えるのかもしれない。

宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)

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