平戸八景「高巌」のツタ 突然消える 台風影響か?残念がる声

自生するツタが多くあった「高巌」を指す吉田さん=佐世保市江迎町

 国指定名勝「平戸領地方八竒勝(はっきしょう)(平戸八景)」の一つ、長崎県佐世保市江迎町の砂岩断崖「高巌(たかいわ)」。断崖に絡み付いたツタの紅葉は秋の風物詩だったが、一部のツタが突然消えてしまった。9月の台風の影響で吹き飛ばされたとみられ、住民は残念がっている。
 市教委文化財課によると、高巌は高さ約30メートル、幅約200メートル。江戸時代、平戸藩主の松浦熈(ひろむ)が領内に点在する八つの奇岩・名勝を選んだとされる。
 住民によれば、例年11月中旬ごろから約2週間、高巌を覆うツタが紅葉で赤く染まり、市民の目を楽しませていたが、台風が過ぎ去った後の今年9月8日、ツタがなくなっているのが確認された。

吉田さんが2010年ごろに撮影した「高巌」のツタの紅葉(吉田さん提供)

 近くで酒店を営む吉田康之さん(62)も、むき出しになった岩肌を見てがく然とした。「毎年紅葉を楽しみにしていたし、多くの人に知ってもらいたいと思っていた」と肩を落とす。わずかに残ったツタを眺めながら「(前のように)広がるには何年もかかるだろうが、今はそれを楽しみにしたい」と話した。
 高巌は松浦鉄道(MR)高岩駅の近くで、紅葉と列車の“共演”は絶好の写真スポットだった。近くに住む60代女性は「写真を撮る人もいたのに、今年は秋の訪れを感じないね」とさびしそうに話した。

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