「松くい虫」被害で防災機能低下 住民ら不安の声

松くい虫により枯れてしまったマツ=小値賀町

 記者は、小値賀町職員らの案内で松くい虫の被害現場を巡ってみた。農業に携わる人たちからは防災機能の低下を心配する声が聞かれた。
 9月中旬、役場や商店街がある小値賀本島の笛吹地区から車を走らせること数分。東部の前方地区に入ると、道路脇に、部分的に葉が赤茶けたマツの木が目につくようになった。一見、紅葉しているようにも見えるが、いずれも被害木なのだという。
 さらに東に進んだ唐見崎地区の入り口付近では、葉が落ちてしまった道路脇のマツの間から海が見えた。肉用牛の繁殖農家、松山多作さん(68)は「小さな島なので、牧草を育てる畑が潮風にさらされてしまう」と松林が失われる影響を懸念。「今夏の台風で牛舎の屋根が飛んだ畜産農家もあった。町はとにかく被害木を除去して、倒木の二次被害を防いでほしい」と話した。
 笛吹地区から西側の浜津地区も訪ねてみた。露地物野菜を栽培する伊藤紀明さん(69)は、畑を囲む防風林に今のところ大きな被害はないとしながらも、「薬液注入での対策で効果はあるのか」と不安を口にしていた。
 町がマツ林の保全計画を策定する際に募ったパブリックコメントには、薬剤の空中散布による環境への影響を心配する意見もあった。案内してくれた町職員は「薬剤散布に反対する声は以前からある。住民の理解を求めながら進めてきたが、結果的にマツの枯死が進んでしまい申し訳ない」と話していた。


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