【日本S】先発投手はゲームを作ろうとするな― 天才・前田智徳氏が分析する巨人逆襲のポイント

巨人・原辰徳監督(左)とソフトバンク・工藤公康監督【写真:荒川祐史】

テレ朝解説者の前田智徳氏は巨人サンチェスをキーマンに指名「まずはロースコアに持っていかないと」

「SMBC 日本シリーズ2020」ソフトバンク・巨人の第3戦(午後6時15分からテレビ朝日系列で生中継)が24日、PayPayドームで行われる。広島一筋24年で通算2119安打を放った解説者の前田智徳氏は、巨人のキーマンに第3戦先発のエンジェル・サンチェス投手を挙げた。

昨年の日本シリーズから6連敗。厳しい戦いが続く原巨人が勝機を得るには――。前田氏は「初戦を菅野投手で落として『厳しいな』と選手は思ったんじゃないかと思います」と巨人ナインを思いやった上で、第3戦の必勝ポイントを示した。

「とにかく抑えないといけない。サンチェス投手が1イニング1イニングを……。いや初球から勝負球を投げるぐらいので気持ちでいかないと。5回まで投げようという考え方でいくと、今のソフトバンクでは(抑えるのは難しい)。ソフトバンクの流れなので。まずはロースコアに持っていかないと」

「例えば(ソフトバンク先発の)ムーア投手が乱調だったとしますよね。点をとってもすぐにリリーフ陣で流れを切られる可能性がある。向こうのブルペンはビハインドの投手もいいので。どちらにしてもロースコアに持っていって、巨人もリリーフ陣で切るしかないんですけど、まずはサンチェス投手ですね。やはり先発投手です」

ただ単に全力投球というわけではない。「全力でどの球種もしっかりとそういうつもりで投げる。リリーフを経験したことない投手は分からないかもしれませんが、初回からしっかりと。目一杯がむしゃらに投げるとコントロールが付かない」。この難しい、さじ加減。まさにサンチェスの経験、投手力が試される大一番となる。

野球解説者の前田智徳氏【写真:小谷真弥】

前田氏は91年日本シリーズを経験「勝てると思った時はプレッシャーを感じました」

孤高の天才打者として通算2119安打をかっ飛ばした。そんな前田氏が対戦して嫌な投手が、まさに初球から勝負球を投じる、1球入魂の投手だったという。

「打者の立場から打席に立った時に、やっぱりそういう投げられ方は嫌ですね。ゲームを作ろうとして投げる投手は(投球に)強弱をつけるというか、緩んだところがあるんですよ。でも、そうでない投手は投球動作に入った時からスキを与えてくれないというかね。そういう感じがあるので」

「サンチェス投手はストレートが速いですけど、ソフトバンク打線に対してファウルを取れるか。それが厳しいようであれば、初回から多めにチェンジアップ、カットボールを投げていくしかないと思うんです。それぐらいの気持ちで1アウト、2アウト、1イニングと切っていかないと」

前田氏自身は91年に日本シリーズを経験。相手は常勝・西武だった。第5戦を終えて3勝2敗で王手をかけたものの、敵地に舞台を移した第6戦から連敗してV逸。当時は高卒2年目だった前田氏は「僕は守備を買われていたので、鬼軍曹(大下ヘッド)から『塁に出たら走れ。打席ではバントしておけ』と言われていた」と振り返ったが、短期決戦の怖さを身を持って感じている。

「(王手をかけた時に)若いなりに『これはいけるんじゃないか』と。ふと我に返った時に硬くなった。プレッシャーが増したかなというのはありますね。これは先輩方も同じだったと思います。僕が『これはいけるんじゃないか』と思ったということは先輩方はもっと思っていた可能性があるので。僕より周りがよく見えているわけですから。王者に勝てると思った時はプレッシャーを感じましたよね。挑戦者の時は、戦いやすいですよ。あれだけ強いというのは分かっているので」

仮に、この心の“スキ”がソフトバンクにあれば、巨人は突かない手はない。だからこそ、まずは緊迫したゲーム展開に持ち込むことが巨人に不可欠だと言う。

「当時のカープの投手は良かった。なんとか打線を抑えて、点を取れなかったですけど、(西武相手でも)やっぱりいい勝負になるんですよね。なので、ジャイアンツ。菅野投手で落としたんですけど、先発、リリーフで抑えればいい勝負になりますよ。日本シリーズなので、熱い戦いをしてもらいたいですね」

前田氏は第3戦を解説する。球界OBとして、痺れる熱戦を期待している。(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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