ラスト2戦のポイント状況まとめ。角田裕毅はF1への資格を手にできるのか【FIA F2直前プレビュー】

 9月末に開催されたFIA F2第10戦ソチから約2ヵ月、2020年シーズンのFIA F2選手権ラスト2連戦がいよいよ始まる。注目はもちろん、角田裕毅。果たしてスーパーライセンス獲得条件であるランキング5位以上の成績を残すことができるのか。角田にとって重要な局面を迎えるこの2連戦を前に、現在のFIA F2のポイントランキング、ポイント配分システム、そしてスーパーライセンスを獲得するために残り何ポイントが必要なのか、状況を整理しておこう。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 まずは現在のF2のポイントランキングだ。

■2020 FIA F2 ポイントランキング(第10戦終了時点)

Pos Driver Points

1位 ミック・シューマッハー 191

2位 カラム・アイロット 169

3位 角田裕毅 147

4位 クリスチャン・ルンガー 145

5位 ロバート・シュワルツマン 140

6位 ニキータ・マゼピン 140

7位 ルイ・デレトラ 122

8位 周冠宇 119.5

9位 ルカ・ギオット 104

10位 ダン・ディクトゥム 80.5

 上記の表はランキングの上位10名までを掲載しているが、トップに立っているのはミック・シューマッハー(プレマレーシング)、2位はカラム・アイロット(UNIヴィルトゥオーシ)、そして3位に角田(カーリン)がつけている。首位のシューマッハーは2位のアイロットに22ポイント差をつけ、一歩リード。アイロットと角田の差も22ポイントと、この3名のギャップはやや開いている。

ミック・シューマッハー(プレマ・レーシング)

 気になるのは、角田から6位のニキータ・マゼピン(ハイテックGP)までの差が7ポイントとほぼないことだろう。ただし、F2はひとつの週末に2レース開催され、そのポイント配分も高いため、角田以下のメンバーだけでなく、ミック、アイロットも含め、1レースごとの結果で大きく変動する可能性は大いにある。

■2020 FIA F2ポイント配分

Pos Feature Race Sprint Race

1位 25 15

2位 18 12

3位 15 10

4位 12 8

5位 10 6

6位 8 4

7位 6 2

8位 4 1

9位 2 –

10位 1 –

※レース1ポールポジション:4ポイント
※レース1ファステスト:2ポイント(10位以内でフィニッシュした場合に加算)
※レース2ファステスト:2ポイント(10位以内でフィニッシュした場合に加算)

 F2のポイント配分システムは1大会2レース制となっており、最大で48ポイントの獲得が可能。シーズンはあと2戦残っているため、現在ランキング9位のルカ・ギオット(ハイテックGP)までがチャンピオン獲得権利を持つ。内容面からは今年後半、F2参戦2年目でドライバー、チームともに力を発揮しているシューマッハーがチャンピオン最有力候補であることに変わりはないだろう。

 それでも予選1発の速さに関して言えば角田やマゼピン、周冠宇(UNIヴィルトゥオーシ)らもシューマッハーに引けをとっておらず、予選で上位グリッドを獲得できれば戦いの様相は異なる。なかでも気になるのはシーズン後半にかけてハイテックがレースでのパフォーマンスを伸ばしていることだ。

ニキータ・マゼピン(ハイテックGP)

 ハイテックは今季がチームとしてF2初参戦のシーズンのため、序盤は苦戦する様子も見られていた。しかし、後半になるにつれ、マシンの戦闘力は高くなり、特にストレートでの伸びは他車を上回っている様子も見られる。そのため、ロングストレートが多いバーレーンのコースでは彼らが強さを発揮するかもしれない。

 一方カーリンは、1発の速さは抜群だがハイテックと比較するとややストレートでの伸びが足りないのか、ハイテックGPのマシンとストレート勝負になった際に、差が開くシーンも何度か見られた。ランキングを考慮すると、角田はマゼピンに前を走られたら厄介だ。

 さらに、クリスチャン・ルンガー(ARTグランプリ)、ロバート・シュワルツマン(プレマレーシング)も角田と同じF2ルーキーで、今年は随所で速さを見せてきた。

 バーレーンの最終2連戦はコースレイアウトが変わるため、仮に今週末の第11戦で好成績を残せたとしても、翌週の第12戦も同じ展開になるとは考えにくい。チャンピオン争い、そしてランキングの変動は毎戦、注視していく必要がある。

ホンダ期待の若手ドライバー、角田裕毅がFIA-F2第7戦ベルギーで今季2勝目。ランキングも3位に

︎スーパーライセンスポイント40点までは残り18点

 そして、もっとも気になるのが角田のスーパーライセンスの行方だ。ここであらためてスーパーライセンスの獲得条件を整理しておきたい。

 スーパーライセンスの発給にはさまざまな条件が設定されており、代表的なところでいえばFIA国際グレードAライセンスの所持、運転免許証の所持、18才以上であること、そしてスーパーライセンスポイントを40ポイント取得していること等が記されている。他にも細かな条件がいくつか定められているが、ここでは『スーパーライセンスポイント40点』に注目していく。

 これまでスーパーライセンスポイントの取得条件は『直近3年間で40ポイントを累積すること』と定められてきた。このポイントはFIAが定めた特定の選手権におけるランキング上位者に与えられるもので、その詳細はFIA国際モータースポーツ競技規則付則L項 第1章に記されている。

 しかし、今年10月に行われたワールド・モータースポーツ・カウンシル(WMSC)でこの条件が緩和された。その内容は『2020年を含む、直近4年間のうち、ベスト3年間の累積が40ポイント』というもの。つまり、2017年の戦績も対象になるということだ。

 ちなみにスーパーライセンスポイントはこのシステムが確立された2016年から、毎年少しずつ付与されるポイントや対象カテゴリーが変動してきたが、ポイントを計算する上では該当するシーズンに施行されたルールに基づいて行う必要がある。つまり2017年に獲得したスーパーライセンスポイントを計算するためには、2017年のレギュレーションを参考にしなければならない。

 それを踏まえた上で角田の2020年を含む直帰4年間の参戦歴と戦績、そして獲得しているスーパーライセンスポイントは以下の通りとなる。

■直近4年間の戦績とスーパーライセンスポイント

年 参戦カテゴリー ランキング SLポイント

2017年 FIA-F4 3位 7pt

2018年 FIA-F4 チャンピオン 12pt

2019年 FIA F3 9位 2pt

2020年 トヨタ・レーシングシリーズ・ニュージーランド 4位 3pt

FIA F2 – –

 まず、あらたに定められた『2020年を含む、直近4年間のうち、ベスト3年間の累積が40ポイント』というルールに当てはめると、2019年のFIA F3はランキング9位だったため、除外され、代わりに2017年のFIA-F4の戦績が対象に加えられる。

 そして、もうひとつここで注目しておきたいのが、FIAが2019年からスーパーライセンスポイントの付与条件のひとつに加えた内容だ。それは、1年の間にふたつの選手権ポイントを獲得することができるが、そのふたつの選手権のカレンダーは重なってはいけないというものである。

 角田は2020年1月〜2月にかけて全5大会15レースが開催されたトヨタ・レーシングシリーズ・ニュージーランドに参戦しているが、これは7月から始まったFIA F2とカレンダーが重なっていないため、このポイントも有効となるようだ。

 以上の条件に当てはめてみると角田の現在のスーパーライセンスポイントは22点となる。つまり40ポイントを獲得するためには残り18ポイントが必要ということだ。FIA F2は、シリーズランキング1〜3位に40ポイント、4位に30ポイント、5位に20ポイントが付与されるため、今シーズンはランキング5位以上の戦績を残すことが必要不可欠である。

 最後に、WMSCで緩和された条件のなかに、やむを得ない状況により40ポイントの獲得が困難であることを証明できる場合、それまでに30ポイントを獲得していればスーパーライセンスの申請が可能であるという文言も記された。しかし、アクシデントやトラブルもその対象とされるのか否かは記されておらず、詳細が不透明である以上、これを当てにはできない。

 角田に関してはFIA F2のシリーズランキング5位以上を自力で手にして、文句なくスーパーライセンスポイントを獲得することが重要だ。ただし、最初のポイントランキングを見ても分かるとおり、消して容易なことではない。シーズンの序盤もそうであったようにエンジントラブルも多発するカテゴリーである上、予選で集団に飲み込まれれば1コーナーでアクシデントに巻き込まれる可能性も大いに考えられる。

 さらにいえばレース1で仮に上位でフィニッシュできたとしても、レース2はリバースグリッドになるため、中盤からスタートすることになる。ポジションを上げてレース2でも好結果を残さなければあっという間に背後に構えているライバルたちに逆転されることもあるだろう。角田にとってラスト2戦はかなりシビアな戦いになることは間違いないが、その困難に打ち勝った暁には、明るい未来が待っているはずだ。

スーパーライセンスが取得できればアルファタウリF1のシートも近く角田。

© 株式会社三栄