角田裕毅、望外の6位入賞は「チームが昨日からサポートしてくれたおかげ」マルコ博士から励ましも/FIA-F2第11戦

 角田裕毅(カーリン)が、またも魅せてくれた。

 前日の予選でスピンを喫し、最後尾グリッドからスタートしたフィーチャーレース。角田は果敢なオーバーテイクを連発しつつ、無闇なプッシュはせずにタイヤを保たせ、ノーミスの走りで22番手から6位入賞を果たした。さらに最速タイムも叩き出し、選手権3位の座を守り抜いた。

「ここまでうまく行くとは思わなかった」という角田だが、予選での大失敗にも「そこまで落ち込まなかった」とのことだ。「やるしかない」という思いを胸に、望みうる最高の結果を手に入れた。

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──まずはレースを振り返ってください。

角田裕毅(以下、角田):レース前、プライムタイヤでスタートするか、オプションタイヤで行くか、迷っていました。10番手から21番手のドライバーの大部分がプライムだったら、オプションで行く。その逆だったら、プライムで。もし半々だったら、プライムにしようと決めてました。できるだけクリーンエアで走りたいという作戦だったのですが、ほぼ半々だったので、プライムで行きました。

 スタートはそこまで良くなかったのですが、1コーナーで何台か抜いて、その後のペースも悪くなかったですね。休むところでは休んで、落ち着いて走れたのがよかったです。チームのピットからの指示も的確で、そのおかげで6位まで上がることができました。

──今日のレースは今季これまでのなかでも、会心のレースだったのでは?

角田:う〜ん、レース1だけ見れば、結果は良かった。でもチームが昨日からサポートしてくれたおかげですし、落ち込んでる僕を励ましてもくれました。結果で恩返しできたら、という思いでしたね。なので会心の出来とか、あまりそういう感じはないです。レース自体のペースだけ見れば、今季のトップ3ぐらいには入るかもしれませんが。

2020年FIA-F2第11戦バーレーンGP 角田裕毅(カーリン)

──タイヤの保ちは、どうでしたか。19周目のピットインは、予定通りだったのですか?

角田:いえ、タイヤがどれくらい保つかまったく未知数でした。状況に対応して、エンジニアがピットインのタイミングを決めてくれました。毎レースそうなのですが、デグラデーションはこれぐらいだろうと予想しても、大体外れるんですね。そのうえ昨日のフリー走行では、ほとんどロングランができていなかった。最初の10周でどんな様子か判断して、その後の展開を決めていきました。

──19周目になっても、まだタイヤが限界という感じではなかった?

角田:かなり磨耗はしていました。僕も消耗してる感触はありました。エンジニアは「もう1周早くてもよかったかも」と、言っていました。

──予選後の気持ちの切り替えは、スムーズにいきましたか。

角田:朝起きた時、「今日は最後尾からスタートしなきゃいけないのか」という思いはありましたけど、ただ今までだったら落ち込んだまま、レース前まで引きずっていたと思うんです。

 今回はそこまで落ち込まず、スタートはどうしようとか、どういう位置取りで1コーナーを抜けようとか、そういうことをすでに昨日の段階で自分のなかで計画を立てていましたね。レースも落ち着いて臨めましたし。予選もスピンするまではペースが良かったので、その自信も助けになったと思います。

──昨日の時点では、今日のレースではレース2に向けて8位になれれば、ぐらいの思いだったのでしょうか?

角田:そうですね。

──ここまでうまく行くとは、思っていなかった?

角田:もちろん思っていなかったです。正直、8位も厳しいと思っていましたから。それが目標でしたけど、22番手から8位は決して簡単じゃない。やるしかないという思いでしたけど、結果的に状況に冷静に対応して、レースができました。

──ピットストップで16番手まで順位を落としましたが、そこからいける手応えはありましたか?

角田:ピットに入るまでに何台も抜いて順位を上げていたので、それが自信になっていましたね。なので16番手まで落ちても、とにかくタイヤを労って走ることに集中しました。

2020年FIA-F2第11戦バーレーンGP 角田裕毅(カーリン)

──後半のスティントは、わりと簡単にというか、落ち着いて1台ずつ抜いていった感じです。

角田:1回のオーバーテイクで仕留めたかったので、たとえば抜くのが厳しいセクター2ではあえて間隔を空けてクリーンエアを拾って、最終コーナーまでにどれぐらい詰めていくかと、そういうことを考えながら攻めていました。決して簡単ではなかったですけど、まあプライムよりは簡単だったかもしれません。

──外から見ると簡単でも、ドライバーとしては考えてやっていたということですね。

角田:まあ、そうですね。プッシュしないでいいところは抑えて、メリハリはつけられました。

──レース後、ヘルムート・マルコ博士(レッドブルのモータースポーツアドバイザー)からは何か言われましたか?

角田:さっきちょうど電話があったんですけど、「昨日あんなことがなかったら、今日は余裕で勝ってたな」と(苦笑)。でも「いい走りだったよ。明日は1位取れよ」とも言ってもらえました。

──ランキングを争ってる人たちが下位に行ったことにも、ホッとした?

角田:いや、まだ全然です、昨日のこともありますし。何が起きるか分からないので、ホッとはしてないです。

──最速タイムは、狙っていたのですか?

角田:結局ポイント獲れたんですか?

──最速のルカ・ギオット(ハイテックGP)が入賞圏外だったので、角田選手がポイント獲得です。

角田:そうでしたか。1周だけ、この周なら狙っても良さそうというところで、ペースを上げました。でもタイヤがきついのはわかってたので、1周だけでした。さっきも言ったように、メリハリをつけた走りができましたね。

──のべ台数でいうと20台近く抜いてると思うのですが、その都度走行ラインを外してプッシュすることにタイヤ的に不安はなかったのでしょうか? あるいは、そんなことは言ってられなかった?

角田:そうするしかないですからね。抜けるところで、抜いていきました。今回はプライムとオプションの差がそれほど大きくなかったので、最初のスティントをどれだけいいペースのまま伸ばせるかが、勝負の鍵だったと思います。

──明日のレースは、伸び伸び走れそうですか?

角田:う〜ん、今日よりはスタートで接触を気にすることは少なくてすみますけど、何が起きるかわかりませんし、気をつけて、最後までいいペースで走って、いい結果で終われたらなと思います。

2020年FIA-F2第11戦バーレーンGP 角田裕毅(カーリン)

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