アウディが2021年限りでのフォーミュラE撤退を発表。次のステージはEVでのダカール挑戦

 11月30日、アウディは2020/2021年シーズン限りでABBフォーミュラE世界選手権でのワークスプログラムを終了し、新たに電動カーを用いたダカールラリープログラムを2022年に開始すると発表した。

 アウディは同日、2017年からアウディモータースポーツの責任者を務めてきたディーター・ガスの退任と、アウディスポーツGmbHマネージングディレクターを務めるユリウス・シーバッハがガスの後任を兼任することになるとアナウンス。

 これに合わせて次世代のモータースポーツ活動に関する発表を行い、そのなかでフォーミュラEに代わって国際的なラリーイベントであるダカールラリーへ挑戦すること、LMDhプラットフォームを用いたスポーツカーレースのトップカテゴリー復帰に向けた準備を進めている旨を明らかにした。

 100年に一度の大改革期にある自動車業界において、欧州の指針に沿ってラインアップのEV化を進めているアウディ。かつてラリー界に“クワトロ旋風”を巻き起こしたブランドがダカールに持ち込むのは、やはりその電動化技術であり、電動ドライブトレインと高電圧バッテリー、高効率のTFSIエンジンとエネルギーコンバーターを組み合わせたプロトタイプマシンでの挑戦となる。

 ダカールで代替ドライブコンセプトを採用するアウディの狙いは、今後数年間の内に電動ドライブトレインとバッテリーの性能を恒久的に向上させること。一連のプロセスで得られた経験は将来の市販電動化モデルの開発に反映されていくという。

「モータースポーツへの多面的な取り組みは、アウディの戦略の不可欠な部分であり、今後も継続していく」と語るのは、アウディAG取締役会会長兼技術開発および生産ライン取締役を務めるマーカス・デュースマン。

「我々は今後も国際的なトップレベルのモータースポーツで、ブランドのスローガンである『Vorsprung durch Technik(技術による先進)』を発揮し続け、私たちのロードカーのために革新的な技術を開発していきたいと考えている」

「世界でもっとも過酷なラリーは、そのための完璧な舞台だ」

 その一方で2014年のシリーズ発足当初から参加してきたフォーミュラEでのワークスプログラムは2020/2021年シーズンをもって終了することに。

 欧州メーカーでは唯一すべてのシーズンに参戦してきたアウディは、2016/17年シーズンにルーカス・ディ・グラッシの手でドライバーズチャンピオンを、アプト・スポーツラインを支援する形からワークス参戦に移行した翌2017/18年シーズンにはチームタイトルを獲得するなど存在感を示してきたが、今後は現在エンビジョン・ヴァージン・レーシングに対して行っているような電動パワートレイン供給というかたちでのみシリーズに関わることになる。

 また、アウディのモータースポーツ活動において2番目に重要な“柱”となるカスタマーレーシングについては、前述のフォーミュラEと同様に継続されることが決定。引き続き包括的なモデルポートフォリオが提供されるとともに、世界中のカスタマーに対して集中的なサービスを行っていくという。
 
 そのプログラムのなかにはニュルブルクリンク24時間レースなどの主要耐久レースや、IGTCインターコンチネンタルGTチャレンジなど国際的なレースシリーズでアウディR8 LMSを用いるものも含まれるとされた。

ディーター・ガス(左)とユリウス・シーバッハ(右)

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