混乱必至のノンテンダーFA期限は日本時間3日の午前10時

メジャーリーグは日本時間12月3日の午前10時に「ノンテンダー・デッドライン」を迎える。これは簡潔に言うと、サービスタイム(メジャー登録日数)が6年未満の選手に対して各球団が来季の契約をオファーするかどうかを決断する締め切りである。特にサービスタイムが3年以上で年俸調停権を有する選手の場合、上昇する年俸と実力が見合わなくなるケースがあり、来季の契約をオファーされずに「ノンテンダーFA」となる可能性がある。新型コロナウイルスの影響を受ける今オフは、例年以上の混乱状態になることが予想されている。

年俸調停権を持たない選手はメジャー最低保証年俸に近い金額で契約することができるため、ノンテンダーFAとなることはほとんどない。また、年俸調停権を取得したばかりの選手がノンテンダーFAとなるケースも少ない。最も大きな影響を受けるのは、年俸調停期間(通常は3年間)の2年目または3年目を迎えている中堅選手だ。

昨オフは56人の選手がノンテンダーFAとなり、そのなかには今季ジャイアンツで好成績を残してクオリファイング・オファーを受諾したケビン・ゴーズマン(レッズからノンテンダーFA)も含まれていた。タイワン・ウォーカー、セザー・ヘルナンデス、ブレイク・トライネン、マイケル・フランコ、ケビン・ピラーらもノンテンダーFAとなり、移籍を強いられている。

今オフはコロナ禍の減収の影響で年俸総額の削減を目指しているチームが多く、移籍市場が冷え込むことが予想されている。そのため、年俸調停権を持つ選手たちは、たとえ希望額を下回る金額であったとしても、来季の契約を手に入れるために「ノンテンダー・デッドライン」の前に球団とのあいだで契約合意に達するのではないかとの見方が強まっている。球団には来季の年俸額を早めに確定できるというメリットもある。

そもそも、今オフの年俸調停は何を基準に行われるのか不透明だ。今季の成績を162試合の成績に換算するのか、今季の成績をそのまま60試合分の成績として扱うのか、全く見通しが立っていない。そのため、年俸調停権を有する選手を年俸額が確定しないまま抱えておくのはリスクとなってしまう。よって、各球団は年俸調停に持ち込まれるケースをできるだけ減らそうとするだろう。また、各球団の減収の影響により、例年であれば来季の契約をオファーされたであろう選手がノンテンダーFAとなるケースが多発することも予想される。

頭を悩ませているのは球団だけではなく、年俸調停権を有する選手たちも難しい判断を強いられている。なぜなら、今オフは移籍市場の動きが例年以上に遅く、自身がノンテンダーFAとなって市場に出た場合に得られるであろう契約の規模を予測するのが困難だからだ。ノンテンダーFAとなったあと、契約がなかなか決まらないというケースも考えられるだけに、球団から提示された年俸額をそのまま受け入れる選手も多く現れるに違いない。

ノンテンダーFA候補にはカイル・シュワーバー(カブス)、エディ・ロサリオ(ツインズ)、トミー・ファム(パドレス)といった各球団の主力選手の名前も挙がっている。誰が球団からの提示を受け入れ、誰がノンテンダーFAとなり、誰が年俸調停に突入するのか。各球団と各選手の決断に注目したい。

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