時短勤務NGで応募断念7割、なぜ求人はフルタイムばかりなのか

テクノロジーの進化に伴い、仕事探しはとてもしやすくなりました。スマートフォンがあれば、いつでもどこでも空いた時間に求人検索することができます。

もっと高い給与が得たい、新しいキャリアを積みたい、かつて従事した職種に戻りたい…仕事探しの動機は人それぞれです。

しかし、希望条件を吟味していざ検索してみると、なかなか思うような求人に出会えません。そこで、少しずつ条件を外していくと希望する仕事に近いものに出会えることがあります。


短時間勤務不可で応募断念7割

職種、仕事内容、勤務地、給与などあらゆる希望に合致する求人を見つけ、これだ!と思ったものの、勤務時間を確認してみると9:00~18:00や残業あり、と書かれている…。

もし長期安定的に正社員と呼ばれる働き方を選びたいと思っても、その大半はフルタイム勤務が前提です。その条件で働ける人には何の問題もありませんが、仕事と家庭を両立させたいと考える“働く主婦”層など、時間の融通を利かせたい人にとっては、完全在宅勤務でも認められない限り、応募不可の求人となってしまいます。

しゅふJOB総研で、働く主婦層に「就職活動の際、求人条件にスキルも経験も合致するのに短時間勤務が不可だったために応募を断念した経験はありますか」とアンケートをとったところ、以下の結果となりました。短時間勤務とは、1日5時間など、フルタイムと比較して勤務時間が短いことを指します。(n=766)

「ある」と回答した人が、実に7割を超えています。「求人条件にスキルも経験も合致する」人が、短時間勤務ができないという理由だけで応募自体を断念しています。

会社で決められた勤務時間にみんなが合わせるのは当然、という考え方が一般的なのかもしれません。しかし、もし応募を断念した人が、普通なら8時間かかる仕事を4時間でこなせてしまうスキルの持ち主だったらどうでしょう?生産性2倍の優秀人材からの応募を逃してしまっていることになります。

アンケートのフリーコメントには、「結局フルタイムでないと仕事が見つからないため無理をして仕事につくか働くのを諦めるかの選択になりがち」「経験やスキル等が合致していても『通勤に時間が掛かる』応募は泣く泣く見送っている」「残業前提の採用には疑問を感じる」などの声が寄せられていました。

短日数勤務不可で応募断念も7割

短時間勤務と似て非なる条件として、短日数勤務があります。短日数とは、週3日など、フルタイムと比較して勤務日数が短いことを指します。先ほどと同様に、働く主婦層に「就職活動の際、求人条件にスキルも経験も合致するのに短日数勤務が不可だったために応募を断念した経験はありますか」と尋ねたところ、以下の通りでした。(n=766)

短時間勤務の時と同じく、「ある」と回答した人がおよそ7割という結果です。そこで、さらに踏み込んだ質問を投げかけてみました。「就職活動の際、フルタイムで募集されている求人が短時間や短日数でも応募できるようになれば、あなたの活躍の幅は広がると思いますか」という問いへの回答は以下の通りです。(n=766)

「大いに広がる」が60.1%、「少し広がる」が24.5%、合わせて84.6%の人が、活躍の可能性が広がると回答しています。この数値は、短時間や短日数という条件が満たされないことによって、それだけ多くの人が悔しい思いをしてきたことの裏返しでもあると思います。

なぜ企業はフルタイム勤務を求めるのか?

企業が社員にフルタイム勤務を求める大きな理由の一つは、融通性にあると考えられます。職場では日々様々なことが起きます。何か想定外のことやプラスαの仕事に対処したい時、そこに指示が出せる社員がいてくれると安心です。

短時間勤務だと、いざという時に帰ってしまっているということが起きかねません。短日数勤務の場合は、そもそも休んでしまっていることもあり得ます。その結果、“いざという時”にそこにいるフルタイム社員に、業務のしわ寄せが行くことになります。そのようなことが続くと、社員の間に軋轢が生まれてしまいます。

しかし、逆に考えると、想定外のことが極力起こらないように業務調整することができれば、短時間社員でも短日数社員でも戦力化することは可能だと言えます。

それは無理だという考え方が一般的かもしれませんが、短時間や短日数で働く社員がスムーズに戦力化できている職場は実際に存在しています。それらの職場では、一般に無理だと思われていることができているということです。根本的な問題は、組織内の業務設計にあります。

コロナ禍で緊急事態宣言が出された時、一気に“にわか在宅勤務”が広がりました。その際かなり無理な状況が生じてしまったケースもありますが、無理やり在宅勤務をしてみたところ、意外と上手く業務が回せたという職場も少なくありません。

昨日今日という単位で見るとわかりづらいですが、5年、10年というスパンで見ると、確実に柔軟な働き方が実現できる職場の数は増えてきています。短時間や短日数で働ける機会がさらに増えれば、活躍できる働き手は増加し、企業の戦力は潤い、経済発展の原動力となり得るはずです。日本社会は、より豊かになるためのポテンシャルをまだまだ秘めていると言えるのではないでしょうか。

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