90歳なお現役、通学路ボランティア 横浜で笑顔の13年

13年にわたり、児童の登校を見守る活動を続ける長森正義さん=横浜市旭区の市立中沢小近く

 横浜市旭区で90歳のボランティアが、登校する児童の見守り活動を13年にわたり続けている。孫の安全を守り、成長を感じたいとの思いで始めたが、元気に通学する子どもたちとの交流が生きがいとなり、孫の卒業後も笑顔で通学路に立ち続けている。

 「おはようございまーす」「車に気をつけてね」-。児童の登校がピークを迎える午前8時すぎ、市立中沢小学校(同区中沢3丁目)前の交差点になじみの声が響く。11月に卒寿を迎えた近くに住む長森正義さんだ。グリーンのウインドブレーカーに、誘導用の黄色の旗を持つ姿がトレードマーク。穏やかな笑みをたたえ、一日のスタートを切る子どもたちを優しく包む。

 「1年生の頃から毎朝あいさつを交わしている」。6年生の加藤真悠さん(12)にとって長森さんは日常に溶け込んだ存在だ。6年生の柴田眞子さん(12)も「授業で13年も私たちの安全のために活動を続けていることを知った。大変なことだと思う」。継続の大切さを身をもって児童に伝える役割も果たしている。

◆きっかけは三つ子の孫
 同区で暮らすようになって半世紀近い長森さん。製薬会社に勤めていたサラリーマン時代は「地域とのつながりは薄かった」と振り返る。

 そんな意識を変えたのは三つ子の孫たちだった。目の中に入れても痛くない存在。同小の3年生に成長していた2007年1月、「登校する姿を見守りたい」と居ても立ってもいられなくなり、通学路で遠慮がちに様子をうかがった。すると想像していなかった体験をした。「通学する児童や保護者が私に次々に、あいさつや『お疲れさまです』などのねぎらいの言葉を掛けてくれたんです」。すっかり活動のとりこになり、翌日からは学区内でつくる見守りボランティアの一員として、精力的に活動を始めた。孫が卒業してもその意欲は変わらず今日に至っている。

◆元気の秘訣
 今も街を歩いていると、卒業生を含め子どもや保護者から声が掛かる。そうしたつながりは何物にも代えがたい喜びという。「子どもたちの人生の一部に関わることができているということですから。光栄なことです」。照れくさそうに相好を崩す。

 今年は新型コロナウイルスの感染拡大で見守り活動も新たな対応を迫られた。分散登校で1日2回通学路に立ったことも。スクールゾーンの車両通行禁止時間帯以外の登校もあり、安全確保に例年以上に神経をとがらせた。

 学区内の見守りボランティアは現在27人。最年長の長森さんは「規則正しい生活とあいさつが元気の秘訣(ひけつ)。体力が続く限り続けたい」と意気込む一方、ボランティアの高齢化や、担い手の確保が難しい現状を憂えてもいる。「子どもたちの安全を守るため、地域でバトンをつないでいかないと。一人でも多くの人が短時間でも加わってほしい」と願う。

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