性被害後の対応で「苦痛」 長崎大司教区を提訴へ 県内の女性信徒

 カトリック長崎大司教区に所属する男性神父から性被害を受け、その後の大司教区の対応により精神的苦痛を受けたとして、県内の女性信徒が大司教区に550万円の損害賠償を求める訴訟を長崎地裁に起こすことが12日、分かった。
 関係者によると、女性は2018年5月、県内の教会で男性神父から体を無理やり触られるなどのわいせつ行為を受け、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症した。大司教区は昨年8月、わいせつ行為の結果、女性が受けた損害について賠償金を支払うことで女性と示談している。
 県警は今年2月、男性神父を強制わいせつの疑いで書類送検。長崎地検は4月、不起訴とした。
 その後開いた大司教区内の会議の議事録に、高見三明大司教の女性についての発言として「『被害者』と言えば加害が成立したとの誤解を招くので、『被害を受けたと思っている人』など、別の表現が望ましい」と記載された。議事録は神父らに配布しており、不特定多数の信徒が目にする。
 女性は、大司教区と被害があった前提で示談したにもかかわらず、被害は女性の思い込みで実際には存在しなかったかのような表現をされ、人格を否定され名誉を損なわれたと感じるなどの苦痛を受けたとしている。また、周囲から誤解されてしまうことを不安に思い、不眠などPTSDの症状が悪化したという。
 不起訴を受け、大司教区は「これ以上の調査は難しく、事実確認は難しい。(女性へは)今後も誠意をもって対応していく」とのコメントを発表している。


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