ダカールラリー:マティアス・エクストロームがレイドデビュー。X-raidと新クラスへ

 DTMドイツ・ツーリングカー選手権で2度のタイトルを獲得し、2016年のWorldRX世界ラリークロス選手権王者にも輝くマティアス・エクストロームが、ダカールラリーの2021年大会に参戦し、ラリーレイドデビューを飾ることが決定。X-raidがヤマハとの協業で新造するプロトタイプバギーで、SSVシリーズのT4クラスへのエントリーがアナウンスされた。

 2021年も中東サウジアラビアを舞台に開催されるラリーレイド最大のイベントは、1月3日から15日にかけて全12ステージで争われる。2020年大会をカルロス・サインツ、MINI JCWバギーとともに大会を制したX-raidは、来季に向けエクストロームの加入を発表し、このマルチタレントなドライバーと2018年にWRC世界ラリー選手権のJWRCクラスで王座を獲得したエミール・ベリクヴィストに、新たなSSVプロトタイプを託す。

 この新型モデルは、X-raidがヤマハと協力してYXZ1000Rプロトタイプ・サイド・バイ・サイド(SSV)をベースに開発するもので、X-raidとしても4輪のT1クラス以外へのチャレンジはこれが初となる。

 そしてダカールラリー初参戦のエクストロームも、この経験を2021年3月からクプラ電動モビリティ・アンバサダーとして参戦する電動オフロード選手権『Extreme E(エクストリームE)』に向けた「良い準備期間として活用したい」と意気込んだ。

「僕らドライバーにとって、ダカールに参戦して砂漠をドライブすることは、つねに夢であり続けているんだ」と専門ウェブサイト『dirtfish.com』に語ったエクストローム。

「僕はこれまでのキャリアを通じて多くのカテゴリーに参戦したきた。その経験をもとに、この夢を実現するに向けてスヴェン(・クワント/X-raid代表)に相談する以上に良い方法はないと思った」と続けるエクストローム。

「そしてようやくSxS(サイド・バイ・サイド/SSV)でレースをする資金を集めることができ、このX-raidの新規プロジェクトが僕らに最適な機会を与えてくれる状況が整ったんだ」

2021年型MINI JCW Buggyの投入と、カルロス・サインツ起用で連覇を狙うと表明済みのX-raidチーム
そのエクストロームは、ヤマハ製YXZ1000Rプロトタイプ・サイド・バイ・サイド(SSV)をベースとしたマシンをドライブする

■「今こそ、ヤマハとともにこの市場で活躍する絶好のタイミング」

「僕らはダカール2021を本当に楽しみにしている。そしてこの挑戦は、サウジアラビアで開幕するExtreme Eの初戦に向けた完璧な準備にもなる。結局のところ、僕自身もこれまで砂漠や砂丘で本格的な競技に挑み、レースカーをドライブした経験がないわけだからね」とエクストローム。

 そのX-raidによれば、この新型プロトタイプはヤマハ・レーシング・ラリー・サポートチームの開発したYXZ1000Rをベースに、競合のSSV車両に対してすぐにでも戦える「レース対応の選択肢」として、来月のダカールに向け多岐にわたる開発が進められるという。

 そのヤマハ・モーター・ヨーロッパ製のマシンはすでにシェイクダウンを経て、現在開催中のFIAワールドカップ・クロスカントリー・ラリーの『バハ・ヘイル2』に参戦し、アップデートの確認が行われている。

 この新たなSSVはベースモデルより拡幅されワイドになり、ホイールベースの延長と合わせて重心が低下。駆動系と心臓部の998cc直列3気筒エンジンは「ほとんど変更されていない」が、チームによればFIA規則を満たすため、新たな鋼管パイプフレーム・シャシーに更新されているという。

 チーム代表のスヴェン・クワントは、X-raidとしてSSVクラスに初挑戦するという新たな冒険は「正しい方向への最初のステップになる」と語った。

「このプロジェクトはX-raidにとって非常に重要なステップだ。会社の歴史上初めて、4輪カテゴリー(T1)以外の車両を開発している点でもね」と、ミツビシ時代を経てBMWやMINIとのジョイントで長年ダカールを戦ってきたクワント。

「我々は長い間このSxS市場を注視してきたが、私自身もこのクラスの規則とその策定に深く関わってきた。今こそ、ヤマハとともにこの市場で活躍する絶好のタイミングだ」

「このクラスは、プロだけでなく初心者や経験豊富なダカール・ドライバーの双方にとって、将来のクロスカントリーラリー界にとって重要な役割を果たすと信じている。そして、この新しくて非常にエキサイティングなプロジェクトに、マティアスが参加してくれることを心からうれしく思うよ」

『ABT CUPRA XE』のエントリー名でExtreme E参戦を表明したエクストローム。ブランドの電動大使として”e-CUPRA ABT XE1″のステアリングを握る
X-raidは、2022年に向け電動車両でのダカール参戦を発表したアウディとのジョイントも計画。エクストローム起用はその布石とも言える

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