五穀豊穣 矢に願い込め 吉井のシシウチ行事 国選択無形民俗文化財

五穀豊穣を願うシシウチ行事で、イノシシに見立てたシトギ(右下)に矢を放つ参加者=佐世保市吉井町乙石尾

 長崎県佐世保市吉井町に伝わる国選択無形民俗文化財「吉井のシシウチ行事」が13日、同町乙石尾地区であり、地元住民が米粉を水で練って作った「シトギ」をイノシシの形に整え、弓矢で射当てて五穀豊穣(ほうじょう)を祈願した。
 市教委などによると、イノシシなどが農作物を荒らさないように願う狩猟儀礼で、約300年前に始まったとされる。地元では「猪神祭り」と呼ばれ、毎年この日に執り行っている。
 住民ら約15人は、山と人里の境にある山の神のほこらに集合。シトギに木の実や枝で目や牙を付けてイノシシの形に整え、ほこらの前に供えた。
 神職が祝詞を奏上した後、参加者はシトギに向かって竹の矢を放ち、イノシシを射止める神事をした。その後、ちぎって丸めたシトギを網の上で焼いて食べ、豊作を祈願した。
 地区の班長として行事の準備をした山口照子さん(79)は「新型コロナで大変な日々が続いているけれど、みんなで集まることができてよかった。地域に幸せを招いてほしい」と笑顔で話した。
 吉井町では乙石尾地区のほかに、橋口地区が12月11日、橋川内地区が同15日に続けている。

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