<いまを生きる 長崎コロナ禍>子どもたちを支えたい 佐世保「ことばの教室」 コロナ感染予防と訓練の両立模索

 発話に関するさまざまな課題を抱える子どもたちが通う「ことばの教室」。至近距離で発声する機会が多く、新型コロナウイルスの感染リスクを抱える。どんな状況でも子どもたちを支えたい-。各教室は、新型コロナの感染予防と指導の両立を日々模索している。
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 「は、ち、ま、き」「ち、きゅ、う」…。
 11月中旬の午後。長崎県佐世保市保立町の市立清水小学校内の「きこえとことばの教室」。松本春乃さん(8)=春日小3年=は「ち」が入った単語を伸び伸びと読み上げた。舌のくせが強く、発音に不明瞭な部分がある。「違いが分かったよ。良くなってる」。フェースガードを着用した川原裕子教諭がついたて越しに励ました。
 ことばの教室は通級指導教室の一つで、同市内の4小学校にある。構音障害(発音の誤り)や吃音(きつおん)、言葉の発達の遅れなどがある子どもたちが、それぞれ在籍する学校から週に1回程度通う。清水小では16日現在、小学1~5年の77人(うち「きこえの教室」が8人)を一対一で指導している。
 「やってあげたくてもできないことがあり、もどかしかった」。教室の代表を務める岩下理栄教諭は、新型コロナ感染拡大以降の日々をこう振り返る。
 一斉休校後の5月中旬に教室は再開。ことばの教室に特化した感染対策の指針などはないが、発音の練習をする子どもと教員が至近距離で接する機会が多い。指導中に小まめにマスクを着けたり、子どもとコミュニケーションを取るためのおもちゃ使用を控えたり…。市内の教室同士で相談したりしながら、手探りで対策を講じている。
 感染予防のため、指導内容に支障も出ている。口の端に付けたお菓子を舌で取る訓練は、舌の動かし方を学ぶ上で大切だが、唾液が付くのを避けるためしばらく中止した。今は子ども自身が顔や口に菓子を置くようにして再開したが、上手に付けられずに苦労する児童もいるという。
 できなかった発音をできたとき、子どもと教員が一緒に飛び上がって喜ぶ。それを見て周囲も励まされる。感染拡大の「第3波」はそんな教室の日々の営みにも影を落とす。川原教諭は「ここは子どもに話すことを大好きでいてもらい、学校で明るく元気に過ごすための場所。できることを精いっぱいしたい」と前を向く。
 授業が終わった後、川原教諭の側で春乃さんは「家でも練習をするけれど、教室に来て、先生と会えるのは楽しい」とはにかんだ。

ついたて越しに春乃さん(左)の発音を指導する川原教諭=佐世保市立清水小

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