21歳で現役引退から駆け抜けた第二の人生 元ロッテ右腕の大学で広がった視野

元ロッテの島孝明さん【写真:本人提供】

連載『島孝明のセカンドキャリア―Brand New Days―』第10回

新型コロナウイルスの蔓延により、入学式の中止やオンライン授業への移行など、イレギュラーな形で始まった大学生活も、あと少しで1年が経とうとしています。苦労することもありましたが、経験してきた全てが新鮮で、それらは自身の成長に大きく貢献してきたと思います。今回は、これまでを通して考えたことや感じたこと、将来のビジョンなどについて書いていきたいと思います。

現在、私が所属している学部は健康体育学科で、中高保健体育の教職課程も履修しています。ですが、大学に進学する際、一番の目的としていたことは英語の習得で、学部で学んでいることはそこまで優先順位の高いものではありませんでした。専門的な学問を学んでいくうちに、他人に分かりやすく教えるためにはどうしたらよいかといった、指導者の観点から考えていくことが増え、その魅力や面白さに気づくようになりました。

以前、コラムでも記したバイオメカニクスを例に挙げてみると、投球動作の中で「ボールを放す瞬間だけに力を入れると、良いボールが投げられる」といった類の指導を聞いたことがある人は多いかと思います。実際こうした意識づけをすることで、余計な力を入れることなく投げることができ、私もごく普通に受け入れてきました。

しかし、この指導について力学的に考えてみると、ボールを離す瞬間は、もうすでに力が出し切られた状態であり、ボールに力は加えられていないことが分かっています。実際は、腕が外旋位の状態から伸び切るまでの間、つまり腕がトップの位置からボールが放たれる直前までが、ボールに対して一番力が加えられている場面になります。

サッカー部を中心にメンタルサポートを行うチームを結成し、そのメンバーに

投げる瞬間だけにフォーカスを当てる指導は、テークバックの段階で力が入り過ぎている場合などに指摘されることが多いですが、投げるという動作は非常に複雑な動きの連鎖によって成り立っており、動作中でも意識しやすくシンプルであることが求められるため、こうした表現がされているのだと思います。

このような違いを知っておくことは、人によって異なる多彩な感覚を理解する上で役に立つとともに、目的とする動作を行うためには、どういった伝え方をしていくべきかなど、指導する側の面白さに魅力を感じるようになりました。原理原則に基づいて、そこから言語化へと発展させることは、自身の指導の幅を増やすと同時に、選手へのより的確なアプローチにつながると考えています。

他にも、心理学を専門としている先生が、小学校~大学までのサッカー部を中心にメンタルサポートを行うチームを結成しており、私もそこのスタッフとして参加しています。そこでは、選手の心理面に関するデータの収集や分析、及びそのフィードバックを行うことや、メンタルトレーニングに関する知識を増やすための勉強をするなどの活動をしています。

これまで野球にしか携わってきていないので、こうして他競技との関わりを持つ機会を得られたことは、これまでよりも広い視野を持つことが出来るきっかけとなるのではないかと考えています。選手との対話を通して、競技特有の課題の発見、またその解決方法を模索する過程は、とても勉強になります。

こうした学びや活動を通して、特定の分野を大学院等でさらに深く学んでいくことも、今後の選択肢の一つとして成り得ると思うようになりました。一方で、語学に関する道もまだ可能性として残っていますので、それと並行して今後も大学生活を送っていきたいと思っています。

現在、新型コロナウイルスによって様々なことが制限されていますが、状況が落ち着き次第、留学へ行くことも検討していますので、そこでまた新たな可能性が見えてくることも考えられます。引き続き色々な分野にアンテナを張りながら、自分にとって最適な道を模索していきたいと思います。(島孝明/Takaaki Shima)

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