インフレ対策に不動産投資信託や金、株は有効?「通貨危機への対策を教えて」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、35歳、会社員の男性。インフレなどの通貨危機への対策には何が有効か知りたいとのこと。どのような方法があるのでしょうか? FPの伊藤亮太氏がお答えします。

ドルや日本円の通貨危機(急激なインフレも含む)に対する対策が知りたいと考えております。

コロナ禍の現在、対策として、仮想通貨や、金、不動産などのコモディティ商品の投資割合を増やしています。円やドルの通貨不安や急激なインフレ下において、リートなどの不動産投資信託は有効でしょうか? また株もインフレに強いと判断してよいでしょうか? 仮想通貨、金、住居用不動産以外にインフレなどの財政危機や通貨危機に備えて資産配分先として考慮すべきものがあれば教えてください。

資産配分以外にも一般人でも考えられる対策があればご教示いただけますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。老後は現在の年金受給が続く場合は3,000〜4,000万円は必要と考えております。

【相談者プロフィール】

・男性、35歳、会社員、既婚

・同居家族について:本人と妻(37歳)の二人暮らし。私:会社員(SE)、月収:29万円(IDeco差し引いた税引き後)・年収650万円程度、妻:会社員(非公表)・年収500万円程度、月収不明。今後子供が生まれた場合は時短勤務により年収380万円程度になることを想定しています。親の介護等や家族の病気はありません。

・住居の形態:持ち家(マンション・集合住宅)

・毎月の世帯の手取り金額:50万円(iDeCoや企業型DC除く)

・年間の世帯の手取りボーナス額:280万円

・毎月の世帯の支出の目安:50万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:12万8,000円

・食費:12万円

・水道光熱費:1万6,000円

・教育費:2万円

・保険料:1万7,000円

・通信費:5,000円

・車両費:2マン円(カーシェア、駐輪場維持費含む)

・お小遣い:毎年210万円、貯蓄と投資し残りを自由に使えるとしています。

・その他:サブスクリプション1万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:0

・ボーナスからの年間貯蓄額:210万円

・現在の貯蓄総額:800万円(投資額含む)

・現在の投資総額:250万円

・現在の負債総額:3,300万円


伊藤:ファイナンシャルプランナーの伊藤亮太です。回答いたします。

既にご相談者がお考えの通り、インフレ対策としては現物投資が有効となります。昔から言われるインフレ対応策としては、金、不動産は有効といえましょう。ただし、金に関しては利息を生まず、インフレ機能としては強いものの、世界が平常時に向かえば金価格は安定し大きな収益を生むことはできないかもしれません。

不動産投資の特徴は?

不動産に関しては、単に不動産であれば何でもよいわけではなく、立地も重視すべきです。今後の日本の人口減少を加味するのであれば、居住地域として人気のあるエリアにまとを絞り投資を行うことが無難です。

さて、ご相談者の方がお話しされているように、不動産投資の中にはリートなどの不動産投資信託があります。これもインフレ時には不動産価格の上昇や家賃上昇が期待できるため、一つのインフレ対策としては有効となり得ます。ただし、株式のように市場で売買されることから、急激なインフレが生じてパニックとなった場合にはいったん換金売りも出て価格が下落する恐れもありますし、すぐに家賃が上昇するわけではないためその時の市場の反応がどう出るかによります。

中長期的でどっしり構え、じわじわとくるインフレ対策であればよいものの、急激なインフレ時には想定外のことも起こりえることは心しておくべきです。もしお買いになるのであれば、都心の物件に投資するリートであったり、物流施設へ投資するリートなどは今後も他の側面から期待できるため、インフレ対応かつ伸びしろを期待してお買いになるにはよいと思います。

外貨はどうか

外貨という視点も有効となるかもしれません。仮に日本のみで急激なインフレが生じるのであれば、円安が発生すると想定できます。これはあくまでも物価という視点から捉えた為替の動きとなるものの、他国に比べて大きくインフレが生じるのであれば、基軸通貨の米ドルを含め、ユーロ、豪ドルなどで保有することも検討してよいと思います。なお、米ドルに関してもおっしゃる通りインフレが生じる可能性はあるものの、今のところ基軸通貨としてゆるぎない地位を得ているため、米ドルも投資候補でよいと思います。

資源や株への投資も有効

インフレ対応としては資源も有効です。とはいえ、資源そのものを買うのはなかなか勇気がいりますし、貴金属であっても保管場所に困ることでしょう。そこで、間接的にですが、資源国の通貨や資源を取り扱う商社の株式などを保有する方法が考えられます。ウォーレンバフェットが投資する日本の商社も悪くありません。オーストラリアドルなど資源国通貨への投資や資源国の国債保有なども検討できます。

また、株式投資もインフレヘッジとして機能します。ただし、株式であれば何でもよいわけではないため、商社をはじめ、今後期待できる銘柄に絞りましょう。日経平均株価やTOPIXへ投資する投資信託などでも構いませんが、個別の株式であれば貴金属関連の会社、不動産会社などがよいと思います。

インフレに有効なのは農業!?

最後に、資産配分以外にも一般人でも考えられる対策として、真っ先に挙げられるのは農業です。自家菜園です。インフレで最も困るのは食料価格でしょう。日に日に値段が上がっていくといった状況は昨今の日本では見る機会がありませんが、もしそうなったときに備えたいのであれば、自分で畑を持つことが最も有効です。最後は自分のことは自分でするしかありませんので。

極端な話を書きましたが、それが難しい場合にはオーナー制度などを活用して農家さんからおすそ分けしてもらうこともできますので、楽しみ半分、備え半分で活用されてみてはいかがでしょうか? すぐにこうした危機状況はやってこないものの、突然あるかもしれません。あくまで備えとして考え、悲観的にならず毎日楽しく日常生活を有意義にお過ごしください。

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