WEC:2019/20年王者アストンマーティンがワークス参戦終了を発表。カスタマー支援に焦点

 12月23日、アストンマーティンはル・マン24時間レースを含むWEC世界耐久選手権におけるプログラムの変更を発表。2012年から9年間にわたって行われてきたLM-GTEクラスでのワークス活動にピリオドを打ち、今後はカスタマーレーシングに焦点を移すとアナウンスした。

 2020年、新型コロナウイルスの影響により無観客で行われたル・マン24時間レースで、3年ぶりとなるGTEプロクラス優勝を果たしたアストンマーティン・レーシング。

 2018年にデビューした『アストンマーティン・バンテージAMR』を走らせるイギリスのチームは、特別なシーズンとなった2019/20年の“シーズン8”でマニュファクチャラーズタイトルを獲得する同時に、今年11月に行われたWEC第8戦バーレーンにおいて95号車をドライブするマルコ・ソーレンセンとニッキー・ティームがドライバーズタイトルを手にし、両選手権制覇という大成功を収めている。

 そんなアストンマーティン・レーシングは現行WECの初年度となった2012年、シリーズ最高峰のLMP1からLM-GTEクラスに戦いの場を移した。以後、市販ロードカーのV8バンテージをベースに開発したバンテージGTEをWECに投入し、プロとアマの両クラスでシリーズチャンピオンならびにル・マン優勝を達成。

 2018年には市販車のフルモデルチェンジに合わせ、V8ターボエンジンを搭載した新型バンテージAMRをデビューさせ、ポルシェやフェラーリなどのライバルたちと激戦を繰り広げてきた。
 
 9年間、延べ7シーズンでの通算勝利数はプロ、アマクラス合計で47回に上り、103回の表彰台獲得と、9つのクラスチャンピオン、そして都合4度のル・マン24時間優勝を誇る。

 しかし、そんな輝かしい活躍にピリオドが打たれることとなった。周知のとおり、イギリスのラグジュアリーカーブランドであるアストンマーティンは、2021年からF1に復帰する準備を進めている。この計画は前回参戦していた1960年以来初めてのことだ。

 今回の発表によれば、アストンマーティンは今後カスタマーレーシング・プログラムにフォーカスしていくといい、2019年に登場したアストンマーティン・バンテージGT3を走らせるチームを支援するかたちでこれが遂行されるという。
 
 主なターゲットとなるのは、SROが主催するインターコンチネンタルGTチャレンジやGTワールドチャレンジ各シリーズをはじめ、北米のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権、日本のスーパーGTなど、注目を集める重要なシリーズに参戦するパートナーチームが挑む耐久イベントだ。また、この中にはWECも含まれるという。

ランデブーでチェッカーを受けるアストンマーティン・バンテージGTE コルベットとの死闘を制した2017年のル・マン24時間レース

■プロドライブ社によるバンテージの製造、販売は継続

「2020年は国際モータースポーツにおけるバンテージにとって、前例のない成功を収めた年となった」と語るのは、アストンマーティン・レーシングのデイビッド・キング社長だ。

「GTEからGT3、エントリーレベルのGT4まで、すべてのレベルでチャンピオンシップの大きな成功を収め、世界選手権、国際シリーズ、国内シリーズで都合26タイトルを獲得した」

「しかし、達成すべきことはまだまだあり、バンテージにはこれからも多くのことがもたらされるだろう。そのため、もっとも重要な成功を追求するために、今こそファクトリーサポートのウエイトをパートナーにシフトするときが来たという結論に至った」

 アストンマーティン・ラゴンダ社長兼CEOを務めるトビアス・ムアースは次のように語った。
 
「バンテージは2020年に世界チャンピオンの血統を持っていることを証明した。GTEでは24時間のレース優勝マシンにもなった」

「今回、我々はバンテージGT3を使用するパートナーや顧客に、GTレースが提供するもっとも厳しい耐久レースで、もっとも身近なライバルと勝利のために戦うための最良の機会を提供したいと考えている」

 アストンマーティンの耐久プログラムの戦略変更は、バンベリーに拠点を置く同社が、現行GTカーの製造を行うプロドライブ社との複数年契約の最中に新しい契約を締結したことを受けて行われている。長年のパートナーであるプロドライブは引き続きバンテージレースカーの製造、販売を実施する。

2016年のル・マン24時間GTEアマクラス優勝車 アストンマーティン・バンテージGTE
LMGTEアマクラスで1位となったTFスポーツの90号車アストンマーティン・バンテージAMR
最終戦でクラス5位に入り、ドライバーズタイトルを決めたソーレンセンとティーム

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