予想日経平均株価は3万2,000円、2021年日本株相場の展望

今年も残すところあとわずかになりました。来年はどんな年になるのか、トピック別に解説します。


新型コロナウイルス

世界中で猛威をふるっている新型コロナウイルスの感染が来年どのような展開を見せるのかについては誰も予想できず最も不確実性が高いものです。ですから、これに関しては予想というより仮定するしかありません。

現時点のさまざまな状況を勘案すれば、「感染拡大は完全には収束しないがピークアウトとする」との前提を置くのはそれほど無理のない設定でしょう。「ウィズ・コロナ」が常態化し、それが普通である社会生活が送られていく想定です。

ワクチンも優先度の高い医療従事者等から段階的に投与が始まることで終息に向けた期待や安心感が広がるでしょう。ただし、完全には終息しないため各種制限は残ったままになるでしょう。

日本経済

飲食、旅行、移動、エンターテイメント等の分野では以前の状態には戻りません。しかし、いち早く景気回復した中国の需要や、DX、リモートワーク需要などにけん引され、新たに生み出される成長要因の寄与でそれらの落ち込みは相殺されるでしょう。

GDPの水準自体はコロナ前に戻るのは難しいものの、景気は回復方向にあるという認識が株式相場の追い風になるでしょう。

政治・政策

新型コロナ対策と経済再開が政策のトッププライオリティであり続けるため、株式市場にとって好環境が続くでしょう。

経済は徐々に回復していきますが、そのペースは緩慢でコロナが完全に終息しない以上、政策は景気刺激的にならざるを得ません。つまり熱過ぎず、冷め過ぎでもない、いわば「コロナ・ゴルディロックス」の状態が長く続くことになるでしょう。

こうした状態が株式相場にとっては一番、心地よい状況であるというのは、過去数年間の相場上昇で私たちが見て来た通りだと思われます。

2021年に予定される衆院解散・総選挙も現状では与党勝利が見込まれます。政権の安定が規制改革進展につながるとの期待で、海外マネーの流出が加速するきっかけになり得ます。

ただし、衆院選はリスクでもあります。GoToを巡る対応などで菅内閣の支持率は低下しています。コロナの収束を考えれば来年の早い時期の解散はあり得ず、そうこうするうちに夏には東京オリンピックが開催されます。

選挙のタイミングの選択肢が限られる中で、新型コロナの感染動向と支持率の両にらみで衆院選を戦わなければなりません。政権交代はないとしても、与党の実質「敗退」となるような議席しか取れない場合、菅政権の退陣という可能性もあるでしょう。

そうなった場合、日本は短命政権に逆戻りし、デジタル改革などの規制改革もとん挫する懸念が高まります。株式市場では、海外投資家の失望売りにつながりかねません。

株式市場の需給

海外投資家は、12月の3週目まで6週連続の買い越しとなっています。

アベノミクス相場で海外投資家は累計で20兆円も日本株を買い越しましたが、アベノミクス相場の後半では売り越しに転じ、現在は買った分をすべて吐き出してしまった状態です。

つまり、海外勢の日本株ポジションは相当なアンダーウェイトになっていると思われ、その見地から買い余力は十分です。コロナ禍で増えた新しい個人投資家層もいます。需給的にも株式市場は買いが入りやすい状況と思われます。

2021年の日経平均株価は!?

過剰流動性と低金利の中、政策の後押しもあって景気・業績の回復見通しが強まるというのが基本シナリオです。そのような状況では株価は上昇すると考えますが、問題はどのくらい上昇するかでしょう。

過去50年間(1970~2019年)で日経平均が年間で上昇した年は32回あり、その平均上昇率は約20%でした。また過去50年間で日本の景気循環(内閣府経済社会総合研究所の景気基準日付によるもの) における景気の谷は9回認識されていますが、景気が底をつけた翌年の日経平均の変化率を平均すると22.5%でした。

以上の点から、上昇相場を見込むシナリオでは2021年の日経平均株価上昇率を20%と仮定します。本稿執筆時点(2020年12月23日)で2020年末の終値を2万6,000円と想定し、20%の上昇率を当てはめる、と2021年の年末の株価は3万1,200円が期待できます。

アナリスト予想の平均であるQUICKコンセンサスによれば、来期の予想日経平均EPS(1株あたり純利益)は1,600円。これをPER20倍で評価すれば日経平均株価は3万2,000円ですから、予想業績とバリュエーション面からも妥当な水準と考えます。

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