2020年の日本株は勝ち組だった?良かった銘柄・悪かった銘柄

早いもので激動の2020年も終わろうとしています。今年は世界中に新型コロナウイルスの感染が拡大し、一時はパニック状態となりました。ワクチン摂取や有効な治療薬の登場など一刻も早い収束を祈るばかりです。

株式市場にとってはどんな1年だったでしょうか。今回は2020年の新型コロナウイルスと株式市場を振り返ります。


新型コロナに振り回された2020年株式市場

2020年の年明け頃から徐々に「新型ウイルスの感染者が出ている」といった報道が出始めました。ところが、当初株式市場は大きなリスクだとは認識せず、株価は堅調に推移していました。

2月後半には「これはもしかすると大変なことではないか」とマーケットが気づいたのか、株価は大きく調整を始めます。そして世界中で感染者が爆発的に増える事態となり、3月中頃にかけて株価は大暴落しました。

日経平均を例に取ると、2019年末時点では23,656円だったのが2020年1月末時点で23,205円、2月末時点で21,142円、安値を付けた3月19日時点では16,552円まで下落しました。年末に比べるとわずか3ヶ月で日経平均は30%も下落したことになります。

世界各国で感染に歯止めをかけるためロックダウン(都市封鎖)等が行われ、人や物の移動が制限される事態となりました。日本でも緊急事態宣言が行われ、移動の自粛が要請されました。世界経済が完全に麻痺し、リーマンショック級の経済危機に発展するのではとの懸念が高まりました。

こうした状況を受け、経済危機を食い止めるために世界各国が未曾有の財政支出に踏み切りました。米国、欧州、日本などが大規模な世界各国の財政支出の合計は1,200兆円以上に達しています。

また、各国の中央銀行もこれまでに類を見ない大規模な金融緩和に踏み切りました。米国のFRB(連邦準備理事会)は「無制限の量的金融緩和」を打ち出し、リーマンショック後を遥かに超える規模の金融緩和を現在も行っています。

各国の対応が奏功したこともあり、株価は急速に値を戻しました。4月に入ると日経平均は2万円台を回復し、その後も堅調に推移しました。12月に入って27,000円を窺う水準まで上昇していることはご存知のとおりです。

世界の株式市場は明暗分かれる

それでは、今年株価パフォーマンスが良かった国はどこでしょうか?

まず、圧倒的に好パフォーマンスを達成しているのが米国のナスダック総合指数です。なんと昨年末に比べて40%を超える上昇を達成しています。

一方、同じ米国のNYダウ平均はプラスリターンを達成しているものの、5.7%とナスダックとは非常に大きくリターンが乖離しています。なぜ同じ国の株価指数でこんなにも差がついているのでしょうか?

それは指数を構成している銘柄の差です。ナスダック総合指数はナスダック市場に上場する3,000銘柄以上で構成されていますが、GAFAMと呼ばれるグーグル(上場企業名はアルファベット・GOOGL)、アップル(AAPL)、フェイスブック(FB)、アマゾン(AMZN)、マイクロソフト(MSFT)などIT関連株のウェイトが非常に大きく、コロナ禍でも業績を伸ばしたこれらの会社の株価は大きく上昇しました。

一方30銘柄で構成されているダウ平均はアップルやマイクロソフトも入っている一方で、キャタピラー(CAT)やボーイング(BA)、シェブロン(CVX)など今回のコロナショックで大きく業績が悪化した景気敏感株のウェイトが大きく、指数の足を引っ張っている形です。

ナスダック総合指数の次にパフォーマンスが良いのが日本のマザーズ指数です。新興企業が上場するマザーズ市場には、今後の成長が期待されるIT関連株が多く上場しています。コロナを受けた企業のDX推進期待や消費者のEC利用の増加などを受け、大きく上昇した銘柄がたくさんありました。

日経平均も11.9%の上昇と堅調なパフォーマンスを達成しています。マザーズも日経平均も堅調なパフォーマンスを達成できているのは、(1)日本は相対的に感染者数が少なく落ち着いていたこと(2)日銀の大規模な金融緩和(3)日本政府の財政支出による経済の下支えといった要因がありそうです。

株価が冴えないのは香港のハンセン指数や英国のFTSE100などです。これらの国(地域)はコロナの影響に加えて近年政治的な混乱もありましたから、そういった影響も出ているのかもしれません。

2020年日本株、良かった銘柄・悪かった銘柄

さて、2021年はどのような年になるのでしょうか。これまで述べてきたように日米の株価指数とも結果的に株価は昨年末を上回って推移していますが、指数の中身を見ていくと実は一部の銘柄の上昇が大きく影響しています。

日経平均で見てみると、エムスリー(2413)やサイバーエージェント(4751)、ソフトバンクグループ(9984)、などの上昇により株価は堅調ですが、実は指数を構成する225銘柄中昨年末を上回っているのは72銘柄と全体の30%強に過ぎません。

コロナが業績を直撃した自動車、鉄道、百貨店などの業種では株価が上昇どころか大きく下落しているものも見られます。

2021年は今年堅調だった銘柄の隆盛が続くのでしょうか。それとも低迷していた銘柄たちの復活となるのでしょうか。

その鍵はなんといっても新型コロナウイルスのワクチンや治療薬の普及度合いによると考えられます。ワクチンの早期の摂取が進み、経済が正常化に向かえば今年冴えなかった銘柄の大幅な株価上昇が期待できる可能性があります。

一方でワクチン摂取が思うように進まなければ今年の傾向は続くでしょう。筆者はこれまでのところワクチン摂取が順調に進み、不調銘柄の復活が進むことをメインシナリオとしていますが、なんとも微妙なところだというのが率直なところです。

いずれにせよ、ワクチンの登場によりようやくコロナを克服する希望の光が見えてきた気がします。2021年は希望の年になるよう祈念しています。

<文:マーケット・アナリスト 益嶋裕>

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