2020長崎スポーツこの1年<5・完> V長崎 近くて遠かった2位 J1届かず監督退任

最終節を勝利で締め、ファンと記念撮影するV長崎の選手たち。昇格に届かなかったが「一体感」のあるチームだった=諫早市、トランスコスモススタジアム長崎

 サッカーJ2のV・ファーレン長崎は壮絶な昇格争いの末に涙をのんだ。開幕から9戦負けなしで首位を走ったが、9月は一度も勝てずに後退。終盤の追い上げも届かず3位で今季を終えた。初優勝した徳島が7年ぶり、2位の福岡が5年ぶりのJ1復帰を決めた。
 V長崎はJ2屈指の戦力だった2019年を上回る顔触れで始動。ルアン、ビクトル・イバルボ、カイオセザール、フレイレの南米4選手を擁し、得点力不足が顕著になった終盤は、昨季J1王者の横浜Mからエジガルジュニオを獲得。2枚しかないJ1への切符をなりふり構わず取りにいったが、リーグ後半は2位の背中が近くて遠い時期が続いた。
 新型コロナウイルスが猛威を振るい、開幕節の直後からJリーグは約4カ月中断。そのしわ寄せで、2週間で5試合をこなす「5連戦」が計6回あるという異例の過密日程が組まれた。試合の間隔が狭いため、波に乗ったチームは一気に勝ち点を伸ばす現象が頻発。昨季J3だった北九州は破竹の9連勝で一時首位に立ち、福岡はそれを上回る12連勝を記録した。V長崎は序盤こそ「コロナシフト」の恩恵を受けたが、中盤以降は疲労からか負傷者が続出。コロナの憂き目に遭う結果になったとも取れる。
 ただ、昇格した2チームも負傷者はいたし、チーム内にコロナ感染者も出た。福岡にいたっては攻守の要でもある主将が感染して1カ月間試合に出られず、さらに感染に伴う試合日程の変更で8~9月は「11連戦」を強いられた。どのチームも同じ条件で戦い、その上でV長崎は目標を達成できなかった。
 手倉森誠監督は2年でJ1復帰を果たせずに退任が決定。「悔しさ、ふがいなさがものすごく大きい」。そう無念さをにじませたが、チームの代名詞だった堅守速攻の戦術を抜本的に見直し、ボール保持を主体にする新スタイルの礎を築いた功績は小さくなかった。総得点66はクラブ最多を更新した。
 今は変革期の後半に差しかかったあたりだろうか。2021年は見いだした方向性を確かなものにするシーズンにしなければならない。


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