長崎この1年2020<6・完> 核禁条約発効決定 「戦いはこれから」

核兵器禁止条約の批准を政府に訴え行進する川野議長(手前右)=19日、長崎市内

 核兵器禁止条約の発効が刻一刻と近づく。日本政府が条約に背を向け続けるほどに、長崎の被爆者たちの不満は膨らみ続けている。
 19日、政府に条約批准を求め原水爆禁止県民会議(県原水禁)などが長崎市内で開いた集会。県平和運動センター被爆連の川野浩一議長(80)は集まった約180人を前に、政府を批判した。「日本は今も(核廃絶へ核保有国と非保有国の)『橋渡し』をすると言うばかり。中身はない」
 条約は「被爆者の受け入れ難い苦しみに留意する」と前文に明記。核兵器の開発から保有、使用、威嚇まで禁止し、核実験を含む被害者の援助、環境回復もうたう。2017年に国連で採択され、被爆75年の節目の今年、10月24日に発効に必要な50カ国・地域の批准に到達。90日後の来年1月22日発効が決まった。
 被爆地の悲願といえる国際法が誕生するが、安全保障環境の不透明さが増す中、核保有国をはじめ、「唯一の戦争被爆国」と言いつつ「核の傘」に依存する日本などの姿勢は冷ややかだ。「核保有国が参加しない条約なんて無意味だ」「日本も核武装すべき」。条約関連のニュースが出ると、インターネット上ではこんな国民の声も飛び交う。
 条約は核使用反対への規範を強めると期待される一方、実効性を疑問視する声は本県でも根強い。それは政府に批准を求める意見書への議会対応からもうかがえる。長崎市議会は11月に可決したが、一部会派などが反対。12月の県議会では賛成少数で否決された。
 日本は条約に参加すべきだと考える人は7割との世論調査もあり、政治と民意の溝は深い。本県出身者を含む国内学生は「Go To ヒジュン!キャンペーン」として国会議員に働き掛けている。条約発効の2日前には「核なき世界」を目指す米民主党のバイデン氏が新大統領となる予定だ。
 21年は、核廃絶の潮流が加速するか否か重要な一年となる。川野議長は19日の集会でこうも強調した。「条約が発効したからといって核兵器は地球上からなくならない。戦いはこれからだ」


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