兄弟で歩んだ43年「縁に感謝」 長崎の洋食店 プティ・ココット閉店

駒田さん(左)と河野さんが43年、腕を振るい続けたプティ・ココット=長崎市岩川町

 長崎県内外の人々に愛された長崎市岩川町の西洋レストラン「プティ・ココット」が30日、惜しまれつつ閉店した。シェフは駒田通博さん(72)と実弟の河野朝美さん(66)=いずれも西海市崎戸町平島出身=。閉店は駒田さんの高齢が主な理由。長崎大水害などの苦難を乗り越え歩み続けた43年間。「お客さんとの“縁”で続けられた。なぁ朝美」。「そうだね」と河野さんは目を細めた。
 幼少期、母の姿を見て料理に興味を持ったという駒田さん。25歳の時「一緒にレストランやらんか」と20歳だった河野さんを誘い、2人で3年ほどかけて開業資金をためて創業した。
 43年間変わらぬレシピの野菜ポタージュは、タマネギとニンジンが溶けてなくなるまで2時間以上煮込む。「おいしいって言ってもらえて、本当にうれしかった」(駒田さん)
 店も軌道に乗ったころ、1982年7月に長崎大水害が発生。店内に泥水が押し寄せた。腰あたりまで冠水。冷蔵庫などの電化製品は泥水に浮き、ひっくり返っていた。「どうやって営業しようって、必死だった」と河野さん。

長崎の洋食店 プティ・ココット閉店

 コロナ禍の波も受けた。3月から宴会の予約はゼロになり、ランチ客も3分の1に減った。5月の緊急事態宣言時には休業。駒田さんは「県の支援金で乗り越えたけど、正直苦しかった。お客さんとの出会いが財産でした」と振り返る。3年ほど前にがんを患いながら毎日厨房(ちゅうぼう)に立ち続けたが、コロナ禍も契機となり11月頃、閉店を決意した。
 30日は常連客が別れを惜しんだ。長崎市の自営業、橋本誠さん(68)は創業から親子3世代で通う常連客。「閉店は寂しい。子どもにとってもなくてはならない存在だから」と、2人を見つめながら語った。
 外に雪が舞う中、訪れた閉店の時間。2人は笑顔で客を送り出した。「お元気で!」。店はコンソメの香りと、43年の感謝を伝えるあたたかな空気で満ちていた。


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