80年代は洋楽黄金時代【ベースライン TOP5】記憶に残るプレイは誰だ! 1983年 1月2日 マイケル・ジャクソンのシングル「ビリー・ジーン」がリリースされた日

“地味にスゴイ” 存在、ベースはサウンドの核

これまでに僕はリマインダーで『80年代は洋楽黄金時代【ギターリフ TOP5】ギターはまだ終わってない!』でギターリフ TOP5、そして『80年代は洋楽黄金時代【ドラムイントロ TOP5】記憶に残る名演!』でドラムイントロ TOP5… というネタを書いたことがあったが、ギター、ドラムと来れば次はベースということで、今日はベースラインが印象的な楽曲を紹介したい。

そもそもベーシストというのは、バンドの中で最も地味な存在だと言われている。例えば、もし仮に「日本の音楽ファン100人に聞きました! クイーンと言えば誰?」というアンケートを取ったとしても、ベーシストのジョン・ディーコンの名前を真っ先に挙げるのは、多く見積もっても2~3人しかいないだろう。そもそもフツーの音楽ファンにとって馴染みがあるのは、ポール・マッカートニーやスティングのような “歌うベーシスト” だけである。

しかし、だからと言って、ベースという楽器の貢献度が低いかというと、むしろ全くの逆で、ベースはサウンドの核を担う存在である。そこで、そんな “地味にスゴイ” ベースにスポットライトを当ててみよう… というのが今回のコラムの主旨である。

曲のカッコ良さを各段に引き上げたポール・マッカートニーのベース

ベースラインと言えば、僕の頭に真っ先に思い浮かぶのは、ご存知ザ・ビートルズ「カム・トゥゲザー」だ。「サムシング」と両A面でリリースされたこの楽曲はジョン・レノンの作品だが、曲のカッコ良さを格段に引き上げたのはポール・マッカートニーのベースだと思う。

もともとポールのベースラインはメロディアスなのが特長だが、彼に限らずあの当時(1960年代後半~70年代前半)は、動き回るベースが多かったような気がする。ジョン・エントウィッスル(ザ・フー)、ジャック・ブルース(クリーム)、ジョン・ポール・ジョーンズ(レッド・ツェッペリン)、クリス・スクワイア(イエス)といった英国人ベーシストにはその傾向が強く、時にリードギターならぬリードベースではないかというプレイを見せつけることもあった。

多くのベーシスト達に浸透、ラリー・グラハムが生んだスラップ奏法

一方、ソウル・ファンク系なら、僕はスライ&ザ・ファミリー・ストーンの「サンキュー(Thank You Falettinme Be Mice Elf Agin)」を挙げたい。スラップ奏法の生みの親と言われるラリー・グラハムのベースはファンクそのもので、まるで弦を叩きつけるかのような力強いプレイが特長だ。以降、スラップはジャズ・フュージョン系のベーシスト達にも浸透していく。

モータウンにも、ベースラインが印象的な楽曲が数多くある。マーヴィン・ゲイ&タミー・テレル「エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ」やジャクソン5「帰ってほしいの(I Want You Back)」は、今でもよく耳にする曲だ。スティーヴィー・ワンダー「ハイアー・グラウンド」はファンク度の高い、相当カッコいい曲だが、後にレッド・ホット・チリ・ペッパーズによってカバーされた。原曲のベースは、スティーヴィー本人によるモーグベース(シンセサイザー)の音だが、カバーバージョンではフリーがバリバリにスラップを決めていて、負けず劣らずカッコいい。

このように、カッコいいベースラインというのは、白人系、黒人系問わず、様々なジャンルの楽曲の中に見え隠れしているものだ。そこで、今回も80年代にリリースされた楽曲の中から勝手にベースラインTOP5を決めようと思うが、極力幅広いジャンルから、とにかく記憶に残るプレイを選んでみたので、ご賞味頂きたい。

発表!80年代ベースライン TOP5

【第5位】 スーパー・フリーク / リック・ジェームス

アルバム『ストリート・ソングス』に収録。モータウンきってのファンカーと言われた彼の代表曲だが、僕より下の世代には1990年にMCハマーがサンプリングした「ユー・キャント・タッチ・ディス」の方が馴染みがあるかもしれない。リック・ジェームスは自身も優れたベーシストだが、クレジットを見る限り、この曲ではオスカー・アルストンという人が弾いているようだ(不確かな情報でゴメンナサイ)。

【第4位】 エース・オブ・スペーズ / モーターヘッド

アルバム『エース・オブ・スペーズ』に収録。メタルでもなくパンクでもない、独自の地位を確立した彼らの代表曲。リーダーのレミー・キルミスターのダミ声とリッケンバッカーのベースを中心に、大音量で暴走的疾走感を醸し出しているのがこの曲の特長だ。彼は2015年12月に亡くなったが、なんとその直後にこの曲が再び全英チャートに登場。最高位13位を記録した。以降、他メンバーも相次いで亡くなり、18年にはバンドの活動終了が発表された。

【第3位】 レッスンズ・イン・ラヴ / レベル42

アルバム『ランニング・イン・ザ・ファミリー』に収録。リーダーでボーカリストのマーク・キングがベースを弾いている。ミュージックビデオからは全く伝わらないが、彼は音数の多いフレージングと高速スラップで有名なベーシストで、ライブでは難解なベースラインを奏でながら淡々と歌っている。とにかくそれが凄い。興味ある人は、YouTubeを漁ってみることをオススメする。

【第2位】 地獄へ道づれ(Another One Bites The Dust)/ クイーン

アルバム『ザ・ゲーム』に収録。この曲を書いたのはジョン・ディーコンで、もちろん彼自身が弾いている。シックのベーシストのバーナード・エドワーズと親交のあった彼が、「グッド・タイムス」に影響を受けて作ったと言われている。クイーン最大のヒット曲となったが、ディスコ色の強いこの曲が売れたせいで、バンドの方向性がブレ始めた気がするのは僕だけか?

【第1位】 ビリー・ジーン / マイケル・ジャクソン

世界で最も売れたアルバム『スリラー』に収録。マイケル・ジャクソン最大のヒット曲で、このベースラインを知らない人はもはや地球人ではない、と言ってもいいくらい文句なしのNo.1だ。弾いているのは、ザ・ブラザーズ・ジョンソンやセッションミュージシャンとして知られるルイス・ジョンソン。彼は強烈なスラップ奏法で有名だが、この曲ではその凄腕テクを温存してマイケルのバックに徹している。惜しくも2015年に60歳で亡くなった。

あなたのためのオススメ記事 マイケルのビリー・ジーン、キング・オブ・ポップとMTVの幸福な関係
Billboard Chart & Official Chart
■ Another One Bites The Dust / Queen(1980年9月27日 全英7位、1980年10月4日 全米1位)
■ Super Freak (Part I) / Rick James(1981年10月24日 全米16位)
■ Billie Jean / Michael Jackson(1983年3月5日 全米・全英1位)
■ Lessons In Love / Level 42(1986年10月5日 全英3位、1987年6月27日 全米12位)
■ Ace of Spades / Motörhead(2016年1月14日 全英13位)

Billboard Chart&Official Charts(Album)
■ The Game / Queen(1980年7月19日 全英1位、1980年9月20日 全米1位)
■ Ace of Spades / Motörhead(1980年8月11日 全英4位)
■ Street Songs / Rick James(1981年8月1日 全米3位)
■ Thriller / Michael Jackson(1983年2月26日 全米1位、1983年3月5日 全英1位)
■ Running In The Family / Level 42(1987年3月28日 全英2位、1987年8月1日 全米23位)

カタリベ: 中川肇

© Reminder LLC