21年の角界は「日常」を取り戻せるか 相撲協会が地方場所再開を急ぐ理由

八角理事長

【取材のウラ側 現場ノート】大相撲にとっても、2020年は新型コロナウイルス禍で大揺れの一年だった。3月場所は史上初の無観客となり、5月場所は中止。7月場所は名古屋ではなく東京開催となり、観客は約2500人の上限が設けられた。11月場所から上限は約5000人に緩和されたが、今後の感染状況によっては再び制限が強化される可能性もある。

記者の取材現場の様子も一変した。それまで朝稽古後の取材は力士の風呂上がりなどリラックスした雰囲気の中で行われ、部屋の厚意でちゃんこを一緒に囲むこともあった。力士と雑談を交わす中で思わぬエピソードに遭遇することもある。しかし、コロナ禍以降はオンラインや電話取材が中心。対面取材は一部解禁されたものの、以前のように自由に取材ができないことに変わりはない。

そんな中で、日本相撲協会は21年から地方場所(3月=大阪、7月=名古屋、11月=福岡)を再開する方針を固めた。国内外で感染者数が再拡大する状況下では、時期尚早にもみえる。長距離移動などに伴う感染リスクを承知の上で、再開を急ぐ理由は何なのか。協会幹部に聞くと「これ以上長引けば、地方のお客さん(後援者)が離れていってしまう」と切実な事情を明かした。

どれほど熱心な支援者でも、2年も空白期間があれば心変わりしない保証はない。地方の後援者の関心をつなぎとめておくためにも、地方場所の中断は「1年が限界」との判断だ。一方で、東京開催は初場所(1月10日初日、両国国技館)を含めて4場所連続となり、在京ファンの目には逆に新鮮味が薄れてきていることも理由だという。

八角理事長(57=元横綱北勝海)は、年末の年寄総会で親方衆を前に「今後も非常に厳しい状況が続く。この社会と生活を守るためには、皆さんの協力が不可欠」と呼びかけた。21年は角界に「日常」が戻ってくるのだろうか。(相撲担当・小原太郎)

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