「あまり仕事をしていない社員」がなぜ評価が高い? 億り人投資家が考える“価値提供”とは

お金を増やす王道の方法は「仕事の収入」を上げること。簡単ではありませんが、実は収入アップのコツは「投資に似ている」と言う人がいます。投資家・遠藤洋さんです。前回に引き続き、ベストセラーの著書『10万円から始める! 小型株集中投資で1億円』で知られる遠藤さんに、仕事での収入アップの考えを聞きました。


時間を「浪費」ではなく「投資」に回せるか

――前回の記事で「収入を増やすには、仕事の“考え方”が重要」と聞きました。しかもそれは、投資に通じる部分があると。詳しく教えてください。

そうですね。人が持っている「お金につながるリソース」は大きく2つあります。金銭リソースと時間リソースです。このうち、時間リソースをどう使うかも収入アップにつながります。

前回、お金は「浪費」ではなく「投資」に使うと増えていくと話しました。時間も同じです。時間を投資に使える人はお金が貯まりますし、浪費する人は貯まりにくい。しかも、金銭リソースは持っている量に個人差がありますが、時間はみな平等。だからこそ、どう使うかが大切です。

――お金だけでなく、時間も「投資」に使うべきと。

はい。僕は新卒でベンチャー企業に入りました。今思うと、この選択も「投資」になったと思います。多くの人は、大手企業を希望しますよね。でも、安定していて社員も多い大企業で20代前半を過ごすのと、忙しくて給料が安くても、若手にガンガン仕事を任されるベンチャー企業で働くのは、どちらが未来の自分のためになるでしょうか。

もちろん、大手企業でも自分を磨けますし、ハイレベルな中で働けばずっと成長できます。ただ、仮に安定や安泰を求めてそちらを選ぶなら、それは未来への投資ではなく「浪費」に近い。頑張っていい大学を卒業したのだから、楽できる会社に入ろうというのは過去の自分へのご褒美ですよね。

――前回話したお金の使い方と同じですね。

時間は二度と戻ってこないので、今この時間をどこに割り振るかが重要です。お金は後から稼げば戻るけど、20代前半の数年間は二度と戻ってこない。そのときに、この時間をいかに未来の自分のために使うか。力がつく場所に身を置けるか。これはまさにお金の「浪費」「投資」と同じなんです。

――ちなみに遠藤さんがベンチャー企業を選んだのもそういう理由ですか?

はい、もちろん!…と言いたいところですが、正直後になってから気がつきました(笑)。当時の理由は、会社説明会に参加したとき、大手企業だからといって社員の方がイキイキしているわけではないことに気付いて。反対にベンチャー企業に行くと、社員の方がすごく楽しそうに会社の話をしていたんです。

大学時代の僕は、とにかくかっこいい大人になりたいと思っていました。その「かっこいい」が当てはまったのは、ベンチャー企業の方だったんですね。

働いていない人がなぜ評価されているか?

――ちなみに、今いる企業で給料アップをするのはなかなか難しいと思いますが、何か遠藤さんなりの考え方はありますか?

これも考え方がポイントだと思います。給料アップを考えるとき、1時間あたりの賃金を上げようとしても難しい。そうではなく、自分が会社に提供する価値を大きくしようと考えると良いと思います。

営業マンを例にすると、毎日出社して月1件の契約を取る社員と、月1回の出社で月10件の契約を取る社員がいたとします。どちらが会社として高評価ですか?

――月10件の契約を取る社員がありがたいですかね…

ですよね。会社にとって、社員の指標は価値提供の大きさなんです。会社にどんな価値を提供しているか。でも、意外とその認識がずれている人が多い印象です。「こんなに長時間働いているのに給料が安い」とか「こんなに仕事が大変なのに給料が増えない」とか。会社が見ているのはそこではないですよね。もちろん、労働環境がブラック、あるいは賃金が著しく低いという話なら別ですよ。

――あくまで正常な労働環境の中で、ということですね。

はい。給料は会社への価値提供の大きさとつながっています。それなら、給料アップのために行うことは明確。働く時間を増やすのではなくて、価値提供を増やす。営業なら契約を倍にする。エンジニアなら2倍のシステムを作る。あるいは半分のスピードで1個のシステムを作る。

これができれば、給料は上げやすくなります。金額の交渉もできますし。給料アップを狙うなら「会社への価値提供を増やすこと」。この一点です。

――これはベンチャー企業時代に学んだんですか?

そうですね。ちなみに、価値提供は必ずしも「仕事の成果」とは限りませんよ。ベンチャーにいた頃、普段あまり仕事をしている素振りが無いにも関わらず、重要なポジションを任されていた人がいました。その人は、とにかく社長からの評価が厚い。そこでなぜその人の評価が高いか考えたんです。社内でも「あの人は評価の割に仕事してないよね」と有名だったので(笑)。

――考えた結果は、何だったのですか?

その人は、社内の空気を良くするのが上手なんです。話していると笑顔が絶えないし、みんなの緩衝材になる。組織の人間関係を円滑にしているんですね。これも立派な会社への価値提供です。だからこそ、社長の評価が高かった。価値提供の種類はさまざまなので、自分が会社に何を与えているか。何を求められているか。それを分析して、提供する価値を大きくするのが収入アップの方法ですね

お金の使い方で大切な「投資」と「浪費」の違い。実はそれが仕事にもつながっていることがわかりました。そして次回は、遠藤さんの真骨頂である株式投資のテクニックを聞きます。

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