三菱エクリプスクロスPHEV、並み居る強豪と互角以上に戦うための武器は?

ボディサイズまで変更してマイナーチェンジを行ったコンパクトSUVの三菱エクリプスクロス。内外の強烈なライバルが存在するクラスだけに生半可な変更では存在感を存分に発揮できない、ということで三菱が用意した強烈な武器は「プラグインハイブリッド(以下PHEV)」という追加モデル。さっそく出来映えをチェックしてみました。


コンパクトSUVは激戦区

トヨタのCH-RやRAV4、ホンダ・ヴェゼルにスバル・フォレスター、マツダのCX-30やCX-5などなど、国産ライバルを並べただけでも魅力的なSUVが揃っているのがコンパクトSUVクラスです。この中で2018年(海外では2017年)にデビューしたエクリプスクロスは、これまでセールス面で少々苦労してきたといえます。クーペとSUVのクロスオーバーとでも言えるスタイルと、ガソリンとディーゼルの2種類の環境型エンジンといったところもセールスポイントとしていたのですが、他のライバル達も負けないぐらいの個性を発揮していました。つまり、アドバンテージとするには少々弱く、あと一歩のパンチに欠けていたといえます。

旧型モデルを2種類のエンジンを中心に評価すると決して悪くはありません。ダウンサイジングの1.5Lガソリンターボエンジンはトルクがあり、ひとクラスの力強さを示す走りはスポーティで快適でした。以前から評価が高かった2.3Lコモンレール式のクリーンディーゼルターボエンジンを載せたモデルもトルクフルで力強さもあり、燃費面でも満足のいく性能を示してくれています。こうしたエンジンを得たエクリプスクロスの走りは、三菱車の良き伝統を裏切ることもなく、総じて乗り心地が良く、実用面での不満は少なかったのです。

それでも強烈なライバルに混じると存在が薄れるのはスタイルのせいでしょうか? それともハイブリッドなどの電動車がラインナップされていないためでしょうか? はたまた販売力の差……。考えればいろいろとあるかもしれないのですが、懸念材料をマイナーチェンジで一気に改良すると言うことはメーカーにとってもかなり負担が大きいのです。でも三菱はフロントマスクやリアスタイルのデザインを変え、ボディサイズも変更し、そして三菱の電動化にとって主力といえるPHEVをラインナップしてきました。正直、ここまでの大胆変更をやるのは、かなり珍しいことだと思います。まずはスタイルを見てみましょう。

エクステリアの変化は?

フロントマスクを見たとき、「あれ、キープコンセプトのフルモデルチェンジ?」と一瞬戸惑うほどの変化でした。かなり大胆な変化があったのです。旧型以上に長細く切れ長になったヘッドランプ部分ですが、ここに装備されたのはターンランプ(ウインカーランプ)とポジションランプ、そして昼間でも点灯するデイタイムランニングライトをひとつにまとめたユニットです。最上段に配置されたことでさらに表情はキリリとしてスポーティに見えます。その下に装備されているのが、前方と照らすヘッドライトやフォグライトとなります。

次にリアスタイルも大きく変わりました。旧型のリアウインドウですが上下2つに分割されたWウィンドウと呼ばれるタイプでした。それが新型では面積を広くしたシングルウィンドウとなりました。これだけでもリアスタイルの印象はがらりと変わりました。これまでの軽快さは希薄になったのですが、一方でどっしりとした安定感と高級感が加わりました。そして下段のリアガラスがなくなったことでの視認性の低下ですが、実は大きな不便を感じることがなく、しっかりと後方視界を確保できていました。

前後長が140mmも長くなり、伸びやかさが向上しました

こうした前後のデザイン変更によって新型はボディの前後長が140mmも伸びたのです。空力パーツを付けたりするわけではなく、基本ボディのデザイン変更によって、これだけのサイズが変わってしまうことは、やはりマイナーチェンジとして珍しいでしょう。当然ですが、この拡大によってサイドからの見え方にも少しばかり変化が出ました。

ボディサイドのドア部分や前後のホイールアーチ周辺に走る彫りの深いラインはそのままなのですが、前後のオーバーハングが伸びたことで、ゆったりとしたスポーティなクーペフォルムが、より強調されて伸びやかに見えます。ホイールベースも変わらず、ルーフラインなどの基本形状も大きく変わること長いのですが、その印象が一気に上質さを増した感じです。当然、この外観のデザインはガソリンエンジンモデルでも同じように採用されていますから、シリーズ全体が上質感を向上させたことになります。

上質感を増したエクステリアのデザインの印象はインテリアにも継続します。以前から細部までしっかりと作り込まれていた室内は基本的にレイアウトやデザインは大きな変更がありません。目に付く変更点はディスプレイオーディオのサイズが8インチに拡大されたという点です。

ユニークな走行モード

そんなインテリアの仕立てに満足しながらさっそく走り出します。エクリプスクロスPHEVは走行モードが選べます。デフォルトとなるNORMAL/ECO、雪道のSNOW、悪路走行のGRAVEL(グラベル)、そして舗装されたワインディングでのスポーツ走行などをこなすTARMAC(ターマック)と、選択できるようになっています。グラベルとかターマックという用語はラリー競技で使われることが多い用語で、一般の人に馴染みがないかもしれません。それをあえて使用すると言うのは、WRC(世界ラリー選手権)などで数多くの伝説を残してきた三菱ならではのこだわりともいえます。残念ながら今回はごく普通の一般道での試乗ですから雪道や悪路は走れません。

ホールド性も良くロングドライブでも疲労感は少なそうです。

さっそくノーマルを選んで走り出します。静々とゆったりと加速していく感じはいかにもモーターでの走行感覚で本当にスムーズですが、速度を上げてもスポーティな走りでも、この感覚がずっと維持されていくのです。さらに感心させられたのは、ガッチリとしたボディ剛性のお陰もあるからか、しっとりとした重厚感ある乗り心地の良さです。これにはサスペンションの設定などが起因していると思いますが、重量にも一因がありそうです。PHEVはバッテリーなどの重量物を搭載しますから4WDのガソリンモデルより車重が400kg程度重くなるのです。それでも重量増によるトロさのようなものは128馬力の2.4Lエンジンと、フロントに82馬力、リヤに95馬力といったモーターが組み合わされることで、ほとんど感じないのです。

いえ、それどころかターマックというスポーツモードを選択すると、強烈な加速感を感じながら、相当なペースでワインディングや高速道路を走ることができたのです。2トン近いボディですが、その走りの感覚は、まさにヒラリヒラリです。その上でしっとり感もあるという、なんとも中毒性のある走りの味なんです。残念ながら新型のガソリンモデルを試すことはできませんでしたが、軽量の150馬力ガソリンモデルとは、まったく乗り味が違うことは容易に想像が付きます。

ここで個人的に残念なのはディーゼルモデルがカタログから落とされたことです。ガソリンモデルの上位モデルは「G Plus Package」が312万6,200円で、PHEVモデルのベーシックモデルのMが384万8,900円からとなっています。つまり、ガソリン車とPHEVの間には70万円ほどの価格差ができています。もしここに、350万円前後に設定されたディーゼルエンジンモデルが2タイプぐらい入るとラインナップに繋がりが生まれ、ユーザーにとっても選択がより楽になると思うのですが、どうでしょうか。

そしてもうひとつ、エクリプスクロスPHEVの試乗を終えて感じたのは「これでまた急速充電が混むな」と言うことでした。ただでさえ、リーフなどのBEVとPHEVとの間には急速充電施設での、せめぎ合いがみられます。そこにまた魅力的なPHEVが追加になったわけですから、ますます殺伐とした雰囲気になるかもしれません。

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